統合型リゾート統合型リゾート(とうごうがたリゾート、英: Integrated Resort、略称:IR)とは、コンベンション・センター、ホテル、ショッピングセンター、レストラン、カジノ、劇場、映画館、遊園地、スポーツ施設、温浴施設などの様々な施設(商業施設)を一体化させた、大規模リゾートである[1][2]。 概要統合リゾートは、様々な施設をまとめたリゾート拠点である。おもにMICEと呼ばれる施設を指す。MICEとは、「Meeting(企業などの会議)」「Incentive Travel(報酬・研修旅行)」「Convention(国際機関や国内団体、学会などが行う会議)」「Exhibition/Event(展示会、見本市やイベント)」の略。MICEを目的とした来客は、団体での来訪が多く、個人客に比べると買い物などの消費額が多いので、世界中の国々や地域が誘致に力を入れている[3]。 現在、日本には、大規模な国際会議や国際的な展示会を開く為に必要な施設が1つも無い。その為、世界で通用する規模の国際展示場を持つ為に、法整備が進められている[4]。 2016年(平成28年)12月15日の衆議院本会議で「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(IR推進法)が成立した[5]。 メリットデメリットカジノ「IR=カジノ」というイメージがある。しかし日本では、カジノが統合型リゾート(IR)全体の床面積に占める割合は3%が上限と定められている[14]。カジノは統合型リゾート(IR)を構成する一施設に過ぎない[15]。 ただしカジノは、IR全体の売上における大きな柱となっている。2015〜17年での集計によると、ラスベガスではカジノによる売上はカジノ以外による売上を下回っているが、シンガポールでは7割、マカオでは実に9割の売上がカジノ(ゲーミング)によるものである[16]。 対策法2019年10月18日の閣議で、統合型リゾートの事業者を規制・監督する「カジノ管理委員会」が2020年1月7日に設置される政令を決定した[17]。カジノの法制度化への道が開かれることになった。その一方、気軽に何処にもあることでギャンブル依存症を産み出してきたパチンコ店の数は、1995年をピークに減少を続けている。2016年のIR法成立によって、依存症対策が厳格化し、射幸性の高いものが禁止された。これによって顧客の減少に拍車が掛かり、パチンコ店は2017年時点で10,000店を割る直前となっている[18]。 日本政府は「ギャンブル等依存症対策基本法」を定め、各自治体に「週3回・月10回までの入場制限」「クレジットカードによるチップ購入を禁止」など依存できない環境づくりの対策を行うことを義務付けている[19]。 特定複合観光施設区域整備推進会議において配布された資料では、シンガポールにおける犯罪認知率のデータが示されており、IR設置前とIR設置後で犯罪認知率に⼤きな変化は⾒られないと報告されている[20]。また東京都の報告書では、シンガポールの例に加えて、マカオ、韓国における犯罪件数のデータも示されており、この2例でもIR設置前とIR設置後で犯罪件数に大幅な変動は見られず、ほぼ横ばいであると報告されている[21]。 ラスベガス・モデルかつてのラスベガスは、反社会組織がカジノに関与していたため、犯罪の増加とそれに伴う顧客離れが発生したが、その後、排除(後述)に成功している[22]。2012年現在のネバダ州(ラスベガスのある州)におけるギャンブル関連犯罪による逮捕件数は、52件であり、全体(142,459件)に占める割合にすると0.03%である[21]。 ラスベガスでは、「ラスベガス・モデル」と呼ばれる参入規制が実施されており、上場企業がカジノに参入しようとするときは有価証券報告書、税務調査内容、取引先の一覧などの情報を当局に提出しなければならない[22]。「ラスベガス・モデル」では、ある一定以上の議決権を有する株主や企業の役員・管理職にも、銀行・クレジットカードの明細、海外の預金口座、確定申告書、無犯罪証明書など種々の文書の提出が求められる[22]。一方、これらの制約を受けない犯罪組織メンバーが関与しうる余地は依然として残る[13]。 