エドモンド・カートライト (Edmund Cartwright, 1743年 4月24日 - 1823年 10月30日 )は[ 1] 、イギリス の牧師 、実業家 、発明家 。特に自動織機 (力織機 )の開発で名高く、イギリスの産業革命 に貢献した。兄弟に海軍軍人で急進的な改革派政治家だったジョン・カートライト大佐 (英語版 ) 、貿易事業者でラブラドル半島 を探検したジョージ・カートライト (英語版 ) がいる。
生涯
イギリスのノッティンガムシャー の旧家の家柄に生まれる。ウェイクフィールド のクイーン・エリザベス・グラマー・スクール(英語版 ) で学び、1766年にオックスフォード大学 ユニバーシティ・カレッジ(英語版 ) で学び、同モードリン・カレッジ を卒業した[ 2] 。
牧師
以後40代頃までイングランド国教会 の牧師を生業とする。牧師時代の1770年には詩集「Armine and Elvira」、1779年には「平和の王子」を出版した。1779年レスターシャー のゴードビーマーウッドの教区牧師となり、1783年にはリンカン大聖堂 の受禄聖職者となった。しかし発明家として知られるようになり、1806年に名誉神学博士 を授与された[ 3] 。
従軍牧師 として、ジョン・ラッセル公爵 の邸宅ウォバーン・アビー で公爵息子(のちのイギリス首相 ラッセル伯爵 )の教師も務めた[ 4] 。
発明家
カートライトのロープ製造機
1785年 にリチャード・アークライト の水力紡績機 の特許 が失効し、マンチェスター に綿糸が多く出回った。それ以前から織機 が不足したためカートライトは1784年に力織機を設計しはじめ、1785年に力織機の基本特許を取得し、それに伴ってドンカスター に織物工場を設立した。年を重ねるごとに力織機の新しい特許を取得し、力織機以外にも1789年 に梳毛機 (英語版 ) 、1792年 にロープ製造機、1797年 にアルコール機関(水の代わりにアルコールを使用した蒸気機関 )を発明した[ 5] 。
1790年、マンチェスター のゴートン出身のロバート・グリムショーはマンチェスター中心部に織物工場を建設し500台の力織機を導入する予定だったが、30台を設置した時点で火災で焼失した。手織り機 の織り手 が職を失うことを恐れて放火したのではないかと見られている。この工場は再建されなかった。
当時の発明家は発明だけでは収入はなかったが、1809年英国議会 庶民院 がカートライトの功績を称え1万ポンドを贈った。その後はケント に移住。1821年、王立協会 のフェローに選ばれた[ 6] 。1823年サセックス のヘイスティングス で死去し、サセックスのバトルに埋葬された[ 7] 。
力織機
ドビー織り機構のある1890年代の織機。Textile Mercury に掲載されたイラスト。
カートライトは織り の機械化を成し遂げた。紡績機 と工場制 (英語版 ) は既に存在していた。1784年に世界初の力織機 (power loom ) を設計し、1785年に特許を取得したが、実用性は乏しかった。1789年、実用に耐える織機の特許を取得し、後の発明家らが改良を行う基盤となった。機械的に駆動できる織機は1人の人間がついて操作する必要はあったが、手動の織機より遥かに生産力が高く、商業的成功を収めた。なお、力織機の開発にあたっては Zach Dijkhoff という年老いた職人が手助けした。
カートライトが織機 に付加したのは、送り出し機構、経糸と緯糸の停止機構、織機動作中に経糸にのりを塗る機構である。カートライトはドンカスター で力織機を使った織物工場を操業開始したが、数多くの問題が見つかり、その対策に追われた。例えば、小割板を別々に動かすためにクランクと偏心ホイールを導入した。また、シャトル がシャトルボックスに入らなかったときに織機を自動停止するようにし、シャトルボックス内でシャトルが撥ねるのを防ぐようにした。さらに織れた布をピンと張るための自動伸子(テンプル)を追加した。1793年、この工場は債権者の手に渡っている。
1792年、力織機に関する最後の特許を取得している。それは、複数のシャトルボックスを備えた織機で、チェック模様や格子縞を織ることができる織機だった。しかし彼の努力はあまり効果がなかった。彼は織機に経糸を設置した状態で糊付けする方式や織機に経糸を設置する前に糊付けする方式を試したが、どれもうまくいかなかった。これを解決したのはウィリアム・ラドクリフ (英語版 ) と助手のトーマス・ジョンソンで、1803年のことである。彼らは整経を行うビーム経糸巻取り機と巻き取った経糸を糊付けする機械を発明した。
親族
脚注
^ 名はエドワード(Edward)とも。
^ “Edmund Cartwright ”. Lemelson-MIT . MIT . 18 October 2016 閲覧。
^ Chisholm, Hugh , ed. (1911). "Cartwright, Edmund" . Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 5 (11th ed.). Cambridge University Press. p. 435.
^ Scherer, Paul (1999). Lord John Russell: A Biography . Susquehanna University Press. p. 5. ISBN 9781575910215 . https://books.google.com/books?id=L0xuWohqz3gC
^ この記事にはアメリカ合衆国 内で著作権が消滅した 次の百科事典本文を含む: Chisholm, Hugh , ed. (1911). "Cartwright, Edmund ". Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 5 (11th ed.). Cambridge University Press. p. 435.
^ "Cartwright; Edmund (1743 - 1823)" . Record (英語). The Royal Society . 2014年8月22日閲覧 。
^ Strickland (?), M. (1843). A Memoir of the Life, Writings, and Inventions, of Edmund Cartwright, D.D. FRS, Inventor of is Power Loom, Etc. Etc. . London: Saunders and Otley
^ Mitchell, Rosemary (2004). "Penrose [née Cartwright], Elizabeth [pseud. Mrs Markham] (c. 1779–1837), writer" . Oxford Dictionary of National Biography (英語) (online ed.). Oxford University Press. doi :10.1093/ref:odnb/21889 . ISBN 978-0-19-861412-8 . 2020年4月30日閲覧 。 (要購読、またはイギリス公立図書館への会員加入 。)
^ William Walker(1862), Memoirs of the Distinguished Men of Science of Great Britain: Living in the Years 1807 , 34頁 。
参考文献
Cartwright, Edmund (1772). Armine and Elvira: A Legendary Tale (3 ed.). London: John Murray. https://books.google.co.jp/books?id=7eiGrKz4rB4C&printsec=frontcover&dq=Edmund+Cartwright&redir_esc=y&hl=ja#PPA3,M2
Strickland (?), M. (1843). A Memoir of the Life, Writings, and Inventions, of Edmund Cartwright, D.D. FRS, Inventor of the Power Loom, Etc. Etc. . London: Saunders and Otley. https://books.google.co.jp/books?id=CbQ3AAAAMAAJ&printsec=frontcover&dq=Edmund+Cartwright&redir_esc=y&hl=ja#PPR3,M2 2008年4月21日 閲覧。
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関連項目
ワグナー - 荷車 製造を意味する姓「カートライト」のドイツ語名
外部リンク