アクタウオ (学名 : Lactarius lactarius )は、スズキ目 に属する海水魚 である。アクタウオ属 (Lactarius ) に分類される唯一の種 で、1属 1種で単型 のアクタウオ科 を構成する。太平洋 とインド洋 の熱帯 ・亜熱帯 域に生息する。外見はアジ科 魚類によく似るものの、本種には稜鱗 (ぜいご)がないことなどから識別できる。最大でも全長40 cm程度の中型魚で、多くの個体は全長30 cmに満たない。甲殻類 や小型魚などを捕食する肉食魚である。インド などの国では商業的に漁獲され、食用に供される。
分類
本種の図版
アクタウオはスズキ目 のアクタウオ科(Lactariidae)アクタウオ属 (Lactarius )に分類される[ 3] 。現在アクタウオ科に分類される種 は本種1種のみで、アクタウオ科とアクタウオ属はそれぞれ単型 の科 、属 となっている[ 4] 。
本種は1801年にマルクス・エリエゼル・ブロッホ とヨハン・ゴットロープ・テアエヌス・シュナイダー によって初記載 された。この時本種はサバ属 Scomber に分類され、 Scomber lactarius という学名を与えられた。その後、ジョルジュ・キュヴィエ は1829年に本種をブリ属 Seriola に分類した。一方、アシル・ヴァランシエンヌ は1833年に本種をタイプ種 として独立のアクタウオ属(Lactarius )を創設し、この属分類が現在まで維持されている。アクタウオ属はアルベルト・ギュンター によって1860年にアジ科に分類されたが、同時に彼はニベ科 魚類との類似がみられることも指摘している。その後、サバ科 やハタ科 に含めるとする説も提唱されたが、最終的にジョージ・アルバート・ブーレンジャー が1904年に単型のアクタウオ科を創設し、この分類が現在まで受け入れられている[ 1] [ 5]
形態
本種は最大で全長40 cmに達するが、ほとんどの個体は全長30 cmを超えない[ 4] 。口は大きく、斜位で開く。肥大し、反り返った犬歯状歯 をもつ[ 5] [ 6] 。背鰭 はほぼ同じ高さの第一背鰭と第二背鰭に分かれており、第一背鰭は7-8棘条 、第二背鰭は1棘条と20-22軟条 からなる。臀鰭 は3棘条、25-28軟条からなる。尾鰭 は二叉する。側線 上には62-78枚の鱗 がある[ 4] [ 6] 。鰾 は左右非対称で、体前方で右側に曲り始め、体後方では完全に右側を走るようになる[ 7] 。
本種はアジ科魚類と似た形態をもつが、アジ科魚類とは異なり、臀鰭に遊離棘はみられず、側線上に稜鱗 (ぜいご)はない[ 6] [ 8] 。
体色は銀灰色で、背側は光沢を帯びた青色になり、鰓蓋 の上側には暗色斑点がみられる。腹側は銀白色で、各鰭は薄い黄色を帯びる[ 4] 。
分布
本種はインド洋 および西太平洋 の熱帯 ・亜熱帯 域に生息する。インド洋ではアフリカ 東海岸から東南アジア にかけて、西太平洋では南日本からオーストラリア のクイーンズランド州 にかけて生息する[ 4] 。
沿岸性で、水深15 mから100 mの海域、および汽水域 に生息する[ 4] 。
生態
肉食 魚で、さまざまな種類の底生性 の小動物を捕食する[ 6] 。インド で行われた研究によれば、本種は冬期にはインドアイノコイワシ属 (英語版 ) の種などの小魚を、夏から秋にかけてはアキアミ 類などの甲殻類 を主に捕食していた[ 9] 。また、幼魚 のうちは甲殻類を中心に捕食し、成長につれてさまざまな種類の獲物を捕食するようになるとの報告もある[ 10] 。
本種の寿命は3年ほどで、誕生後1年で全長15 cm、2年で全長27 cmに達する。全長13 cm程度で性成熟 に達する[ 10] 。産卵は年間を通じて起こるが[ 9] 、インド・カルナータカ州 のマンガルール などの近海では晩秋から初春の間にもっとも盛んに起こる[ 10] [ 11] 。成熟したメスは一腹に7,000から50,000の卵をもつ[ 11] 。
本種に寄生する寄生虫 としてアニサキス科 の線虫 [ 12] やウオノエ科 ウオノギンカ属 のAnilocra dimidiata [ 13] などが報告されている。
本種の幼魚はゴンズイ (またはミナミゴンズイ )の群れに混じって泳ぐ姿が観察されている[ 14] [ 15] [ 16] 。
人間との関係
インド・ヴィシャーカパトナム の漁港で水揚げされた本種
本種は生息域の多くで水産重要種とみなされている。特にインドなどでは商業漁業 の対象となり、底引きトロール漁 や地引き網 などで漁獲される[ 5] [ 6] 。漁獲された本種は鮮魚や干物 の形で流通して食用として利用され[ 6] 、タイ などでは高級魚とみなされる[ 8] 。ただし、肉は風味に乏しいとの評価もある[ 5] 。
出典
^ a b Richard van der Laan; William N. Eschmeyer & Ronald Fricke (2014). “Family-group names of Recent fishes” . Zootaxa 3882 (2): 001–230. doi :10.11646/zootaxa.3882.1.1 . https://biotaxa.org/Zootaxa/article/view/zootaxa.3882.1.1/10480 .
