エピカ (アルバム)
『エピカ』(Epica)は、2003年に発表されたキャメロットのアルバム。ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ著『ファウスト』を土台にしたバンド初のコンセプト・アルバムである。 エピカという言葉は、単に叙事詩という意味だけでなく、物語に存在する有形の地、人間の内宇宙の象徴などの意味を持ち、理性や精神を表している、とロイ・カーンは語る。 次作『ザ・ブラック・ヘイロー』とともに2部作になっている。 アルバム名はエピカのバンド名の由来にもなった。 収録曲
登場人物
あらすじプロローグインストゥルメンタル。アルバムの序曲となるこの曲の雰囲気で聴き手を夢の中に引き込む役目を果たしていて、原典の「天上の序曲」(Prologue in Heaven)と関連している。ブックレットにはエドガー・アラン・ポーの詩『A Dream Within A Dream』が引用されている。 センター・オブ・ザ・ユニヴァース前曲から引き続いて聴き手をその心の中あるいは内宇宙、すなわち答えがあると考えられる場所へと導く内容が歌われる。次曲に続くべくアリエルの出立についても語られる。 この歌はアルバムの実質的な1曲目であるが、内容的にはアルバム全体を統括する締め括りの曲である。 フェアウェル旅が始まる。アリエルは彼の知る全てを投げ打って全ての退路を断つ。彼は科学や宗教をどれだけ研究しても答えを見つけ出すことが出来ず、1人で世界を探求しようと考えたのである。彼の行動が狂っているように見えたとしても、少なくとも彼自身はその答えを見つけ出すことで満足できる考え、しかもそれを宿命であるとも考えている。 オーピエイト・ソウルこの間奏曲では、人間が耽溺した時に感じる暗闇と絶望が描かれていて、次曲へのメドレーになっている。 エッジ・オブ・パラダイスアリエルは楽園の果てに辿り着いて興奮する。素晴らしい世界に出会えたことは成功以外の何者でもなかったからだ。しかし故郷から遠く離れて異国を旅し、幸福や平和への様々な道を試みるうちに、徐々に人生の歯止めが利かなくなってくる。そして正気を失いつつあったものの、社会に2つの側面があることを確かに学ぶ。それは闇であり光であった。やがて体から力が失われ始める。 アラブ風の音階とグレゴリオ聖歌風の合唱をミックスすることで、危険な現実逃避に待つ誘惑、快楽、陥穽を表現している。 ワンダーアリエルは絶望の中、希望という波に乗せられて愛や若さに突き動かされていた頃を思い出そうとしていた。それは6月の暖かな夜、愛する女性との一時であった。しかしそのような夢は所詮感傷的な願い事に過ぎないことを悟る。本当に必要としていたことを放り投げてしまったようにも感じ、哀歌を通じて深い後悔の念をも抱いている。彼にとっての人生は、もはや何の意味もないものになろうとしていた。 オーメンインストゥルメンタル。アリエルは自らの命を絶とうとしている。ここのメロディは後のヘレナの死の場面とつながっている。 ディセント・オブ・ジ・アークエンジェルアリエルが最悪の状態にあるその時、自称メフィストが月明かりの下に現れる。アリエルは自分が想像していた悪魔とあまりにも違う姿形であることに驚く。彼は美しい女性の姿のまま、メフィストはアリエルに自分が何を叶えてあげられるかを上品な口調で説くのであった。 アット・ザ・バンケットインストゥルメンタル。メフィストの城に大勢の人々が集まり、アリエルもそこに招かれる。いささか遅れて到着してしまうものの、主人の登場にはどうやら間に合う。 フィースト・フォー・ザ・ヴェイン盛大なパーティでアリエルはみんなと友達同士になり、時を過ごす。女、酒、御馳走、そしてメフィストは肉欲も満たしてくれる。目の前の楽しい仲間や贅沢さに目が眩み、探し求めていた幸せにとうとう辿り着いたと確信したように見える。そして曲の終盤、彼はついに取り返しのつかない契約に署名してしまう。 オン・ザ・コールデスト・ウィンター・ナイトパーティが終わり、アリエルは若き頃に愛し合った女性であるヘレナに突如出会う。短い時間ではあったが、激しい時をともに過ごした。この歌は夏の場面であった『ワンダー』と対をなすように冬の寒さと強い関連を持たせており、メフィストと出会った後のアリエルの変心を象徴している。 ここではジャンベとウッド・ベースを使ってライブ録音されている。 ロスト & ダムドヘレナはアリエルに妊娠していることを告げようとするが、出来なかった。アリエルはメフィストとの契約が彼女をひどく悩ませ苦しめるに違いないと信じていた。結婚を望むヘレナに対し、アリエルは2人の仲を断ち切って彼女を救うため冷酷に振る舞う。どちらにせよ彼女との関係がどうであろうとも、彼の目標は愛よりも高い到達点にある。少なくともこの時点ではそう確信していた。彼女に全てを忘れてここを去るようはっきりと告げる。 バンドネオンを使ったタンゴ風のヴァース部は、ヘレナとアリエルの間に高まる緊張を表現している。 ヘレナズ・テーマヘレナは予想もしなかった現実に絶望し、腹に子を宿したその身を川に投げる。川の精霊はその命を優しく受け止め、生まれずに死んだ子も祝福するよう神に申し伝える。 ドーンインストゥルメンタル。触れ役がヘレナの死を布告する。ここでの入水は宗教的犯罪である。 ザ・モーニング・アフターヘレナが自殺したことをアリエルは知る。同時に彼女が身重であったことも知り、それはすなわち自分の子も死んだということである。彼は深く悲しみ歎くが、来世で会えるという希望もまた湧いてくる。 ウェイズ・トゥ・エピカこの歌をもって本作の第1部は幕を下ろす。メフィストは邪悪と皮肉を象徴するものとしてアルバムを締め括る。一方のヘレナは善を象徴する天使として再びここに登場する。アリエルは今もなお善にも悪にも与せずに狭間を浮いたまま、平穏と究極の真実を求め続けるのである。 次作『ザ・ブラック・ヘイロー』に続く。 参加ミュージシャン
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