ハイペリオンガンダム (HYPERION GUNDAM) は、漫画『機動戦士ガンダムSEED X ASTRAY』に登場する、モビルスーツ (MS) に分類される架空の有人式人型ロボット兵器のひとつ。「ハイペリオン」は「高い天を行く者[1]」の意味を持つギリシア神話の神「ヒュペリーオーン」に由来する。メディアや関連商品では「ハイペリオンガンダム」と公称されるが、『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY』シリーズ作中の設定においては、同作のほかのガンダムタイプ同様に「ハイペリオン」と呼称される。
メカニックデザインは大河原邦男。
本項では、関連作品に登場する派生機についても解説する。
設定解説
諸元
ハイペリオンガンダム HYPERION GUNDAM[2]
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型式番号 |
CAT1-X1/3(1号機) CAT1-X2/3(2号機) CAT1-X3/3(3号機)
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全高 |
16.90m
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重量 |
54.70t
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装甲材質 |
不明[注 1]
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武装 |
- ビームナイフ「ロムテクニカRBWタイプ7001」×4+1
- ビームキャノン「フォルファントリー」×2
- RFW-99 ビームサブマシンガン「ザスタバ・スティグマト」
- モノフェーズ光波防御シールド「アルミューレ・リュミエール」×7
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搭乗者 |
カナード・パルス(1号機) バルサム・アーレンド(2号機) イワン・ザンボワーズ(3号機) 他
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ユーラシア連邦が自国製MS開発計画「X」計画に基づき、アクタイオン・インダストリー社と共同開発した機体。「X」計画は同じ連合所属国家で初めてMSの独自開発に成功した大西洋連邦への対抗手段として発動され、対ザフト戦後の地球連合内での発言力を維持するべく行われた国家プロジェクトであった[2]。
ゲルフィニートで培われたアクタイオン社のMS開発ノウハウが生かされており[4]、同時に大西洋連邦とザフト機の技術も盛り込まれた機体となっている[2]。本機はユーラシア連邦の得意技術である光波防御帯シールド「アルミューレ・リュミエール (A.L.)」を搭載し、これを用いた独自の戦術思想に基づく運用が可能である。その他の武装は本体バッテリーの大半をA.L.のパワー供給に回さねばならない関係上、火器自体にエネルギー源を持たせたパワーセル方式を採用している[5]。
型式番号の「CAT」は「Composition Armament Tactical=戦術構成兵装」の略であり[6]、「X」は試作機を示している。数字ナンバーは/の左側がその機体の製造ナンバー、右側は総生産数を表す。つまり、ハイペリオンは3機が製造されたことになる。その後、政治情勢の変化でユーラシア軍上層部が大西洋連邦製のダガーシリーズの供与を受けることを決定した結果、プロジェクトは凍結されてハイペリオンシリーズは試作機3機をもって生産終了となってしまった[2]。
武装
- RFW-99 ビームサブマシンガン「ザスタバ・スティグマト」
- ザスタバ (Zastava) 社製のビームサブマシンガン[2]。発砲には1発分のエネルギーを充填した薬莢型パワーセルを多数内蔵した専用マガジンを使用する[5]。マニュアル操作でセミオート / フルオート射撃の切り替えが可能。使用済みのセルは右側面の排莢口から順次排出される[5]。また、サイトセンサーとバレルの間に着脱式のビームナイフを装備。格闘はもちろん、柄ごと射出して敵の意表を突く隠し武器としても使われる。スティグマト (Stigmate) はフランス語で「聖痕」を意味する。
- ビームナイフ「ロムテクニカRBWタイプ7001」
- ロムテクニカ社製のビームナイフ[2]。通常のビームサーベルよりも刃渡りが短い。また、そのエネルギーも柄に設置された小型バッテリーから供給されるため[2]、機体稼働時間に影響をおよぼすことは無い。両腕・両脚に1基ずつ、スティグマトのフレームに1基の合計5基を装備する。
- ビームキャノン「フォルファントリー」
- 本機の武装で最大級の威力を持つウイングバインダー先端部のビーム兵器。パワーセルの供給が続く限り、連射が可能[2]。フォルファントリー (Forfanterie) とはフランス語で「空威張、乱暴」を意味する。
- モノフェーズ光波防御シールド「アルミューレ・リュミエール」
