『オルガス伯の埋葬』(オルガスはくのまいそう、西: El entierro del Conde de Orgaz, 英: The Burial of the Count of Orgaz)は、スペインルネサンス期のギリシャ人画家のエル・グレコが1586年から1588年にかけて描いた絵画[1]。トレドのサント・トメ教会の所蔵で、グレコの最高傑作と言われている。非常に大きな作品で、画面上は天界と現世に明確に上下分割されている。
この絵画の構成はビザンティン美術のイコンの題材である「聖母被昇天」(Assumption of the Virgin)と密接に関係しているとする見解がある。この見解を裏付ける例として、1983年にギリシアのシロス島の教会で発見された、グレコがクレタ島在住の1567年以前に描いたテンペラ画の『聖母マリア永眠』(Dormition of the Virgin)のイコンが挙げられており、美術史家のマリーナ・ランブラキ=プラーカはこの絵画とイコンとの間に関連性があると確信している[7]。他にもロバート・バイロンが、「聖母マリアの永眠」というイコンの伝統的モチーフが『オルガス伯の埋葬』の画面構成のモデルであると考え、エル・グレコは真のビザンティン派画家であり、彼の芸術における物語性や叙述表現などは、その生涯を通じてビザンティン様式芸術からの構成、モチーフの影響を受けていると断言している[9]。
一方ウェゼイは、この作品の構成がビザンティン美術の題材「聖母マリアの永眠」から派生したものであるという主張を「説得力がない」、「この絵画は初期イタリアルネサンス様式と密接に関連している」として否定している。ウェゼイは反証として、絵画前面に押し込むように多くの人々を描くことによって空間の深みを表現した、初期フィレンツェ派マニエリストのロッソ・フィオレンティーノ、ヤコポ・ダ・ポントルモ、パルミジャニーノの名前を挙げている。さらにルネサンス期のヴェネツィア派を代表する画家ティントレットが描いた『キリストの磔刑』(Crucifixion)、『ラザロの復活』(Resurrection of Lazarus)の2枚の絵画を例示し、『ラザロの復活』では、奇跡の顕現をその背後で一列になって目にしている人々という構成上の類似を指摘した。また、2人の聖人を亡骸にかがみこませるように描く楕円形の構図は、他のどの絵画よりもティツィアーノが「キリストの埋葬」をテーマにして描いた初期の絵画群に非常によく似ているとしている[10]。
'Two Paintings and a Sceptic', lecture by Stewart Sutherland linking this painting to 'Guernica' by Picasso through the question of religious faith, given at Gresham College, 26 February 2008 (available in text, audio and video formats). (英語)