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アテロスペルマ科

アテロスペルマ科
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : モクレン類 magnoliids
: クスノキ目 Laurales
: アテロスペルマ科 Atherospermataceae
学名
Atherospermataceae R.Br. (1814)[1]

アテロスペルマ科(アテロスペルマか、学名: Atherospermataceae)はクスノキ目に分類されるの1つである。オセアニアおよびチリに分布する616ほどが知られる。常緑性高木から低木であり、精油を含み、全縁または鋸歯がある対生している(図1)。(図1)は中型、花托は木質、花被片雄しべは輪生し、雌しべは離生心皮、集合果を構成する個々の果実痩果であり、ふつう羽毛状の突起をもつ。

特徴

常緑性高木から低木[2][3]。精油をもち、芳香がある[3](図2a)。ビスベンジルイソキノリンアルカロイドをもつ[4]一次維管束は管状[2]。道管は階段穿孔または単穿孔をもち、師管の色素体はP-type[2]散孔材[2]。節は1葉隙[2]十字対生し、単葉、葉柄をもち、托葉を欠き、葉縁全縁または鋸歯があり、葉脈は羽状で葉縁で湾曲しており、しばしば腺点があり、芳香をもつ[2][3][3][4](図1, 2b)。気孔はふつう不規則型、毛状突起はふつう単細胞性[2]。ときに向軸側に下皮(厚壁細胞層)がある[2]。精油細胞を含み、粘液細胞なはい[2]

2b. Daphnadra の枝葉

は両性、あるいは単性で雌雄同株または雌雄異株[2][3]。単生または集散花序を形成し、頂生または腋生する[2][3]。ときにをもち、花托が発達して木質化する[2][3]花被の特徴は多様であり、萼片花弁が分化してるもの、明瞭な分化がないもの、花被を欠くものなどがある[2]。花被をもつ場合、4–20枚、2(–3)輪につく[2][3](図1, 3a, b)。雄しべは4個から多数、1–2輪、花糸は付属体をもち、葯は外向、2胞子嚢からなり、弁開する[2][3][5](図1, 3a)。タペート組織はアメーバ型、小胞子形成は同時型、花粉は2–3溝粒[2][4]。ときに仮雄しべをもつ[3]雌しべは3個から多数、離生心皮、花柱は側部または基部から伸長、子房上位から下位、1心皮あたり胚珠は1個、基底胎座、倒生胚珠[2][3][4](図3b)。個々の果実痩果であり、ふつう羽毛状の突起をもち、花托で包まれて集合果を形成、これが不規則に裂開する[2][3][4](図3c)。染色体数は n = 22, 57。

3a. Atherosperma の花
3b. Doryphora の花
3b. Laurelia の果実

分布・生態

4. Doryphora の林(ガラワラ・ステート保護地域、オーストラリア)

ニューギニア島ニューカレドニアオーストラリアニュージーランドチリ熱帯から温帯域に分布する[2](図4)。

雌雄異花または同花であり、後者では雌性先熟が報告されている[6]花糸の付属体からは蜜が分泌され、ハナバチクロバエが訪花し、これらによって花粉媒介されることが報告されている[6]

分類

アテロスペルマ科

Doryphora

Daphnandra

Dryadodaphne

Atherosperma

Nemuaron

Laurelia

5. アテロスペルマ科内の系統仮説[7]

2024年現在、アテロスペルマ科には、6属16種ほどが知られている(下表1)。この中では、DoryphoraDaphnandra からなる系統群(図5)が最も初期に分岐したことが示唆されている[4]

アテロスペルマ科に分類されている植物は、古くはモニミア科に分類されていた[8]。しかし20世紀末以降の分子系統学的研究からも従来のモニミア科は単系統群ではないことが示されたため、アテロスペルマ属(Atherosperma)などいくつかの属はモニミア科から除かれ、クスノキ目内の独立したとして扱われるようになった[4][9][10]。クスノキ目の中では、アテロスペルマ科はゴモルテガ科の姉妹群であることが示されており、さらにこの系統群はシパルナ科の姉妹群であると考えられている[4]。アテロスペルマ科と考えられる化石は、白亜紀後期や第三紀前期の南極から見つかっている[4]。また、ヨーロッパからも、アテロスペルマ科の花粉の化石とされるものが報告されている[4]

表1. アテロスペルマ科の属までの分類体系の一例

脚注

出典

  1. ^ a b Atherospermataceae”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2025年1月24日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s Watson, L. & Dallwitz, M. J. (1992 onwards). “Atherospermataceae R. Br.”. The families of Angiosperms. 2025年1月24日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l Sauquet, H. (2019年). “Family Atherospermataceae”. NEW SOUTH WALES FLORA ONLINE. Royal Botanic Garden, Australia. 2025年1月24日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j Stevens, P. F. (2001 onwards). “ATHEROSPERMATACEAE”. Angiosperm Phylogeny Website. 2025年1月24日閲覧。
  5. ^ Duretto, M. F. (2009年). “3 ATHEROSPERMATACEAE”. Flora of Tasmania. Tasmanian Herbarium, Tasmanian Museum & Art Gallery. 2025年1月24日閲覧。
  6. ^ a b Gottsberger, G. (2016). “Generalist and specialist pollination in basal angiosperms (ANITA grade, basal monocots, magnoliids, Chloranthaceae and Ceratophyllaceae): what we know now”. Plant Diversity and Evolution 131: 263-362. doi:10.1127/pde/2015/0131-0085. 
  7. ^ Staedler, Y. M. & Endress, P. K. year=2009. “Diversity and lability of floral phyllotaxis in the pluricarpellate families of core Laurales (Gomortegaceae, Atherospermataceae, Siparunaceae, Monimiaceae)”. International Journal of Plant Sciences 170 (4): 522-550. doi:10.1086/597272. 
  8. ^ a b c d 大場秀章 (2009). 植物分類表. アボック社. p. 24. ISBN 978-4900358614 
  9. ^ APG III (2009). “An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG III”. Botanical Journal of the Linnean Society 161 (2): 105–121. doi:10.1111/j.1095-8339.2009.00996.x. 
  10. ^ Chase, M. W., Christenhusz, M. J. M., Fay, M. F., Byng, J. W., Judd, W. S., Soltis, D. E., ... & Stevens, P. F. (2016). “An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV”. Botanical Journal of the Linnean Society 181 (1): 1-20. doi:10.1111/boj.12385. 
  11. ^ 米倉浩司・梶田忠. “LAPGII(2009)による被子植物の科の配列”. 植物和名ー学名インデックスYList. 2025年1月24日閲覧。
  12. ^ Atherosperma”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2025年1月24日閲覧。
  13. ^ Daphnandra”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2025年1月24日閲覧。
  14. ^ Doryphora”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2025年1月24日閲覧。
  15. ^ Dryadodaphne”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2025年1月24日閲覧。
  16. ^ Laurelia”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2025年1月24日閲覧。
  17. ^ Nemuaron”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2025年1月24日閲覧。

外部リンク

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