- 両腕に1基ずつ、ウイングバインダーに5基の発生装置を内蔵する。ユーラシア連邦の有する光波防御帯から発展した装備[5]。アルミューレ・リュミエールとはフランス語で「装甲した光」を意味する[2]。エネルギー消費を抑えて腕部の発生器のみを使用することでシールドとして機能するが[2]、完全展開時に各部の発生器が展開して機体全体を覆うことにより、360度全方位の攻撃に対して鉄壁の守りを誇っている[5]。従来の光波シールドは出入り双方向の攻撃を遮断するものであり、防御と同時に攻撃を行うことはできなかったが、本機のシールドは外部からの攻撃を遮断しつつ自機による内部からの攻撃を通すモノフェーズ(単位相指向型)光波シールドに改良されており、正に攻防一体を可能としている[5]。ただし、使用には多大な電力を必要とするうえ、完全展開時の連続稼動時間はわずか5分となっている[5]。発生装置を変形させることにより、攻撃用のビームランスとしても使用可能[7]。この状態では同じ光波シールドの防御フィールドを突破することも可能となる[7]。一方、対ビームコーティングやラミネート装甲で覆われた兵装で攻撃されると、光波シールドがすり抜けてしまう弱点を持つ[8]。
- また、この技術は後に他勢力にも流出したことから、改良型や発展型が製作された。大西洋連邦のMS供与と引き換えにユーラシア連邦からの技術の譲渡が行われ[9]、ザムザザーなど連合製の大型機動兵器に搭載された陽電子リフレクターが開発されている。また、ハイペリオンの開発を行っていたアクタイオン・インダストリーがザフトとも関係を持っていたため[10]にザフトにも採用され、新型MSデスティニーなどや、クライン派が開発したストライクフリーダムなどに搭載されたビームシールドの原型となっている。
劇中での活躍
- 1号機
- 漫画作品『機動戦士ガンダムSEED X ASTRAY』にて登場。元スーパーコーディネイター計画の被験者である特務兵カナード・パルスの搭乗機。
- 他の2機はグレーベースの塗装だが、この機体のみ白主体の塗装となっている。ニュートロンジャマーキャンセラー (NJC) を奪おうとドレッドノートを付け狙ったが、敗北して中破する。母艦オルテュギアを強奪してアルテミスを脱走した後には2号機のパーツで修復され、後述の「スーパーハイペリオン」に強化改造された。
- スーパーハイペリオン
- 大西洋連邦管轄の月面プトレマイオス基地を襲撃してNJCを強奪し、小型艦船用の核エンジンを搭載して強化された1号機。A.L.の時間制限が無くなると同時に、各武装も核エンジンから直接エネルギーを供給され(供給の際にはケーブルをつなぐ必要がある)、ビームサブマシンガンも2号機から奪い取ったことで2丁になり、火力も大幅に向上している。
- CE71年9月27日に[11]ドレッドノート(Xアストレイ)に再び挑むものの、無理にフォルファントリーを発射したことによる自滅で敗北して大破した直後、核エンジンが暴走して爆散した。その後、四散したハイペリオンの残骸から回収された武装の一部を改良し、ドレッドノートイータが使用している。
- 機体名の「スーパーハイペリオン」はカナードによる俗称という意味合いが強く、各種ゲーム作品では「ハイペリオンガンダム(NJC装備)」と表記されることが多い[注 2]。
- 2号機
- 漫画作品『機動戦士ガンダムSEED X ASTRAY』に登場。
- 自称「アルテミスの荒鷲」の異名を持つバルサム・アーレンド少尉の搭乗機。オルテュギアを奪いアルテミスを脱走したカナードたちを追撃したが、ALの防御力を過信した隙を突かれ、ビームナイフでコクピットを潰されて撃破された。機体はカナードによって回収され、半壊した1号機の修理パーツと化している。
- 3号機
- フォトストーリー作品『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY B』では、「アルテミス」のジェラード・ガルシアが、カナードによる1号機持ち出しと月面プトレマイオス基地襲撃の責任を叢雲劾になすりつけようとして残ったハイペリオン3号機(搭乗者名不明)を立ち向かわせたが、ラミネート装甲を施されたタクティカルアームズで光波防御帯を破られ、これも撃破されている[12]。
- 小説版『機動戦士ガンダムSEED DESTINY ASTRAY』では後に機体が修復されて「ユーラシアの英雄」イワン・ザンボワーズの手に渡り、反ユーラシア連邦政府活動に使われていたが、イライジャ・キールとの戦いに敗れ、再び破壊された[13]。
ハイペリオンG
諸元
ハイペリオンG Hyperion G
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型式番号 |
CAT1-XG1/12[注 3](スリー・ソキウス機) CAT1-XG2/12(叢雲劾機)
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武装 |
- ビームナイフ「ロムテクニカRBWタイプ7001」×4+1
- ビームキャノン「フォルファントリー」
- RFW-99 ビームサブマシンガン「ザスタバ・スティグマト」
- GAU8M2 52mm機関砲ポッド
- 対ビームシールド
- モノフェーズ光波防御シールド「アルミューレ・リュミエール」
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搭乗者 |
スリー・ソキウス 叢雲劾
