この項目では、1929年に建造された駆逐艦について説明しています。その他の用法については「アカスタ 」をご覧ください。
アカスタ (HMS Acasta, H09 ) はイギリス海軍 の駆逐艦 。A級 。
艦歴
設計と性能
1920年代中盤に、第一次世界大戦 での教訓から、将来の艦級の初号機として海軍はヤーロウ社 にアンバスケイド を、ソーニクロフト社 にアマゾン をそれぞれ発注した。A級駆逐艦は、規模がわずかに広がり、魚雷発射管 がさらに2基搭載された以外は、アマゾンを基に設計された[ 1] 。基準排水量 は1,350ロングトン (1,370 t)であり、満載排水量 は1,773ロングトン (1,801 t)であった。全長 は323フィート (98.5 m)、最大幅は32フィート3インチ (9.83 m)、喫水 は12フィート3インチ (3.73 m)であった[ 2] 。アカスタは、ブラウン・カーティス 製の蒸気タービン を動力としていた[ 3] 。タービンは合計を生み出し、海上では最大で35ノット (65 km/h; 40 mph)で航行することが可能であった。海上公試 中に、34,596軸馬力 (25,798 kW)から最大35.5ノット (65.7 km/h; 40.9 mph)に達した。で4,800海里 (8,900 km; 5,500 mi)の距離を移動できる程の重油 が搭載可能であった。定員は当初134名であったが、1940年までに143名まで増加した[ 4] 。
主砲は1台あたり4.7 インチ 砲4門で構成され、艦橋 前部と上部構造の後方に2門ずつ背負い式砲塔を備えており、防空 (AA)防御用に煙突間の台座に40mm QF 2ポンド砲 マークII AA砲も設置されていた。船には21インチ (530 mm)魚雷用に水上四重台座が2門装備されていた。後甲板に機雷掃討器を搭載していたため、爆雷 は3つの射水路にそれぞれ2つずつしか搭載できなかった[ 3] 。A型駆逐艦はASDIC を配置する空間が用意されていたものの、当初は搭載されていなかった[ 5] 。
建造から大戦前まで
アカスタは、1929年の海軍計画にのっとり、1928年3月6日にジョン・ブラウン・アンド・カンパニー に発注され、1928年8月13日に、スコットランド ・クライドバンク (英語版 ) にある造船所で起工された[ 6] 。翌年8月8日に、イギリス海軍4隻目の船として進水式 が行われ、1930年2月11日に完成した[ 6] 。銃や弾薬、通信設備など本部から支給された装備を除いた建造費用は22万7621 ポンド であった[ 3] 。アカスタは3日後に就役し、地中海艦隊 第3駆逐群に配属された[ 8] 。
アカスタは、デヴォンポート海軍基地 にて修理されていた期間(1932年8月30日から10月29日まで、1935年4月29日から7月3日まで)を除き、1937年まで第3駆逐群に所属した。この他、1933年11月24日から12月20日までジブラルタル にて修理を受けた。1934年6月12日に、マルタ 沖で訓練中に嚮導艦 であったコドリントン と衝突し、7月27日まで修理された後、1936年9月から翌年4月にかけて、スペイン の海域で不干渉の (英語版 ) 巡航と難民保護活動に駆り出された。月末にイギリスに戻り、5月1日から1938年4月11日までデヴォンポート海軍基地にてASDICの搭載を含めた大改修を終えてからは第7駆逐群に所属し、11月3日から翌年1月17日まで同基地で修理に出されるまで、アイルランド の海域での巡回任務を務めていた。修理後、アカスタはプリマス の臨時駆逐艦として配属され、3月2日から13日までの間、アルゼンチン海軍 の軽巡洋艦 であったラ・アルヘンティーナ に設置される予定であったASDICの実験台としてヴィッカース・アームストロング を支えた[ 8] 。
戦時中
第二次世界大戦 開戦時にはプリマスの第18駆逐群所属となっており、その任務はイギリス海峡 周辺での船団護衛などであった。1939年12月20日から翌年1月5日まで再びデヴォンポート海軍基地にて修理が行われた。修理完了後、アカスタはウェスタンアプローチ管区 へと配置転換され[ 8] 、同年4月までに合わせて22の船団を護衛した[ 9] 。1940年1月31日には、ラプラタ沖海戦 にてドイツ海軍 の装甲艦 アドミラル・グラーフ・シュペー と交戦した後、プリマスまでエイジャックス の護衛を支援した[ 8] 。
4月9日のドイツ軍のノルウェー侵攻 後、これにに対抗するためにアカスタは本国艦隊 の護衛に当てられた。4月13日にナルヴィク への上陸部隊の輸送任務に加わったが、輸送船団はハーシュタ へと目的地が変更された。5月9日から15日まで、暗礁に乗り上げた軽巡洋艦ペネロピ がクライド湾 まで移動するときに護衛しなされることとなった(アルファベット作戦 )。5月31日から6月上旬まで、アカスタは駆逐艦アーデント 、アケロン 、ハイランダー 、ダイアナ と共に、航空母艦 アーク・ロイヤル とグローリアス の護衛にあたった[ 8] [ 10] 。
