ダイレクトカッティングダイレクトカッティングとは、レコード制作方式の一つで、レコード制作において通常行われる、オリジナルテープへの録音・編集・マスターテープの作成、というプロセスを通さず、収録した音曲等をその場でミックスダウンし、そのままラッカー盤をカッティングマシンでカットする、という制作方式である。 概要アナログオーディオテープレコーダーがマスタリングに使えるレベルに実用化されたのはLPレコードの時代であるから、それ以前の蝋管やSPレコードはダイレクトカッティングであったわけだが、それらを指してこの語が使われることはあまりない。 LPレコード時代には録音時間が格段に延びたこともあり、テープレコーダーをセッション録音・編集に使用するようになった。しかしアナログテープレコーダーは信号の変化が不可避であるため、これを避けあえてリアルタイムでカッティングマシンに信号を入力して原盤を制作したのがダイレクトカッティングである。 ダイレクトカッティングでは、演奏およびカッティングが一発勝負であるため、許容できない演奏ミスやミキシング、エフェクト、カッティングレベルの調整不足等があるとレコード片面分が全面的にやり直しになってしまうため、ごく一部の高音質を求めるオーディオマニア向け録音として企画されるにとどまった。ダイレクトカッティングにはコンサートに期待される演奏の緊張感が求められるため(ファーストテイク、一発録り)、敢えてこの方法に挑戦するアーティストもあった。 LPレコード時代における最初のダイレクトカッティング盤は、1969年に日本コロンビアがリリースした一連の45回転LPであった[1]。その後、1970年代中頃から国内外のレーベルからダイレクトカッティングLPが多数リリースされたが、PCM録音の導入により、徐々に製作・リリースは減っていった。 ダイレクトカッティング制作の例
高音質デジタル録音で有名なテラーク社も、デジタル導入前はダイレクト・カッティングを採用していた。 CD登場の初期、いわゆる「DDD」と呼ばれる[2]全ディジタルの制作プロセスが一般的になる以前には、物理的な切り貼りで編集可能なアナログで編集されることもあったため[3]、アナログなプロセスが介在していないCDとしてダイレクトカッティングに意味がある場合もあった。現在も、生演奏を直接CDのガラスマスターにカッティングして制作しているダイレクトカッティングCDも少数ながら存在するが、ハイレゾディジタルオーディオによって信号を欠落なく編集可能な現在は、音質などの面ではダイレクトカッティングの意味は薄く、一発録音によるアーティストの緊張感などの精神的な面での意味合いが大きい。 注
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