「『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール」(ドン・キホーテのちょしゃ ピエール・メナール、Pierre Menard, autor del Quijote) は、ホルヘ・ルイス・ボルヘスによる短編集『伝奇集』に収録された作品の一編。ピエール・メナールという20世紀の作家がミゲル・デ・セルバンテスになりきるなどの方法で、『ドン・キホーテ』と一字一句同じ作品を作りだそうとした、という設定のもと、セルバンテスの『ドン・キホーテ』とピエール・メナールの『ドン・キホーテ』の比較を文学批評の形式で叙述した短編小説である。
テーマである『ドン・キホーテ』が、騎士道物語を意識的に裏返した最初の近代小説であることに注意したい。ボルヘスは『ドン・キホーテ』をさらに裏返しにし、意識的な小説行為それ自体を描くことに成功した。後にアメリカのジョン・バースがボルヘスを発見した際に『尽きの文学』(Literature of Exhaustion)で言及したのもこの作品である。