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『機動戦士ガンダムSEED FRAME ASTRAYS』から登場。一旦は製造中止となったハイペリオンだったが、製造元であるアクタイオン社は引き続き本機の有用性を猛アピール、これに押された地球軍は陸戦に特化した量産試作機の試験配備を承認した[14][15]。量産機のベースフレームは基本的に試作機からの流用だが、投入領域を陸上のみに限定し、各部の機能・装備を簡略化することで大幅なコストダウンを図っている。頭部センサーはガンダムヘッドからデュアルセンサーをゴーグルで覆う方式に変更。エネルギー、コスト面で問題のあったA.L.は、右ウイングバインダー先端の1基を残してすべて排除された。左バインダーは完全撤去され、代替として武装用のマウントラッチを設置している。ラッチは縦軸の旋回範囲を持ち、固定した火器はそのまま可動砲台として使用可能。
東アジア共和国第13密林保護区にて、傭兵部隊「サーペントテール」リーダー叢雲劾、同地域の連合軍司令官代理を務める戦闘用コーディネイター、スリー・ソキウスが現地の反乱軍ゲリラ鎮圧任務のため、本機に搭乗している。機体の正規カラーは試作1号機に近いホワイト、グレーだが、劾機のみはサーペントテールのチームカラーであるブルーに塗装されている。なお、同じくサーペントテール所属パイロットのイライジャ・キールにも本機が与えられる予定だったようだが、自分が嫌うカナードの乗機の量産型という理由で搭乗を断っている。
武装・装備
- 機関砲
- 頭部両側に計2門装備する[15]。
- ビームナイフ「ロムテクニカRBWタイプ7001」
- 原型機から引き続き装備される[15]。
- ビームキャノン「フォルファントリー」
- 原型機と同様の装備だが、左側のバインダーが撤廃されたことから1基のみに削減されている。
- RFW-99 ビームサブマシンガン「ザスタバ・スティグマト」
- 原型機から引き続き装備される。
- GAU8M2 52mm機関砲ポッド
- 機体背部左側のマウントラッチに装備される。
- 対ビームシールド
- 左腕に携行する[16]。105ダガーやストライクダガーのものと同型。
- モノフェーズ光波防御シールド「アルミューレ・リュミエール」
- 右側のバインダーに1基装備する。
ハイペリオンGR&ハイペリオンGL
雑誌『月刊ホビージャパン』に掲載された模型連動企画『機動戦士ガンダムSEED DESTINY ASTRAY R』に登場。作例はモデラーであるおれんじえびすが製作[17]。物語中においてはこれに設定が付加されて登場する。
諸元
ハイペリオンGR / ハイペリオンGL Hyperion GR / Hyperion GL
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型式番号 |
CAT1-VGR / CAT1-VGL
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武装 |
- ビームナイフ「ロムテクニカRBWタイプ7001」×4+1
- ビームキャノン「フォルファントリー」
- RFW-99 ビームサブマシンガン「ザスタバ・スティグマト」
- GAU8M2 52mm機関砲ポッド
- モノフェーズ光波防御シールド「アルミューレ・リュミエール」
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搭乗者 |
なし(人工知能「80」による無人操縦)
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- 設定解説
- アクタイオン社の技術者ヴァレリオ・ヴァレリ(通称ダブルブイ)が、ターンレッドの護衛機として、ハイペリオンGをベースに改造した2機の機体。GRはバックパックの右側にアルミューレ・リュミエール発生器を、左側に機関砲ポッドを、ザスタバ・スティグマトを右腕に、シールドを左腕に装備。GLはこれらを左右逆に装備している。頭部アンテナ・手首・足部下部・シールドの色も、GRが青、GLが赤で塗り分けられている。機体名の「G」はオリジナルの「Ground Type(地上機)」ではなく、「Good(よくできた)」に由来している。操縦は「8」の複製AIである「80」によって行われ、ターンレッドとともにデスティニーインパルスRの僚機であるDIアダガに搭載されていた「バディ・システム」を模倣した「トリオ・システム」によって、高度な連携行動を可能としている。
量産型ハイペリオン宇宙仕様(正式名称不明)
『天空の皇女』にて、ヴァレリオおよびそれを借り受けたレオンズ・グレイブスが運用した宇宙戦用のハイペリオンの量産機。アルミューレ・リュミエールは試作機と同じデザイン・機能を持った機体全方向に光波シールドを展開するものが装備されている。アルミューレ・リュミエールを取り外して背部に長距離砲を装備したタイプも登場している。レオンズはフェアネス・ツヴァイクレが買い取ったアルテミス要塞を攻略しようとした際に特攻させたうえで核エンジンを臨界・自爆せようとした台詞があることから、核エンジンおよびニュートロンジャマーキャンセラーが搭載されているようで、作中では珍しい核動力の量産型モビルスーツとなる。登場した機体は無人制御されたものであり、ヴァレリオが運用していたことから「80」および「トリオ・システム」、もしくはその派生であるAIによる運用がなされていると見られるが詳細は不明。
脚注
注釈
- ^ 『機動戦士ガンダムSEED』において設定製作を担当した下村敬治はコラムにおいて、PS装甲を採用せず軽量化、機動性を強化した機体と説明している[3]。
- ^ 『SDガンダム GGENERATION CROSSRAYS』では「スーパーハイペリオンガンダム」名義。
- ^ 機体名および型式番号の「G」とは、陸戦型を示す「Ground Type」の頭文字。型式番号から判断するに計12機が製造された模様である。
出典
関連項目