地元還元アメリカでカジノ・ルームの内装などに長年携わってきた建築デザイナーの村尾武洋は、日本にカジノは必要ないと主張する。アメリカの先住民居留地にあるインディアン・カジノでは、インディアン賭博規制法(IGRA)で、カジノ収入の70%は地元の部族に還元することが規定されているという点に触れて、村尾は「収益の70%が地元に落ちて、民間事業者側の収益は25%から30%くらいです。日本政府の方針だと収益の7割が民間事業者だと聞きますから逆です。びっくりしました。」と述べた[23]。 韓国への影響ハナ金融投資研究員は日本でカジノ解禁された場合には真っ先に韓国に来る中国人観光客が減少し、韓国の外国人カジノが打撃を受ける可能性が高いとし、法案が可決されれば韓国内の外国人向けカジノの売り上げが減少するかもしれないと懸念を示した。投資家も同様に反応して韓国のカジノ関連株の株価が下落した[24]。 愚行権としての権利インターネット番組の中で井川意高はジョン・スチュアート・ミルの著書『自由論』の中の愚行権を引き合いに出し、個人が賭博に走ること(すなわち愚かな行動に走ること)も幸福追求権であると語った[25]。橋下徹も賭博罪をおかしいとした上で、本人保護のための規制も必要であると語った [26]。 国内の自治体大阪府・大阪市(大阪IR)2020年6月4日、大阪市長の松井一郎が記者会見で、2026年度末としていた夢洲でのIR開業時期が1、2年延期されるとの見通しを示した。新型コロナウイルスの影響で参入を目指す事業者との協議が進んでいないことを理由に挙げ、「投資余力が落ちているということも勘案しながら開業時期を見定めていきたい」と述べた[27]。 2022年3月24日、大阪府議会はIR整備計画の議案を大阪維新の会や公明党、自民党などの賛成多数で可決した。IR事業者は米国のMGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスが中心の企業連合。初期投資額は1兆800億円。大阪市此花区の人工島・夢洲での2029年秋・冬ごろの開業を目指す[28]。同年3月29日、大阪市議会はIR関連議案を大阪維新の会と公明党の賛成多数で可決した。自民党は、国政ではIRを推進する立場だが、大阪市議団は反対した[29]。 しかしその後、実質的にはIR誘致に反対する市民団体「カジノの是非は府民が決める 住民投票を求める会」が、府内で住民投票の実施を求め、署名活動を開始。署名活動は2022年3月25日から2ヶ月間行われ、合計21万人分(有効数19万2773人)の署名が集まり、法定数を超えたため府議会で審議されることとなった[30]。これを受け、2022年7月29日、大阪府議会において、IRの誘致を問う住民投票条例案が審議され、大阪維新の会、公明党、自民党などの反対多数により否決された[31]。 2023年4月14日に政府は大阪府・市が申請した夢洲でのIR整備計画を認定した[32]。これにより、大阪IR計画は当初予定からは遅延するものの、推進されることが決定した。 2023年12月4日、大阪府・市は、建設予定地である夢洲で4日から液状化対策工事を始めたと発表した[33]。 横浜市2020年4月、横浜市長・林文子はカジノを含む統合型リゾート施設について、事業者に求める条件などをまとめた実施方針の公表時期を当初の2020年6月から同年8月に2か月延期すると明らかにした。林は「新型コロナウイルスの感染が拡大している状況を総合的に勘案し、最重要のことに専心すべきだ」と述べ、感染症対策を最優先する考えを示した[34]。 2021年8月、横浜市長選挙で、IR誘致反対を掲げる山中竹春が当選し、横浜市はIR誘致を撤回し、IR計画は頓挫した。 長崎県2022年4月、長崎県議会でIR計画が可決された。当初投資額は4383億円。国に申請し、国が整備計画認定(2023年度後半)、開業は2027年秋ごろを予定していた。 2023年12月27日、国土交通省は、長崎県が誘致をめざしているカジノをふくむ統合型リゾートの整備計画について、認定しないと発表した[35]。 和歌山県2022年4月、和歌山県議会でIR計画が否決された[36](当初投資額は4700億円)。 日本での動き※政党名は当時のもの
IRに関する発言
脚注
関連項目
外部リンク |