港湾での輸入貨物に対する燻蒸作業を、安全且つ効率的にできるようにシステム化された施設。コンテナ を載せた全長が20m 近くもある大型トレーラーがそのまま入場して、一気に処置できる。神戸港 六甲アイランド 内にある動植物防疫 燻蒸施設の入り口側。
燻蒸 (くんじょう、英 : fumigation )とは、主に害虫 駆除やカビ 防止、殺菌 の目的で、気体 (ガス)の薬剤を対象に浸透させる方法。エアロゾル またはミスト状にした液体 や固体 粒子の薬剤を使う方法は、対象の表面には付着するものの内部への浸透が弱く、厳密には燻蒸ではない[ 1] 。
対象
ポストハーベスト農薬 として農産物 に対して行われたり、農地 の土壌 に対して線形動物 (線虫)や細菌 、ウイルス などの駆除・不活性化[ 2] に用いられたりするほか、シロアリ など木造建築物に被害を及ぼす虫に対し、木材や建物全体に燻蒸を行うことがある[ 3] 。
また、博物館 や美術館 などにおいても、収蔵品に燻蒸を行うことで文化財害虫 による汚損やカビの発生を防いでいる[ 4] 。博物館は燻蒸だけに頼るのではなく、収蔵庫や展示スペースの気密性確保や湿度 ・気温 制御と組み合わせる総合的有害生物管理(IPM)が行なわれている[ 4] 。
主な燻蒸剤
種類により、害虫には有効だが防カビ効果はないといった違いがある[ 4] 。日本の博物館向けには、公益財団法人の文化財虫菌害研究所が、収蔵品に悪影響を及ぼさない薬剤3種類を認定しており、日本液炭 などが製造している[ 4] 。同社製品の「エキュヒームS」は、原料の価格上昇や酸化エチレン の排出削減を環境省 から求められたため2025年3月の販売中止を決め、文化財保護へ懸念が生じしている[ 4] 。
かつては臭化メチル も使用されていたが、オゾン層 を破壊するおそれがあるとして、モントリオール議定書 により製造と使用が制限されている[ 5] [ 6] 。
方法
大半の燻蒸剤は人体に有害であり、燻蒸は密閉した無人の状態で行われ、燻蒸終了後は人が入る前に十分に換気される。
住宅の燻蒸では、燻蒸剤の漏洩および害虫が周囲の建物へ逃げ出すことを防ぐため、建物全体を丈夫なテントで覆い、テント内部を燻蒸剤で充満させる。フッ化スルフリル など無臭の燻蒸剤を使用する場合には、事前に刺激性のあるクロロピクリン をテント内に放流して、人が退去したか確認する場合がある。燻蒸開始から再度居住者が立ち入ることができるまでには、最長1週間を要する。
博物館では、特定の燻蒸剤専用の部屋があったり、施工できる業者が限られていたりする[ 4] 。
脚注
関連項目