植物ホルモン (しょくぶつホルモン)とは、植物 自身が作り出し、低濃度で自身の生理活性・情報伝達を調節する機能を有する物質で、植物に普遍的に存在し、その化学的本体と生理作用とが明らかにされた物質のことである[ 1] [ 2] 。シロイヌナズナ などのモデル生物 での実験により研究が進んだこともあり、高等植物 (裸子植物 と被子植物 )に特有のものと思われがちであるが、シダ植物 に普遍的に存在する造精器誘導物質であるアンセリディオゲン (antheridiogen) や、シダ植物・コケ植物 における既知のホルモンの生理活性も知られている[ 3] 。動物 におけるホルモン とは異なり、分泌器官 や標的器官 が明確ではなく、また輸送のメカニズムも共通していない[ 1] 。
かつては、動物 のホルモン と定義を同じくしていたが、多数の植物でホルモンが発見され、上記のような特徴に加え、作用する場所や濃度に応じて、同一の物質であってもその生理活性が著しく異なるなど、動物ホルモンとの差異が明らかになるにつれ、植物ホルモンとして区別されるようになった。
合成された化学物質や、微生物などが生産する物質の中には、植物の成長や生理活性に影響を与えるものとして、植物成長物質 、植物成長調節物質 、成長阻害物質 などが存在する。しかし、上記の定義に照らし、植物ホルモンとは区別される[ 1] 。
分類
化学的には植物ホルモンは単一の種類の物質ではない。「古典的」植物ホルモンは5つの種類に分けられる [要出典 ] 。
加えて、ブラシノステロイド やジャスモン酸類 、サリチル酸 、システミン といったペプチドホルモン も役割を果たしている。ポリアミン は、常に存在すること、細胞内でのみシグナル機能を有すること、不可逆的に反応すること、高濃度(mM)で作用を示すことなどから植物ホルモンとはされていない。最近、ストリゴラクトン 類も植物ホルモンとして認められてきた[ 4] 。
植物ホルモンの種類
ペプチドホルモン
近年、約100アミノ酸 以下の比較的短鎖な分泌型ペプチド が、細胞間情報伝達に関与していることが明らかになってきた。代表的なものに、CLV3 をはじめとする、CLE遺伝子 群などが発見されており、受容体の解析も進みつつあるため、現在では植物ホルモンの1つのグループとしてペプチドホルモン とされている[ 1] [ 6] 。
植物ホルモン様物質
以下の物質は植物ホルモンとして扱われることもある[ 1] [ 2] 。
化学構造
脚注
参考文献
小柴恭一; 神谷勇治編『新しい植物ホルモンの科学』(第2)講談社、2010年。ISBN 978-4-06-153446-9 。
福田裕穂ほか監修『植物ホルモンのシグナル伝達-生合成から生理機能へ』(新)秀潤社〈細胞工学別冊〉、2004年。ISBN 4-87962-274-5 。
H.R.Lerner ed. (1999-07). Plant Responses to Environmental Stresses: From Phytohormones to Genome Reorganizatio . Books in Soils, Plants, and the Environment. CRC Press. ISBN 9780824700447
Jonathan D. B. Weyers; Neil W. Paterson (2002-04). “Plant hormones and the control of physiological processes[1] ”. New Phytologist (Plant Sciences) 152 (3). doi :10.1046/j.0028-646X.2001.00281.x .
関連項目