ヴォーグ (Vogue )ないしヴォーギング (Voguing )は1960年代 に「ボール・ルーム」と呼ばれたダンス・シーンから発展した非常に様式化されたクラブダンス 及びストリートダンス である[ 1] [ 2] 。1980年代のアメリカ合衆国 の都市部のゲイ・クラブシーンで知られる様になり、1990年 に同国の歌手マドンナ のシングル『ヴォーグ 』のミュージックビデオ で披露され[ 3] 、1991年 のサンダンス映画祭 審査員特別賞を受賞したドキュメンタリー映画 『パリ、夜は眠らない 』(1990年)が公開されたことなどから、大衆化した[ 2] 。近年、アメリカのダンスバトル番組『America's Best Dance Crew 』に出演するダンスグループ「ヴォーグ・エボリューション 」により再び国際的な注目を浴びている[ 4] 。
歴史
ヴォーギングはファッション雑誌『ヴォーグ』のモデルのポーズに似ていたことから、そう呼ばれる様になった。ダンスのスタイルは1930年 初期の社交ダンスに起因する。当時は「パフォーマンス」[ 2] と呼ばれており、現在知られるスタイルよりも、やや複雑で幻影的なものだった。その後、アメリカの都市部の黒人、ラテン系同性愛者 の「ボール・ルーム」ダンスシーンとクラブで踊られてスタイルを確立し更なる発展を遂げた[ 2] 。「ボール・ルーム」とはいわゆる「社交ダンスの場」の意味であるが、ここでは、ヴォーギングの技を競い合うコンテストである。参加者はそれぞれの「ハウス」と言われたグループに属する。代表的なハウスの例はウィリー・ニンジャ率いる「ハウス・オブ・ニンジャ(House of Ninja)」、「ハウス・オブ・エキストラヴァガンザ(House of Xtravaganza )」、「ハウス・オブ・ミズラヒ(House of Mizrahi)」、「ハウス・オブ・ラベイジャ(House of Labeija)」などがある。 尚、日本にもこれらのハウス(Ninja/Mizrahi等)に所属する者が若干名だが存在する。
スタイル
ヴォーギングは現在3つのスタイルがある。それは初期から1980年代 までの「オールドウェイ」、1990年代 の「ニューウェイ」、1995年 頃に生まれた「ヴォーグフェム」の3つである[ 5] [ 2] 。
オールドウェイは左右対称、動きの精度、上品で滑らかな動きが特徴である。ニューウェイはより厳正で幾何学的な動きのパターン「クリック」(手足のねじれ)、「アームズ・コントロール」(手先の早業と手首の幻想的な動き)が特徴である。パントマイムの動きに修正が加えられた形に似ているともいえる。ヴォーグフェムは女性の滑らかな動きが極端に誇張されたもので、バレエ 、モダンダンス 、ブレイクダンシングに影響を受けている。また、ジャンプ、トリック、アクロバット、フリップといった動きを含んでいる。ヴォーグフェムには「ソフト&カント」と「ドラマティクス」の2種類がある。加えて、ヴォーグフェムは6つの要素からなる。それは「手」「回転」「キャットウォーク」「ダックウォーク」「ディップ」「フロアパフォーマンス」である[ 6] 。「ディップ」は大衆化しており、時折「5000」とも言われるが、その始まりはヴォーグフェムである。
ヴォーギングの技術を競い合うときには、競争者はヴォーギングの何かしらの要素を入れなければならない。『America's Best Dance Crew』に出演するダンスグループヴォーグ・エボリューション が踊るのは、ヴォーグフェムである。
影響
1990年Blond Ambition Tour でヴォーギングを披露するマドンナとダンサーたち。マドンナは当時のアンダーグラウンドダンスに世界的な露出をもたらした。
複数の有名なアーティストがヴォーグの影響を受けている。マドンナ 、ビヨンセ 、リアーナ 、ウィロー・スミス 、FKAツイッグス 、アリアナ・グランデ 、アジーリア・バンクス は過去と現在のヴォーグから影響を受けつつ、古典的なダンスのビートも取り入れている[ 7] [ 8] [ 9] [ 10] 。
ヴォーグとボール文化の最も新しい影響の1つに、ドキュメンタリー映画 『キキ-夜明けはまだ遠く- 』がある[ 11] [ 12] 。
マドンナの「ヴォーグ」は、このダンススタイルに人気と意識をもたらしたが、彼女が文化を盗用し流用したと信じる人々から批判を受けることとなった[ 13] 。文化の盗用 には、少数派または不利な状況を置かれている文化の特定の側面を、起源の適切な承認なしに多数派文化のメンバーが採用することが含まれる[ 14] 。1990年のミュージック・ビデオは、ホセ・エクストラバガンザとハウス・エクストラバガンザ のルイス・カマチョ によって振り付けされ、ダンサーのウィリー・ニンジャ をフィーチャーしている。しかし、歌に登場する有名人はすべて白人 であり、マドンナ自身も白人女性である。マドンナはコミュニティのメンバーを制作に含めることでハーレム文化を参照にしたが、批評家は彼女がこのスタイルと主要な主流の関係にあるため、元の文化を消してしまったと主張し続けている[ 15] 。
関連項目
出典
^ Gregory, Deborah (2008). Catwalk . Random House, Inc.. ISBN 9780375848957
