「モナリザのバラード 」(The Ballad of Mona Lisa )は、アメリカ合衆国のポップ・ロック・バンドであるパニック!アット・ザ・ディスコ の楽曲。2011年2月1日にフュエルド・バイ・ラーメン およびディケイダンス・レコード から3作目のスタジオ・アルバム『悪徳と美徳 』からの第1弾シングルとして発売された[ 1] 。作詞作曲はブレンドン・ユーリー 、スペンサー・スミス 、ブッチ・ウォーカー 、ジョン・フェルドマン の共作で、プロデュースはウォーカーとフェルドマンが手がけた。アメリカの『ビルボード 』誌のHot 100 で最高位89位を記録し、オーストラリアのARIAチャート では最高位21位を記録した。
背景
ユーリーによれば、「モナリザのバラード」はアルバム『悪徳と美徳』のために完成させた最初の楽曲の1つだった[ 7] 。本作のアイデアは2007年の時点で存在していて[ 8] 、ユーリーは『フィーバーは止まらない 』発売直後に浮かんだアイデアを本作の起源としている[ 9] 。ユーリーは曲は、俺達が2人編成になる前からずっと俺のパソコンに保存されて、埃をかぶってるような状態だった。30秒から1分くらいの短いアイディアは、パソコンに沢山作り貯めていて、この曲もそのうちの1曲だった と語っている[ 7] 。ユーリーは当初「あまりピンと来なかった」ものの、プロデューサーのブッチ・ウォーカー に送ったところ気に入ったことから本作に取り組むこととなった[ 7] 。1日を通して行なわれたウォーカーとの共同作業でブリッジ以外の基本のアレンジが完成し、ユーリーはその時点では、俺もかなりノリ気になってきた。元々、広げるつもりのなかったアイディアが、一気にすごく気に入った曲に化けたんだからね! と語っている[ 7] 。
本作の音楽性について、2011年のMTVニュースの取材でユーリーはアルバム『フィーバーは止まらない 』と類似していることに言及し、「『フィーバーは止まらない』にうまくはまるかどうかはわからない…スペンサーと俺が曲を書き始めた段階で新しいスタートを切っていたから、音響的にも違うものになっていたかもしれない」と語っている[ 10] 。MTVニュースのカイル・アンダーソンは、本作について「トレモロ を効かせたリフ、迫力のあるパーカッション、洗練された重層的な歌詞」を組み合わせた楽曲と説明している[ 11] 。本作は15世紀にレオナルド・ダ・ヴィンチ によって描かれた油彩画『モナ・リザ 』を暗示しており、ユーリーは「『モナリザのバラード』は全体的にそのキャラクターが実在するという構想だ。絵を見てもモナリザがいったい何を考えているのかはわからない。感情をほとんど表に出すことなく、見た人の頭の中で起こっていることを覆い隠すモナ・リザの微笑みがそこにはある」と語り、「自分自身の中の戦い…すなわち内なる葛藤についての曲」と説明している[ 12] 。
リリース
2010年12月に発行された『オルタナティヴ・プレス 』で、本作が2011年1月にシングルとして発売されることが報じられた[ 13] 。この時点でタイトルは「Mona Lisa 」とされていた[ 13] 。2011年1月17日、本作のプレビューが公開された[ 14] 。1月25日にリリックビデオが公開された(現在は非公開)[ 15] [ 16] 。2月1日にシングルが発売され、『ビルボード 』誌の「Alternative Digital Song Sales 」では2011年2月19日付のチャートで初登場4位を記録し、以来7週にわたってチャートインした[ 17] 。ミュージック・ビデオ はiTunes の「Top Alternative Music Videos 」で初登場1位を獲得したほか、MTV やMTV2 などでヘヴィー・ローテーション された[ 18] 。
3月22日にスタジオ・アルバム『悪徳と美徳 』が発売され、本作はアルバムの1曲目に収録された[ 19] 。なお、アルバムの最後に収録されている「ニアリー・ウィッチズ」には、本作の「Mona Lisa pleased to please you 」という歌詞を繰り返すパートが含まれている[ 20] 。
評価
「モナリザのバラード」のジャンルは、複数のメディアによってポップ・パンク [ 2] 、ポップ・ロック [ 3] 、パワー・ポップ [ 4] [ 5] 、エモ [ 6] と見なされている。
