『泉』の着想源となったと考えられるシュリー館のレリーフ。
同じくイノサンの泉のレリーフ。
『海から上がるヴィーナス 』の1850年のヴァリアント 。パリ、ルーヴル美術館 所蔵。
《恥じらいのヴィーナス》と呼ばれるタイプの彫刻の1つ『メディチ家のヴィーナス』。
『メディチ家のヴィーナス』に基づくとされる『海から上がるヴィーナス』の最初期の素描。1807年。
『泉 』(仏 : La Source , 英 : The Source )は、 フランス 新古典主義 の画家ドミニク・アングル が1820年から1856年にかけて描いた絵画である。油彩 。主題は若く美しい女性の姿で表現された泉の擬人像である。フィレンツェ 時代の1820年頃に制作が開始され1856年に完成した本作品は[ 1] [ 2] 、アングルの画業において最もよく知られる代表的傑作である。『泉』を完成させたときアングルは76歳に達しており[ 3] 、すでにその名声は知れ渡り[ 4] 、エコール・デ・ボザール の学長を務めていた[ 5] 。現在はパリ のオルセー美術館 に所蔵されている。
作品
作品には、岩の割れ目に永続的に立つ裸婦が描かれる。彼女の手は水壺を支えており、そこから水が流れ落ちている。
彼女は水源や泉を象徴しており、西洋古典学 ではムーサ に仕えるとされ、詩的な着想の源ともなった[ 6] 。
壺を持った女性像のイメージはジャン・グージョン によるイノサンの泉 (英語版 ) のレリーフ 彫刻、あるいはシュリー館 (英語版 ) のレリーフ彫刻に由来すると考えられている。裸婦像のポーズはアングルの1848年の絵画『海から上がるヴィーナス 』[ 7] や、『クニドスのアプロディテ 』(別名『恥じらいのヴィーナス』)としばしば比較される[ 5] 。
アングルの2人の弟子、画家のポール・バルズ (英語版 ) とアレクサンドル・デゴッフ (英語版 ) が、背景と水壺を描くのを手伝った[ 1] 。
解釈
彼女は2つの花の間に立っており、花は「それらを引き抜こうとする男性への脆弱性」を示している[ 6] 。周りを縁取るヘデラ は、騒乱、再生、恍惚の神ディオニューソス を象徴する植物である[ 6] 。彼女の注ぐ水が川となって境界線を生みだし、彼女と鑑賞者を切り離している点は、象徴として重要である[ 6] 。
美術史家 フランセス・フォウルとリチャード・トムスンは、『泉』には「女性と自然の記号的統一」が見られると示唆している。作品中で顕花植物と水は、アングルが女性の「第二の特質」で満たした背景として用いられている[ 8] 。
反応
1856年に完成した『泉』は、その年にアングルのアトリエ で催された個展で初めて展示されると[ 9] 、作品は熱狂的に受け入れられ[ 4] 、特に高踏派 の詩人や文学者たちからの称賛を得た。詩人テオフィル・ゴーティエ は『七宝と螺鈿』に収録された詩「泉」で本作品を称賛し、テオドール・ド・バンヴィル もまた1861年の詩『銀のナイアド』において泉の女性像を水のニンフ ナイアド として歌った。
ホールデン・マクフォールは著書『絵画の歴史:フランスの天才』で、『泉』を「アングルの特によく知られた裸婦像」と評している[ 10] 。
ケネス・クラーク は著書『女性の美』で、『泉』が「フランス絵画で最も美しい姿」と述べられてきたことに注目した[ 11] 。
ヴァルター・フリードランダーは『デヴィッドとドラクロワ』で『泉』について「アングルの絵画で最も有名なもの」と評した[ 12] 。
絵のモデルは、アングルの住む集合住宅の管理人の若い娘が務めた[ 10] 。
アイルランドの小説家ジョージ・ムーア は1886年の著書『一青年の告白 (英語版 ) 』で、芸術作品作成の道徳性について、「16歳そこそこのメイドの貞操がアングルの『泉』の代償だとして、それがなんだというのか? 洗練された無垢な夢である『泉』の本質にかんがみれば、モデルが酒と病気のために病院で死んだことは、たいしたことではない」と皮肉った[ 13] 。
来歴
『泉』は翌1857年、フランスの政治家タンギー・デュシャテル(fr )によって購入され、デュシャテルは本作品を手に入れるために25,000フラン を支払った。1878年に政府が絵を取得し、作品をルーヴル美術館 に納めた。1986年にはオルセー美術館 に移された[ 1] 。作品はしばしば展示されて、広く公開された[ 1] [ 14] 。
脚注
^ a b c d “La Source ”. オルセー美術館 . 2 March 2012 閲覧。
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参照項目
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泉 (絵画) に関連するカテゴリがあります。