^ a b c d e Freeman, Santiago (August 1, 2008). “The Vogue trend returns” . DanceSpirit.com (MacFadden Performing Arts Media). オリジナル の2010年11月21日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20101121152407/http://dancespirit.com/articles/1844 2010年11月14日 閲覧。
^ Guilbert, Georges-Claude (2002). Madonna as postmodern myth: how one star's self-construction rewrites sex, gender, Hollywood, and the American dream . McFarland. ISBN 9780786414086
^ Kinon, Cristina (September 27, 2009). “'America's Best Dance Crew' loses its luster with Vogue Evolution gone” . New York Daily News. http://www.nydailynews.com/entertainment/tv/2009/09/27/2009-09-27_americas_best_dance_crew_loses_its_luster_with_vogue_evolution_gone.html 2010年11月14日 閲覧。
^ “The House of Diabolique vs. Runway, Ballroom, and Voguing music ”. HouseOfDiabolique.com . 2010年11月14日 閲覧。
^ “The Ballroom Scene: A New Black Art ”. BlackYouthProject.com (October 21, 2009). 2010年11月14日 閲覧。
^ Hunt, Kenya (2014年11月18日). “How voguing came back into vogue” (英語). The Guardian . ISSN 0261-3077 . https://www.theguardian.com/fashion/fashion-blog/2014/nov/18/-sp-vogueing-dance-came-back-into-vogue-madonna 2017年5月2日 閲覧。
^ “Meet Leiomy Maldonado, the Trans Latina Vogue Dancer Whose Hair Flip Inspired Beyoncé & More | LATINA ” (英語). www.latina.com . 2017年5月2日 閲覧。
^ “NEW MUSIC: Azealia Banks’ new Vogue-worthy track “The Big Big Beat” is an instant-hit ” (英語). www.afropunk.com . 2017年5月2日 閲覧。
^ “Leiomy Maldonado Talks Signature Hair Flip That Inspired Beyoncé” . Vibe . (2017年1月25日). http://www.vibe.com/2017/01/leiomy-maldonado-on-famous-hair-flip/ 2017年5月2日 閲覧。
^ Kenny, Glenn (2017年2月28日). “Review: ‘Kiki’: The Vogueing Scene, Still a Refuge for Gay and Transgender Youth” . The New York Times . ISSN 0362-4331 . https://www.nytimes.com/2017/02/28/movies/kiki-review.html 2017年5月2日 閲覧。
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^ Chatzipapatheodoridis, Constantine (2017). “Strike a Pose, Forever: The Legacy of Vogue and its Re-contextualization in Contemporary Camp Performances”. European Journal of American Studies 11 (3). doi :10.4000/ejas.11771 .
^ “cultural appropriation ”. Cambridge Dictionary . 2019年12月13日 閲覧。
^ “The Historic, Mainstream Appropriation of Ballroom Culture ”. Them. . 13 December 2019 閲覧。
外部リンク