笑府『笑府』(しょうふ)は、中国の明朝末期に、馮夢竜(ふう むりゅう[むりょう])[注 1]が編纂した笑話集である。 馮夢竜は、当時の蘇州府(現在の江蘇省東南部)の有名な文士であり、蘇州府長洲県に生まれ、1630年(崇禎3年)に県の貢生となり、建寧府寿寧県の知県(県知事に相当)になった。明朝滅亡の際に殉死したと言われている。 概要「笑府」とは「笑い話の倉庫」くらいの意味で、あらゆるジャンル・貴賎不問の笑い話を13巻に纏めた物であり、当時の庶民の生活や風俗、習慣を知る上で重要な資料である。 通俗文学の書籍ではよくあることだが、『笑府』も中国本土では清の時代の初めに散佚し、一冊も残らなかった。しかし日本で各種の和刻本が刊行されたおかげで、完全な散佚を免れた。 20世紀に入り、中国本土で過去の通俗文学に対する再評価の機運が高まると、和刻本の『笑府』が日本から中国に逆輸出された。例えば周作人(魯迅の弟)も『苦茶庵笑話選』(1933年)のなかで、日本の藤井孫兵衛刻本『笑府』によって173話を中国に紹介した。 中国古典笑話をまとめて紹介した古典的労作である王利器『歴代笑話集』の口絵写真でも、『笑府』だけは、返り点を施した日本の藤井本の写真を使っている。清の乾隆代に出版された『笑林廣記』には『笑府』の笑話が改竄された形で再録されたが、その質は周作人が『苦茶庵笑話選』の序文で「下等の書」と評するものであった[1]。 笑府は、各部(各巻)の最初に馮夢竜(筆名として「墨憨子」(ぼくかんし・ぼっかんし)を使用)が「墨憨子曰く……」と各部内容の簡単な説明をしている。 内容
特徴大きな特徴は、ただ過去・現在の笑い話を集めただけでなく、編纂者が注釈や寸評、当時の時勢に応じて実際に使用した例が記載されている点である。 当時の名士・高官の逸話も挿入されており、倭寇や豊臣秀吉の記述もある。 『金瓶梅』にも笑府からの引用がある。 十三巻中に登場する名士・高官・偉人主な人物を紹介する。
訳本日本においては江戸時代に伝わり、1768年(明和5年)から明和6年の間に相次いで訳本が3種出版されている。その内の1冊『刪笑府』(明和6年序)は風来山人こと平賀源内が抄訳した訳本であるとされる[2]。笑府訳本とされているものは以下の通り。
なお、笑府の中から落語や小咄に多くが使われているが、原本経由のものは少なく多くは訳本経由であったことが指摘されている[5]。それらの中には「まんじゅうこわい」(原話は巻12・日用部「饅頭」)のように、原作をほとんど流用して作られた落語もある。 脚注注釈出典
参考文献
関連項目 |