かご形三相誘導電動機かご形三相誘導電動機(かごがたさんそうゆうどうでんどうき)とは三相交流で回転磁界を生成し、導体の両端を総て短絡した「かご型構造」のかご形回転子を利用した電動機(すなわち三相誘導電動機)である。 特徴
巻線形三相誘導電動機や整流子電動機と比べた場合、
特性総磁束が鉄心の飽和磁束に規定されるので、巻線の誘起電圧は回転数に比例し、これに負荷電流による巻線の電圧降下を加えたものが端子電圧になる。 この特性に合わせて、瞬時の回転数に比例した電圧と周波数の交流で運転すれば、高効率で優れた特性の速度制御が可能である。このような制御方式を可変電圧可変周波数制御と呼ぶ。しかし、従前は任意の周波数と電圧を自由に生成することが極めて困難であったため、商用周波数電源で運転されていた。そのため、起動トルクが低く大きなモータを使うなど様々の制約を受けていた。 大電力半導体素子の出現した現在では、インバータによる可変電圧可変周波数制御が容易に利用できるようになり、従前の制御方式よりも小型高効率のため、急速にこの制御方式に切り替えられている。現在の教科書・専門書の解説・解析はほとんど従前の固定周波数を前提に記述されているので、可変周波数動作ではスベリ率をスベリ周波数に直して考察するなど適切な変換が必要となる。 特殊な使い方として、電動機は回転磁界に見合った軸回転をしようと作用することから、二次側の回転が電動機回転を上回る場合に電動機回転に戻そうとする力が働くので発電ブレーキとして使用することも可能である。 構造かご型回転子は、棒状の導体の両端を端絡環に溶接又はろう付けした構造になっている。小容量と中容量の誘導電動機では、導体と端絡環と通風翼が純度の高いアルミニウムの加圧鋳造で造られた一体構造となっている[1]。 時間定格にもよるが、一般的に大型機には他動式の冷却ファン、中・小型機には自己回転軸に装備された自冷式の冷却ファンを装備するものが多く、自冷式では正逆回転のいずれにも対流が発生するように遠心式ファンとカバーの組み合わせとなっている。 商用周波数での始動法始動時の考慮点としては、電源が許容できる始動電流・固定子巻線の始動電流による電磁力に対する耐力・回転子導体の起動銅損による発熱がある[2]。
全電圧始動法定格電圧をそのまま投入する方法。 特徴は、 など。
全電圧始動法を用いることができない場合は、以下に示す減電圧始動法が用いられる。 Y-Δ始動法始動時に電動機の一次巻線をスター結線として投入し、一定時間経過後にデルタ結線とする。5.5kW以上の電動機で軽負荷または無負荷始動のもの。あるいは送風機などの強-弱切り替えにも使われる。 電磁接触器を3個使用した、3コンタクター型が推奨されている。これは、電動機停止時に電圧が印可されないものである。 特徴は、
リアクトル始動法 / クザ始動法始動時に電動機の一次巻線と直列にリアクトルを挿入し、起動後に短絡する。なお、一次巻線のうち1相または2相のみにリアクトルまたは抵抗器を挿入するものはクザ始動と呼ばれ、リアクトル始動法の簡易版と言えるものである。ポンプ・ファンなどの2乗低減トルク負荷のクッションスタート用として用いられる。特徴は、
コンドルファ法V結線の単巻変圧器を使用して電圧を下げて始動し、起動後に全電圧を投入する。始動電流を特に抑えたい場合に使われる。 特徴は、
極数切換法本来は速度(回転数)制御の手段の一つであり、極数変換方式の電動機はポールチェンジモータと呼ばれる。固定子コイルの接続を切換えることにより磁界の回転数を変化させ、始動特性の調節や回転子の速度制御を行う。特徴は、
可変周波数起動法始動と速度制御とを兼ねる方法である[4]。 インバータ法、可変電圧可変周波数制御: 交流入力を大電力半導体素子など(IGBT、GTOサイリスタ、水銀整流器等)を用いたインバータにより(回転数)周波数に比例した交流の電圧を発生させて(電圧V/周波数f=一定制御)、速度を調整するもの。モータの逆起電力に回路のインピーダンス(電圧)降下を加算した電圧を加えることが特徴であるが、これは直流機起動法と共通であり、交流のため制御要素として周波数と位相が加わっている。
〔参考:火力原子力発電必携(社)火力原子力発電技術協会〕 クローリングクローリング(次同期運転)とは、始動時に同期速度の1/7付近でトルクの谷を生じ、負荷の要求するトルクよりも小さくなり加速しなくなる現象である。磁束成分に基本波と同方向の第7調波を多く含むために起きる。始動電流に近い電流が流れ、持続すると焼損する。 軽減策として、斜めスロットが使用される[5]。 脚注
参考文献
関連項目外部リンク |