アントワーヌ・ドミニク・ドミノ(Antoine Dominique Domino Jr., 1928年2月26日 - 2017年10月24日)は、ファッツ・ドミノ(Fats Domino)の名で知られるアメリカ合衆国のシンガーソングライター。
1950年代から1960年代初期にかけてアメリカで最も売れた黒人歌手のひとりである。ストライド奏法とブギウギの影響を受けた独自のブルース調のスタイルでピアノを演奏した。代表曲は、「Blueberry Hill」、「Ain't That A Shame」、「Walking To New Orleans」、「I'm Walkin' 」、「Blue Monday」など。
ロックンロールの創始者の一人と言われており、「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100組のアーティスト」において第25位だった。
略歴
1949年、インペリアル・レコードより「Detroit City Blues」でデビュー。B面に収録された「The Fat Man」がR&Bチャート2位の大ヒットを記録する。インペリアルには1963年まで在籍し、デイヴ・バーソロミューのプロデュースと共作のもと、リー・アレン、ハーブ・ハーデスティ(テナー・サクソフォン)、ウォルター・"パプース"・ネルソン、ロイ・モントレル(ギター)、コーネリアス・コールマン(ドラムス)ら強力なミュージシャンを揃え、数多くのヒットを世に送り出した[4]。
1963年にABCレコードへ移籍するものの、以後インペリアル時代に匹敵するヒットは生まれていない。
1986年、ロックの殿堂入りを果たしている。
ニューオーリンズのロウワー・ナインス・ワード (下9地区) に自宅を構えていたが、2005年のハリケーン・カトリーナで浸水。一時は行方不明と伝えられたが[5]無事救出された。ハリケーンでの被災後、彼は郊外のハーヴィーに引っ越したが、彼がそれまで住んでいた家屋は彼の出版事務所となり、その後も彼はしばしばそこを訪れていた[6]。
2006年には、カトリーナの前にレコーディングした新作アルバム『Alive & Kickin' 』をリリースした。同年春のニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテッジ・フェスティバルでは、最終日のトリを務める予定であったが、当日になってから体調不良を理由にキャンセル。演奏はしなかったものの、会場には現れ、ステージから観客に対し、演奏できないことを謝罪した[7]。
ビートルズも彼をリスペクトしており、ジョン・レノンは『ロックン・ロール』で「Ain't That A Shame」をカバーし、ポール・マッカートニーは『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』で、「I'm in Love Again」をカバーしている。奇しくも「I'm〜」はジョージ・ハリスンが「初めて聴いたロックのレコードだ」と発言していた[8]。また、ビートルズが1968年3月にリリースした「レディ・マドンナ」はポールが「ドミノのモノマネをしながら歌い始めた」と作曲時のエピソードを語っている。同曲はドミノが同年8月にカバー・シングルをリリースし、同年のアルバム『Fats Is Back』に「ラブリー・リタ」のカバーとともに収録している。なお1964年にアメリカツアー中のビートルズと対面している[9]。
2017年10月24日、ニューオーリンズ郊外に位置するルイジアナ州ハーヴィーの自宅にて死去。89歳だった[10][3]。
ディスコグラフィー
オリジナル・アルバム
- 1956年 『Rock And Rollin' With Fats Domino』(Imperial)
- 1956年 『This Is Fats Domino』(Imperial)
- 1956年 『Rock And Rollin’ 』(Imperial)
- 1957年 『This Is Fats』(Imperial)
- 1957年 『Here Stands Fats Domino』(Imperial)
- 1957年 『The Fabulous Mr. D』(Imperial)
- 1958年 『Fats Domino Swings』(Imperial)
- 1959年 『Lets Play Fats Domino』(Imperial)
- 1960年 『...A Lot Of Dominos!』(Imperial)
- 1960年 『Sings Million Record Hits』(Imperial)
- 1961年 『Let The Four Winds Blow』(Imperial)
- 1961年 『I Miss You So』(Imperial)
- 1961年 『What A Party!』(Imperial)
- 1962年 『Million Sellers By Fats』(Imperial)
- 1962年 『Twistin' The Stomp』(Imperial)
- 1962年 『Just Domino』(Imperial)
- 1963年 『Walking To New Orleans』(Imperial)
- 1963年 『Here He Comes Again!』(Imperial)
- 1963年 『Here Comes Fats Domino』(ABC-Paramount)
- 1963年 『Let's Dance With Domino』(Imperial)
- 1964年 『Fats On Fire』(ABC-Paramount)
- 1965年 『Getaway With Fats Domino』(ABC-Paramount)
- 1965年 『Fats Domino '65』(Mercury)
- 1968年 『Fats Is Back』(Reprise)
- 1971年 『Fats』(Reprise)
- 1974年 『Hello Josephine - Live At Montreux』(Atlantic)
- 1977年 『Live In Europe』(United Artists)
- 1979年 『Sleeping On The Job』(Antagon)
- 1990年 『Antoine "Fats" Domino』(Tomato)
- 1993年 『Christmas Is A Special Day』(The Right Stuff)
- 2006年 『Alive And Kickin' 』(no label)[11]
フォト・ギャラリー
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1956年当時のTVフィルムより
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オランダ・アムステルダム公演(1962年)
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西ドイツ・ハンブルク公演(1973年)
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1980年代のフォト
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Jimmy Moliereと共演(1997年)
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ニューオーリンズにて米大統領
ジョージ・W・ブッシュと対面 (2006年8月)
脚注
- ^ Pareles, Jon; Grimes, William (2017年10月25日). “Fats Domino, Early Rock ’n’ Roller With a Boogie-Woogie Piano, Is Dead at 89”. The New York Times (The New York Times Company). https://www.nytimes.com/2017/10/25/obituaries/fats-domino-89-one-of-rock-n-rolls-first-stars-is-dead.html 2021年12月1日閲覧。
- ^ a b c Unterbergber, Richie. “Fats Domino Biography, Songs & Albums”. AllMusic. Netaktion LLC. 2021年12月1日閲覧。
- ^ a b “Fats Domino, Who Survived Katrina, Dies at 89”. The Georgetowner. (2017年10月26日). https://georgetowner.com/articles/2017/10/26/r-p-fats-will-missed/ 2023年9月8日閲覧。
- ^ “The Imperial Singles Vol 4 1959-1961 Fats Domino”. Ace Records (UK) (2022年8月19日). 2022年8月19日閲覧。
- ^ “ニューオーリンズで活動、ファッツ・ドミノが行方不明”. ZAKZAK (2005年9月2日). 2024年11月29日閲覧。
- ^ “Fats Domino stirred New Orleans flavor into rock ‘n’ roll”. (2017年10月26日). https://apnews.com/article/b78945e2fc4a4e9d9554ad6caf3ed8a3 2024年11月29日閲覧。
- ^ Fats Domino cancels Jazz Fest appearance in New Orleans (Foster's Daily Democrat) 2023年9月8日閲覧
- ^ The first rock and roll song that George Harrison ever heard, by Jack Whatley, Sun 26th Jun 2022 2023年9月8日閲覧
- ^ The Beatles meeting Fats Domino, New Orleans, 16 September 1964; photos by Curt Gunther (Harrison Archive) 2023年9月8日閲覧
- ^ “ファッツ・ドミノさん死去=ロックンロール創始者の一人-米”. 時事通信. (2017年10月26日). https://web.archive.org/web/20171026053650/https://www.jiji.com/jc/article?k=2017102600049&g=int 2017年10月26日閲覧。
- ^ Fats Domino Albums (Discogs) 2024年11月29日閲覧
参考文献
外部リンク