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盆地

奈良盆地(奈良県)
甲府盆地(山梨県)
台湾台北盆地(中華民国)
アマゾン川流域に広がるアマゾン盆地(南アメリカ)

盆地(ぼんち、英語: basin)とは、周囲を山地丘陵に囲まれた、周辺よりも低く平らな地形である[1]

概要

盆地の規模は大小様々だが、盆地の大部分は地盤の相対的沈下によって生じる[2]。周囲の土地が隆起し、静止していた部分が結果的に盆地となる場合もある。

盆地はその成因によって侵食盆地構造盆地に分類され、構造盆地はさらに、撓曲盆地断層盆地に分類される[3]火山活動によりできるカルデラも盆地の一種である[3]

侵食盆地
地層岩石の軟らかい所が選択的に侵食されて、周囲よりも低くなったもの[2]。盆状の海湾が隆起し、湾内だった部分の堆積層が流出するケースや、平坦面に新しい堆積物が層を作った後、その一部が盆地状に曲降し、侵食によって盆地床の中の堆積物が残るケースなど、その生成過程は様々である[2]。侵食盆地の底が平坦地になることは稀で、丘陵地になることのほうが多い[2]

特に石灰岩地域に発達するものは溶食盆地(ポリエ)とよばれ、カルスト地形の一種である。

構造盆地
地殻変動によって形成される盆地の総称。盆地内は周囲の山地から供給される岩屑によって平坦となる傾向がある[2]
撓曲(とうきょく)盆地
撓曲(断層上の地層がたわむ現象)の作用によってできたもの。世界的に珍しい種類の盆地。
断層盆地
断層を伴う地盤作用によってできたもの。両側が断層崖になっているものを地溝盆地、片側のみのものを断層角盆地という[2]
曲降(きょくこう)盆地
中央部の地盤が湾曲し、下降することによってできたもの。自噴井ができやすい。平坦地が曲降した場合、円形の盆地になりやすいが、山地が曲降した場合は不規則な谷を形成しやすく、底部にかつての山頂が島のように残る場合も珍しくない[2]
カルデラ盆地
火山活動外輪山により生成されたもの。

また、盆地または盆地内の状態によって、次の4つに分類される[2]

湖沼盆地
湖沼を伴う盆地。岩屑の供給が地盤の変化に追いつかなかった場合に湖沼が生じる[2]
海湾(内海)盆地
盆地の形成運動が海岸地域で起きて生じた地形。
埋積盆地
岩屑によって埋め立てられ、平坦になった状態の盆地。
開析盆地
埋積盆地が河川の下方侵食によって開析され、段丘状に変化した状態。

特徴

気候

山に囲まれた盆地の気候的な特徴はいくつか挙げられる。まず、沿岸部よりも気温日較差年較差が大きいことが挙げられる[4]。これは、陸と海洋の比熱の差の影響、さらに山谷風による熱の輸送[4]の効果もある。最低気温が低い要因には冷気湖が挙げられる[4]

盆地における山谷風は、昼は暖められた空気が盆地の底から山へ、夜は冷やされた空気が山から盆地の底へと移動し、風向が変化する循環[5]。夜間はこれにより冷気が盆地の底に溜まり冷気湖が形成される[4]。冷え込みのため、夜間から早朝、かつ日本の場合は特に秋から春、が発生しやすい[4]

盆地を囲む山が風を遮り、風速は弱まる傾向がある[6]。風の減速は、日中はより気温を上げやすく、夜間は逆に気温を下げやすくする効果がある[6]。また風の弱い日中は山谷風の循環の効果[注釈 1]で、盆地内は周辺の山地より雲が少なく日照時間が長い傾向もみられる[5][4]。気温の上がり方の差によって、平野と盆地の間にも山谷風や海陸風に類似した循環構造が認められることもある[6]

山により海洋と隔てられているために空気が比較的乾燥しており、降水量が少ない傾向もある。フェーン現象も起きやすい。

また、盆地内の空気が滞留しやすいため大気汚染物質も滞留して屋外空気質の悪化が長引くことがあり、実際にメキシコシティなどで問題となっている。

人文地理学

内陸都市の立地要因には、盆地が防御の面で優れていることや、平坦な土地であることも挙げられる。

日本における盆地

日本の辞書や教科書に「盆地」が現れたのは大正時代に入ってのことであり、その定義は国内の盆地内にある平野や都市に視座を置いた人文地理的なものとなっていた[7]。戦後に文部省地理調査所によって定められた上記の定義も、それを継承したものとなっている。山に囲まれた低い平坦地という日本の風土を想定して定められた「盆地」は、地形学の学術用語であるBasinValleyの訳語に当てられたが、Basinは山地に属する盆状地質構造、海盆、流域などを指す、外縁や地質などを含めた窪んだ地形全体を捉えた用語であり、盆地床の地形について規定していない[7][8]。このため、周囲に山がないパリ盆地や、海に面した流域であるアマゾン盆地など、日本の定義では盆地とは言えない場所を「盆地」と呼んでいる例は多く、国際的な自然地域名称と乖離する場合もある[8]

一説に丹波国但馬国は盆地を意味する「谷」に由来するといわれている。

日本の主な盆地

北海道地方
東北地方
関東地方
中部地方
近畿地方
中国・四国地方
九州地方

日本国外の主な盆地

北アメリカ
南アメリカ
オセアニア

地球外の主な盆地

脚注

注釈

  1. ^ 日中の山谷風循環により、盆地内には弱い下降流、周辺の山地には上昇流ができる[5][4]

出典

  1. ^ 浮田ほか 2004, p. 256.
  2. ^ a b c d e f g h i 岡山 2014, pp. 229–243.
  3. ^ a b 西川有司『地形の科学』 <おもしろサイエンス> 日刊工業新聞社 2019年 ISBN 978-4-526-07965-8 p.85.
  4. ^ a b c d e f g 日本気候百科 2018, p. 468(著者:木村富士男、日下博幸、藤部文昭)
  5. ^ a b c 木村 2005, pp. 222–227.
  6. ^ a b c 近藤純正「大気境界層の気象(II)気温と地温の変化」(pdf)『天気』第46巻第10号、日本気象学会、1999年10月、677頁。 
  7. ^ a b 米地文夫「自然地域名「北上盆地」と「北上平野」 : 地理教育における自然地理用語と自然地域名の問題(1)」『岩手大学教育学部研究年報』51(1) 岩手大学教育学部 doi:10.15113/00011679 2008-03-07 pp.105-118 .
  8. ^ a b 米地文夫「広々とした渓谷と山々に囲まれない盆地:地形景観用語における日本と世界のずれ」『季刊地理学』53(4) 東北地理学会 doi:10.5190/tga.53.257 2001 pp.257-261.

参考文献

  • 浮田典良 編『最新地理学用語辞典』(改訂版)原書房、2004年。ISBN 4-562-09054-5 
  • 岡山俊雄『自然地理学(地形)』(第11刷)法政大学 通信教育部、2014年。 
  • 新田尚、住明正、伊藤朋之、野瀬純一 編『気象ハンドブック』(3版)朝倉書店、2005年9月。ISBN 978-4-254-16116-8 
    • 木村富士男『§16.2 山谷風循環』。 
  • 日下博幸、藤部文昭ほか 編『日本気候百科』丸善出版、2018年1月。ISBN 978-4-621-30243-9 

関連項目

外部リンク

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