『スピン 』誌のウィリアム・グッドマンは「ダークかつ自らの潜在的性質を持たせた聖歌のようなパワー・ロック・バラード」と評した[ 21] 。『OK! 』誌のヴァレリー・ノームは、「エリザベス朝 の郷愁を感じるロマン主義 やヴィクトリア朝 から自分たちのスタイルを引き出すバンドにふさわしい名案」と評した[ 12] 。ジャーナリストのジョン・ペアレス は、『ニューヨーク・タイムズ 』紙に寄稿したパニック!アット・ザ・ディスコのバワリー・ボールルーム 公演のレビューの中で本作について「バラードではなく、ミッドテンポのロッカー」と述べた[ 22] 。『ビルボード 』誌のケヴィン・ラザフォードは「パニック!アット・ザ・ディスコの初期の作品が持つヴォードヴィルの精神に満ちあふれていて、パニック!アット・ザ・ディスコがこの5年間で書いた中で最もキャッチーな楽曲」と評した[ 23] 。
本作の評価において、アルバム『フィーバーは止まらない』との類似性についての言及も見られ、フィラデルフィアのラジオ局WRFF でディスクジョッキーを務めるウェンディ・ロリンズは自身のTwitter上で「『フィーバーは止まらない』によく似ているサウンド」と述べた[ 24] [ 25] 。AOL Musicのエミリー・タンは、本作について「バンドが初めてヒット・シーンに登場したときのサウンドをファンに思い出させた」楽曲と見なした[ 26] 。『オルタナティヴ・プレス』のアニー・ザレスキ は、「『フィーバーは止まらない』のアップビートのポップのエネルギーと、『プリティ。オッド。 』の核と明快さを兼ね備えた」楽曲と述べた[ 27] 。
『PopBuzz 』のジェームズ・ウィルソン=テイラーは、2018年1月時点でパニック!アット・ザ・ディスコが発表した全71曲(カバー曲やコラボ曲を除く)を対象としたランキングで第12位に本作を選出した[ 28] 。
2011年のケラング!アワード では最優秀シングル にノミネートした[ 29] 。
ミュージック・ビデオ
「モナリザのバラード」のミュージック・ビデオ は、「アイ・ライト・シンズ・ノット・トラジェディーズ 」も手がけたシェーン・ドレイク が監督を務めた[ 30] [ 31] 。ビデオは2011年2月8日に公開された[ 11] 。MTVニュースのジェームズ・モントゴメリーは、「いろんな意味で、『モナリザのバラード』はバンドの過去に別れを告げるものであると同時に、バンドの未来を受け入れるものとなっている…言ってみればそれは当然なことで、通夜が行われているビデオという理由だけではない」と述べた[ 32] 。
ビデオでは、19世紀のスチームパンク の雰囲気を持たせた葬式のシーンが描かれている[ 33] 。撮影はHBO のテレビドラマ『デッドウッド 〜銃とSEXとワイルドタウン 』の撮影でも使用された大牧場で行われた[ 33] 。「アイ・ライト・シンズ・ノット・トラジェディーズ」のミュージック・ビデオとの関連性が見られ、ビデオの冒頭に登場する蜘蛛の巣にまみれたシルクハットは、同作のミュージック・ビデオで使用されたものと同じである[ 31] 。ビデオ中でユーリーは2人のキャラクターを演じており、そのうち1人は映画『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 』でジョニー・デップ が演じたスウィーニー・トッド からアイデアを得ている[ 32] 。
『オルタナティヴ・プレス』誌のキャシー・ホイットは、2016年5月までに公開されたパニック!アット・ザ・ディスコのミュージック・ビデオを対象にランク付けし、本作のミュージック・ビデオを第4位に選出した[ 34] 。
クレジット
※出典[ 35]
チャート成績
認定
出典
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外部リンク
シングル プロモーション・シングル 楽曲 スタジオ・アルバム ライブ・アルバム コンピレーション・アルバム
Introducing... Panic at the Disco
Panic! at the Disco Video Catalog
関連人物 関連項目
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