|
この項目では、難治性疾患克服研究事業のうち公費助成の対象となる病気について説明しています。保険の給付対象となる病気については「特定疾病」をご覧ください。 |
| この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。 |
特定疾患(とくていしっかん)とは、日本において 厚生労働省が実施する難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野の対象に指定された疾患(2012年現在、130疾患)である。都道府県が実施する特定疾患治療研究事業の対象疾患(2009年10月1日現在、56疾患)は、国の指定する疾患については特定疾患から選ばれており、当事業の対象疾患をさして特定疾患ということもある。
現在は、2014年(平成26年)に、難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)が成立し、特定疾患から指定難病に移行している。2019年現在、333疾患、約150万人[要出典]。
難病法における「難病」とは、「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものをいう。」と定義されている。
概説
施策上の難病の分類
|
患者数
|
1000人以下/不明 |
1000〜5万人 |
5万〜人口の0.1% |
人口の0.1%〜
|
診断基準あり |
約70疾患 |
約80疾患 |
10疾患以下 |
10疾患以下
|
診断基準に 準ずるものあり |
約100疾患 |
約60疾患 |
10疾患以下 |
10疾患以下
|
診断基準なし |
約40疾患
|
日本では、いわゆる難病の中でも積極的に研究を推進する必要のある疾患について、調査研究、重点的研究、横断的研究からなる難治性疾患克服研究事業を行っている。対象となる疾患は、厚生労働省健康局長の私的諮問機関である特定疾患対策懇談会において検討の上で決定される。
このうち、特に治療が極めて困難であり、かつ、医療費も高額である疾患について、医療の確立、普及を図るとともに、患者の医療費負担軽減を図る目的で、都道府県を実施主体として特定疾患治療研究事業が行われている。対象は2009年10月1日現在、56疾患。
特定疾患治療研究事業の対象疾患については、医療費の患者自己負担分の一部または全部について国と都道府県による公的な助成(公費負担医療)を受けることができる。
難病の定義
元々難病とは、一般的に「治りにくい病気」や「不治の病」を指す一般用語である。
世界では、希少疾患(rare disease)や orphan disease(市場から忘れ去られた希少疾患ということで、孤児になぞらえて用いられる。日本語では希少疾患、難病などの語で代用することが多い)といった用語が使われており、直訳である intractable disease は、日本での難病を訳した形でのみ用いられている。
施策上の難病の定義は、1972年の難病対策要綱 (PDF) によると、
- 原因不明、治療方法未確立であり、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない疾病
- 経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家庭の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病
とされている。さらに「ねたきり老人、がんなど、すでに別個の対策の体系が存するものについては、この対策から、除外する。」と規定している。
さらに、2014年に成立した難病法により「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものをいう。」と定義された。
行政や医療の現場では「特定の疾患」を指して「特定疾患=難病」と俗称することもある。診療報酬明細書で「特定疾患」の表記が見られるが、本項で主に扱う「難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野の対象に指定された疾患をさす」とは異なる。以下に、診療報酬上の定義を挙げる。
特定疾患療養管理料等に規定する疾患
特定疾患療養管理料は、厚生労働省が定めた疾患を主病とする患者に対し、治療計画に基づき、療養上必要な指導(服薬・運動・栄養等)を行った場合に月2回まで診療報酬として算定できる。名称に「特定疾患」と入るためまぎらわしいが、対象疾患は厚生労働省告示第六十三号「特掲診療料の施設基準等」(平成20年3月5日) (PDF) の別表第一「特定疾患療養管理料並びに処方料及び処方せん料に規定する疾患」(p.46-47)で確認でき、糖尿病、高血圧性疾患、喘息、胃潰瘍、慢性肝疾患など生活習慣病も多く含まれる。特定疾患処方管理加算も対象疾患は同一で、処方料又は処方箋料のいずれか一方の加算として月1回に限り算定できる。
