順序体 (F,P) と F のガロワ拡大E に対し、E の部分体 M と P の延長となる M 上の順序 Q からなる拡大順序体 (M, Q) で包含関係に関して極大なものが(ツォルンの補題を適用することにより)存在する。この順序体 (M, Q)(あるいは短く M)は (F, P)(あるいは短く F)の E における(相対)実閉包と呼ぶ。M がちょうど F に一致するとき、(F,P) は E に対して実閉であるという。また E が F の代数閉包のとき、E における F の相対実閉包は、実際に上で述べたところの F の実閉包となる[2]。
F が単に体である(体の演算と両立する順序の存在も仮定しないし、F が順序付け可能とも仮定しない)ときでも、やはり F は実閉包(それはもはや体ではないかもしれない)を持ち、それは実閉環(英語版)として得られる。例えば、二次体Q(√2) の実閉包は、実閉環 Ralg × Ralg である(Ralg のコピーが二つあるのは、Q(√2) の二つの順序付けに対応している)。他方、Q(√2) を R の部分順序体と考えるときの、その実閉包はふたたび Ralg となる。
アルキメデスの性質は共終数の概念と関係がある。順序集合 F に含まれる集合 X が F において共終であるとは、各 y ∈ F に対し x ∈ X が存在して y < x となることである。つまり、X は F における非有界列を成す。F の共終数は、最小の共終集合の大きさ(つまり、非有界列を与えることのできる集合の最小濃度)である。例えば自然数は実数全体の成す順序集合において共終であり、したがって実数体の共終数は ℵ0 である。
いま実閉体 F の特質を定義する不変量として「F の濃度」と「F の共終数」を得た。これに加えて「F の重み (weight)」は F の稠密部分集合の大きさの最小値で与えられる。これら三種の基数は、任意の実閉体の順序に関する性質の多くを教えてくれるが、それがどのようなものであるかを発見するのは難しいかもしれない(特に一般化連続体仮説を含めない場合には)。成り立つかもしれないし成り立たないかもしれない特定の性質も存在する:
体 F が完備 (complete) であるとは、F を真に含む順序体 K で F が K において稠密となるようなものが存在しないときに言う。F の共終数が κ のとき、この完備性は κ で添字付けられるコーシー列が F において収束することと同値である。
順序体 F が順序数 α に対する η集合(英語版)性質 ηα を持つとは、F の ℵα より小さい濃度を持つ二つの部分集合 L, U で L の任意の元が U の任意の元よりも小さいようなものが任意に与えられたとき、L の任意の元より大きくかつ U の任意の元より小さい x ∈ F が存在するときに言う。これは飽和モデル(英語版)であるというモデル理論的性質に近しい関係がある。つまり、任意の二つの実閉体が ηα となるための必要十分条件は、それらが ℵα-飽和となることであり、またさらに言えば二つの ηα 実閉体はそれらがともに濃度 ℵα ならば互いに順序同型である。
一般化連続体仮説
実閉体の特徴付けは一般化連続体仮説を仮定することを受け入れるならば非常に簡単になる。連続体仮説が満足されるならば、連続体濃度と η1-性質を持つ任意の実閉体は、互いに順序同型である。この意味で一意な実閉体 F は超冪の意味で RN/M と定義できる(ただし、M は R に順序同型な体を導かない極大イデアルとする)。これが超準解析においてもっとも一般的に用いられる超実数体であり、その一意性は連続体仮説に同値である。[注釈 2]
さらに言えば、F の構成に超冪が必要というわけでもなく、より構成的に、濃度 ℵ1 の η1-群となる全順序可除アーベル群 G 上の形式冪級数体 R((G)) の、可算個の例外を除く全ての項が零であるような級数全体の成す部分体として構成することもできる[5]。
しかしこの F は完備体ではなく、またそれに完備化を施して得られる体 K は濃度がより大きいものとなる。F が連続体濃度(いま仮定によりそれは ℵ1 である)を持てば、その完備化 K は濃度 ℵ2 で F を稠密部分体として含む。これは超冪のでないとはいえ、やはりこれは「超実体」であり、したがって超準解析で用いるに適した体である。これは実数体の高次元版とみることもできる。つまり、濃度が ℵ1 でなく ℵ2 で、共終数が ℵ0 でなく ℵ1 で、重みが ℵ0 でなく ℵ1 であり、η0-性質(これは単に任意の二実数の間に別の実数が存在することを言うもの)の代わりに η1- 性質を満たす。
Alling, Norman L. (1962), “On the existence of real-closed fields that are ηα-sets of power ℵα.”, Trans. Amer. Math. Soc.103: 341–352, doi:10.1090/S0002-9947-1962-0146089-X, MR0146089