6月8日に、アカスタとアーデントはグローリアスをスカパ・フロー まで護衛する任務の最中であった15時46分に、ドイツ戦艦シャルンホルスト とグナイゼナウ に発見された。3隻は16時までイギリス海軍に発見されず、アーデントは他の2隻が進路を維持している間にドイツ海軍のどの船なのか特定するよう命じられた。ドイツ海軍が16時27分に発砲する前にアカスタが再び合流し、シャルンホルストと15cm副砲 で交戦したものの、敵の2隻は主砲でグローリアスを砲撃した。ドイツ側の砲撃後、アカスタはグローリアスの周りで煙幕 を発生させた上で、射程が不足していたのにもかかわらず、戦艦に向けて発砲した。アカスタは煙幕を上げた直後に攻撃を受けたものの、威力は微々たるものであった。グローリアスが複数回攻撃を受けた後、アカスタは空母から離れ、魚雷攻撃の射程を短縮するために戦艦に接近した。その結果、戦艦から視認されやすくなったため、頻繁に攻撃を受けるようになった[ 11] 。最初の攻撃は当たらなかったものの、2回目の攻撃で4本の魚雷の内の1本を17時34分にシャルンホルストの船体に12 mの穴を開けさせ、右舷機関室を浸水させ無力化させた[ 12] 。その後、アカスタは大破して炎上し始めたため、船長 は乗組員に船から脱出するよう命じた。砲側員の内の1人はシャルンホルストの主砲の内の1基が再装填する時間を稼いだものの、榴散弾 の破片による損傷以上の効果は得られなかった。18時20分頃に船尾から沈没し始めた。ほとんどの乗組員は、3日後にノルウェーの商用船であったボルガンドによりアカスタから2人、グローリアスから36人が救出される前に、低体温症 により亡くなった。救出後、アカスタから救出された2人の内の1人が自身の傷によって死亡した。ボルガンドに救出された人々全員は、6月13日にフェロー諸島 のトースハウン に上陸した[ 13] 。8人の将校と153人の兵士がアカスタと共に戦死したか、後に自身の傷が原因で亡くなった[ 8] 。
脚注
^ English 1993 , p. 14
^ Whitley 1988 , p. 97
^ a b c March 1966 , p. 247
^ March 1966 , p. 258
^ Friedman 2009 , p. 197
^ a b English 1993 , p. 15
^ a b c d e f English 1993 , p. 17
^ “Arnold Hague Convoy Database ”. Arnold Hague Convoy Database . 2018年8月26日 閲覧。
^ Haarr 2010 , p. 198, 203, 208, 278, 308
^ Haarr 2010 , pp. 329, 334–335, 337, 339–343
^ Garzke & Dulin 1985 , p. 157
^ Haarr 2010 , pp. 343–344, 349, 443, fn. 91
参考文献
English, John (1993). Amazon to Ivanhoe: British Standard Destroyers of the 1930s . Kendal, England: World Ship Society. ISBN 978-0-905617-64-0
Whitley, M. J. (1988). Destroyers of World War Two: An International Encyclopedia . Annapolis, Maryland: Naval Institute Press. ISBN 978-0-87021-326-7
March, Edgar J. (1966). British Destroyers: A History of Development, 1892?1953; Drawn by Admiralty Permission From Official Records & Returns, Ships' Covers & Building Plans . London: Seeley Service. OCLC 164893555
Friedman, Norman (2009). British Destroyers From Earliest Days to the Second World War . Annapolis, Maryland: Naval Institute Press. ISBN 978-1-59114-081-8
Colledge, J. J. ; Warlow, Ben (2006) [1969]. Ships of the Royal Navy (Rev. ed.). Chatham Publishing. ISBN 978-1-86176-281-8
Haarr, Geirr H. (2010). The Battle for Norway: April – June 1940 . Annapolis, Maryland: Naval Institute Press. ISBN 978-1-59114-051-1
Garzke, William H.; Dulin, Robert O. (1985). Battleships: Axis and Neutral Battleships in World War II . Annapolis: Naval Institute Press. ISBN 978-0-87021-101-0
関連項目
外部リンク