生命記号論(せいめいきごうろん、英:Biosemiotics)とは、ひとつの生体系内や複数の生体系間に見出される、多様なコミュニケーションの形式と、その真意について探究する、学際的な研究分野である。この分野の主な研究内容としては、遺伝子の塩基配列、細胞間の情報伝達、動物の誇示行動、言語や思想などの人間界における記号、等々の表現様式、意味、趣意、そして、その暗号および記号が形成される過程における生物学的意義が挙げられる。
「意図」・「目的」・「信号」・「暗号」・「記号」など、これらの用語は、あまりに隠喩的であるということと、いつの日か、そのような用語は、物理化学的な数式や反応式へと還元される、という考えとは、今日に至るまで、暗黙のうちに信じられてきた。しかし、このような考え(全ての生命現象は数式や反応式へと還元される、という考え)は、理論上であっても、立証し難いことが判ってきつつある。そのような時代背景にあって、生命記号論の学際的研究の場においては、生命科学の諸分野間の交流 ―生命科学と人文科学との間についても同様に― を再燃させようとしており、この分野の活性化を図っている。
研究者
参照
学会・団体
図書
- 今西錦司著『生物の世界』(講談社文庫、1972年)
- ハイニ・ヘディガー著『文明に囚われた動物たち 動物園のエソロジー』(今泉吉晴、今泉みね子訳、思索社、1983年)
- トマス・シービオク著『自然と文化の記号論』(池上嘉彦編訳、勁草書房、1985年)
- トマス・シービオク著『動物の記号論』(池上嘉彦編訳、勁草書房、1989年)
- 多田富雄著『免疫の意味論』(青土社、1993年)
- 多田富雄著『生命の意味論』(新潮社、1997年)
- ジョン・ディーリー『記号学の基礎理論』(大熊昭信訳、法政大学出版局・ウニベルシタス叢書、1998年)
- テレンス・ディーコン『ヒトはいかにして人となったか ―言語と脳の共進化』(金子隆芳訳、新曜社、1999年)
- ジェスパー・ホフマイヤー著『生命記号論 ―宇宙の意味と表象―』(松野幸一郎、高原美規訳、青土社、1999年)
- ヤーコプ・v・ユクスキュル、ゲオルク・クリサート著『生物から見た世界』(日高敏隆、羽田節子訳、岩波文庫、2005年)
- 川出由己著『生物記号論 主体性の生物学』(京都大学学術出版会、2006年)
- 日高敏隆著『動物と人間の世界認識 ―イリュージョンなしに世界は見えない』(ちくま学芸文庫、2007年)
- アントニオ・リマ=デ=ファリア著『生物への周期律 ―自然界のリズムと進化』(松野幸一郎監修、土明文訳、工作舎、2010年)
- ヤーコプ・v・ユクスキュル著『動物の環境と内的世界』(前野佳彦訳、みすず書房、2012年)
- 矢倉英隆著『免疫から哲学としての科学へ』(みすず書房、2023年)
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