^ Eschmeyer, William N.; Fricke, Ron & van der Laan, Richard (eds.). "Lactarius ". Catalog of Fishes . California Academy of Sciences . Retrieved 5 November 2020.
^ "Lactarius lactarius " (英語). Integrated Taxonomic Information System . 2021年1月23日閲覧 。
^ a b c d e f Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2013). "Lactarius lactarius " in FishBase . October 2013 version.
^ a b c d Jeff M. Leis (1994). “Larvae, adults and relationships of the monotypic perciform fish family Lactariidae”. Records of the Australian Museum 46 (2): 131–143. doi :10.3853/j.0067-1975.46.1994.11 .
^ a b c d e f M. Kumaran (2015年). “FAO Identification Sheets Lactarius lactarius (Bloch & Schneider, 1801) ”. FAO . 2021年1月23日 閲覧。
^ 坂本一男 (1994) 「左右不相称の鰾」 『総合研究資料館ニュース』31号 、6-7頁、発行: 東京大学総合研究博物館
^ a b “アクタウオ ”. ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 (コトバンク ) . 朝日新聞社 Voyage Group. 2021年1月24日 閲覧。
^ a b T. Apparao (1966). “On some aspects of the biology of Lactarius lactarius (Schneider)” . Indian Journal of Fisheries 13 (1&2): 334-349. http://eprints.cmfri.org.in/2260/ .
^ a b c P. S. B. R. James; S. L. Shanbhogue & T. R. Chandrasekhara Gupta (1974). “Biology and Fishery of Lactarius lactarius (Schneider) Off Mangalore” . Indian Journal of Marine Sciences 3 : 72-79. http://eprints.cmfri.org.in/id/eprint/7507 .
^ a b P. U. Zacharia & N. Jayabalan (2007). “Maturation and spawning of the whitefish, Lactarius lactarius (Bloch and Schneider, 1801) (Family Lactariidae) along the Karnataka coast, India” . Journal of the Marine Biological Association of India 49 (2): 166-176. http://eprints.cmfri.org.in/id/eprint/2134 .
^ J. Richard Arthur; Susan Lumanlan-Mayo (1997) (英語). Checklist of the parasites of fishes of the Philippines . Rome: FAO. p. 63. ISBN 9251040362 . http://www.fao.org/3/w6598e/W6598E00.htm
^ Jean-Paul Trilles; Samuthirapandian Ravichandran & Ganapathy Rameshkumar (2011). “A checklist of the Cymothoidae (Crustacea, Isopoda) recorded from Indian fishes”. Acta Parasitologica 56 (4): 446-459. doi :10.2478/s11686-011-0077-z .
^ 「リボンゴビー100叩き!」 、フラプッチ~のダイビング日記。 (2009年2月9日) 2021年1月23日閲覧
^ 「かなりレア」 、マクロ好きブログ (2015年8月31日) 2021年1月23日閲覧。
^ 「アクタウオ」 、マンぶーンの生活 3~ど (2017年8月6日) 2021年1月23日閲覧。