特定疾患療養管理料並びに処方料及び処方せん料に規定する疾患
- 結核
- 悪性新生物
- 甲状腺障害
- 処置後甲状腺機能低下症
- 糖尿病
- スフィンゴリピド代謝障害及びその他の脂質蓄積障害
- ムコ脂質症
- リポ蛋白代謝障害及びその他の脂(質)血症
- リポジストロフィー
- ローノア・ベンソード腺脂肪腫症
- 高血圧性疾患
|
- 虚血性心疾患
- 不整脈
- 心不全
- 脳血管疾患
- 一過性脳虚血発作及び関連症候群
- 単純性慢性気管支炎及び粘液膿性慢性気管支炎
- 詳細不明の慢性気管支炎
- その他の慢性閉塞性肺疾患
- 肺気腫
- 喘息
- 喘息発作重積状態
|
- 気管支拡張症
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
- 胃炎及び十二指腸炎
- 肝疾患(経過が慢性なものに限る)
- 慢性ウイルス肝炎
- アルコール性慢性膵炎
- その他の慢性膵炎
- 思春期早発症
- 性染色体異常
|
特定疾患治療管理料に規定する疾患
特定疾患治療管理料は、対象疾患の患者や家族に対して療養上必要な指導を行った場合に診療報酬に算定される管理料・指導料。対象疾患には、肝炎ウイルスや後天性免疫不全症候群などのウイルス疾患、悪性腫瘍、てんかん、喘息、慢性疼痛、糖尿病合併症などがある。
特定疾患治療管理料の種類
- ウイルス疾患指導料
- 特定薬剤治療管理料
- 悪性腫瘍特異物質治療管理料
- 小児特定疾患カウンセリング料
- 小児科療養指導料
- てんかん指導料
- 難病外来指導管理料
- 皮膚科特定疾患指導管理料
- 外来栄養食事指導料
- 入院栄養食事指導料
|
- 集団栄養食事指導料
- 心臓ペースメーカー指導管理料
- 在宅療養指導料
- 高度難聴指導管理料
- 慢性維持透析患者外来医学管理料
- 喘息治療管理料
- 慢性疼痛疾患管理料
- 小児悪性腫瘍患者指導管理料
- 削除
- 糖尿病合併症管理料
|
- 耳鼻咽喉科特定疾患指導管理料
- がん性疼痛緩和指導管理料
- がん患者カウンセリング料
- 外来緩和ケア管理料
- 移植後患者指導管理料
- 植込型輸液ポンプ持続注入療法指導管理料
- 糖尿病透析予防指導管理料
|
難治性疾患克服研究事業の概観
施策上、症例が少なく原因不明・治療方法の未確立で生活面に長期に支障をきたす疾患に対して次のような対策を行っている。
- 調査研究の推進。難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野対象疾患。130疾患。
- 医療施設等の整備
- 地域の医療・保健福祉の充実・連携
- QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上を目指した福祉政策の充実(難病患者等居宅生活支援事業・市町村自治事務。)
- 医療費の自己負担の軽減(特定疾患治療研究事業対象56疾患)
指定疾患の一覧
難治性疾患克服研究事業(臨床調査研究分野対象疾患)
130疾患(2009年4月1日現在)。厚生労働省による原因究明・治療法などの研究が行われる。患者の自己負担分を公費で負担するのは、特定疾患治療研究事業対象疾患のみである。
(作成中)
特定疾患治療研究事業対象疾患
56疾患(2009年10月1日現在)。患者は所轄の保健所に申請することにより、医療費の自己負担分の一部または全額の助成を、公費で受けることができた。
健康保険法で定める3割負担部分において、公費助成がなされ、それを除いた部分が患者自己負担となる。
- 疾患番号は、厚生労働省の臨床調査研究に、おおむね指定された時期の順番どおり。
平成21年度補正予算において、特定疾患治療研究事業に緊要性の高い疾患を追加するものとされたことをうけ、平成21年10月より、本事業の対象疾患に以下の11疾患が追加された[5]。
指定難病(難病の患者に対する医療等に関する法律)
難病の定義である
- 発病の機構が明らかでなく
- 治療方法が確立していない
- 希少な疾患であって
- 長期の療養を必要とするもの
に加えて、
- 患者数が本邦において一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないこと
- 客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が成立していること
が挙げられる。306疾病(2015年7月1日現在)[6]。
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク