スズメバチ科
スズメバチ科 (Vespidae) は、スズメバチ上科に属する膜翅目の科の一つ。多くの人がハチというと想起する黄色と黒の縞模様の毒針で刺す虫であるスズメバチ亜科やアシナガバチ亜科といった真社会性狩バチと、種数ではさらに多くの種を含むドロバチ亜科などいくつかの単独性(一部は亜社会性)生活する亜科からなる。 世界の亜寒帯から熱帯に広く分布し、約5000種からなる多様な種が含まれる。 下位分類アシナガバチ亜科(Polistinae)、スズメバチ亜科(Vespinae)、ドロバチ亜科(Eumeninae)、ハラホソバチ亜科[1](Stenogastrinae)、ハナドロバチ亜科[2](Masarinae)、サバクドロバチ亜科[3](Euparagiinae)の六亜科[4][5][6]、あるいは上記六亜科にGayellinae(ハナドロバチ亜科のGayellini族)とZethinae(ドロバチ亜科のZethini族)をそれぞれ亜科として分離した八亜科[7]を含む。 日本には六亜科のうちアシナガバチ亜科、スズメバチ亜科、ドロバチ亜科の三亜科[8]が分布する。 社会性科内にさまざまな程度の社会性が見られることから、系統関係とあわせ、社会性の進化に関するモデル生物としての研究が盛んに行われている。[1]
生態真社会性スズメバチ(大多数のスズメバチ亜科とアシナガバチ亜科、一部のハラホソバチ亜科)では、いわゆる女王バチと多数の働きバチ(不妊のメス)がコロニーを作って生活する。通常、温帯の社会性種の営巣活動は1年限りで、春に女王バチが巣を作り、不妊の娘である働きバチの労働により秋までに翌年の女王バチとなるメスとオスを生産し、冬が来るまでには営巣活動が終わり、翌年の女王のみが土中や朽木の中にもぐって越冬する。熱帯や亜熱帯に生息する種(特に南米のアシナガバチ亜科)のなかには、ミツバチのように分封によって新しい巣を作る種もいる。 ドロバチ亜科、サバクドロバチ亜科のハチは子供のためにガの幼虫などを麻酔して巣に運び貯蔵するカリバチである。ハナドロバチ亜科は花蜜と花粉を子供の餌として利用する習性をハナバチとは独自に進化させた。ドロバチなど単独性種の巣は、地面や枯れ枝の髄に坑を掘る(掘坑性)、泥などで壷や瓶を作る(築造性)、竹筒や樹幹に開いた虫の脱出坑等の既存坑を利用する(借坑性)と大きく3つのタイプがある。 巣の素材として、単独性種の多くは泥を使って巣作りするが、ドロバチ亜科の一部(Zethini族)は生きた葉などを、スズメバチ亜科やアシナガバチ亜科やハラホソバチ亜科の一部では、枯れ木などから齧り取った植物繊維を噛み潰したパルプを利用する[10][11]。 アシナガバチ亜科やスズメバチ亜科では巣防衛のための高い攻撃性のため、毎年、特に夏から秋に人に対して刺傷被害をもたらす。またオオスズメバチ等のように養蜂業に対する脅威となる場合もある。しかし他方では、多くの種はチョウやガの幼虫を捕食するので、農業害虫の個体数抑制や自然生態系のバランス維持に寄与している。
在来のスズメバチ亜科がいなかったニュージーランドでは、フランスからヨーロッパクロスズメバチ(Vesupula germanica)が侵入した結果、生態系や畜産業などに被害が出ている。中国南部原産のツマアカスズメバチ(Vespa velutina)はヨーロッパや韓国に侵入し、生態系や養蜂業に被害が出ている。日本でも対馬に定着してしまったもののそれ以外への侵入を防止するための水際対策が行われ、現在本土への定着は免れている。カナダとアメリカ合衆国では2019年にアジアからオオスズメバチ(Vespa mandarinia)が発見され問題になっている。このうちアメリカ合衆国では徹底的に駆除が行われた結果、アメリカ農務省により根絶したとの発表が2024年にあった[12]。 脚注
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