聖女の魔力は万能です
『聖女の魔力は万能です』(せいじょのまりょくはばんのうです)は、橘由華によるライトノベル。2016年4月29日から小説投稿サイト「小説家になろう」にて「タチバナ」名義で連載されているオンライン小説を元に、2017年2月10日からカドカワBOOKS(KADOKAWA)より単行本として書籍化刊行されている[3]。書籍版のイラストは珠梨やすゆきが担当。 メディアミックスとして、2017年7月31日から藤小豆によるコミカライズがウェブコミック配信サイト『ComicWalker(現・カドコミ)』内のフロースコミックにて連載中[4]。2018年にはシチュエーションオーディオドラマ化されており、アルベルト・ホーク役を羽多野渉が担当していて、1と2のシチュエーションは無料、3つ目は原作第3巻の購入特典URLとして付属した。さらに2020年にはディオメディア制作によるテレビアニメ化が発表された[5]。2020年10月5日から2023年9月18日まで亜尾あぐによるスピンオフ漫画である『聖女の魔力は万能です 〜もう一人の聖女〜』が『ComicWalker』内のフロースコミックにて連載された[6][注釈 1]。2021年12月時点で電子版を含めたシリーズ累計部数は330万部を突破している[7]。 毎月数度の連載を行っていたが、2021年6月27日から2021年12月25日掲載分迄一時連載が中断された。 なお、タイトルロゴに書かれている英文は、原作小説およびコミック版が「The power of the saint is all around.」で、アニメ版は「THE SAINT'S MAGIC POWER IS OMNIPOTENT」と異なっている。 あらすじHP・MP・レベル・魔法を含むスキルなどが、数値化されて確認できる異世界。スランタニア王国では数世代に一度、国が瘴気に覆われ魔物が大量発生する時代がやって来る。これまではそのたびに、魔を祓う力を持つ「聖女」が現れ、国を救ってきた。過去一度だけ聖女が現れなかった時は、儀式により聖女を召喚した。 今回またも聖女が現れず、王と重臣たちは、やむなく伝説の儀式「聖女召喚の儀」を行う。召喚されたのが小鳥遊 聖(セイ)と御園 愛良(アイラ)の二人の日本人であった。しかし王国の第一王子カイル・スランタニアはアイラしか目に入らず、彼女だけを聖女として扱った[注釈 2]。無視されたセイは怒り、王宮を出ようとするが行く当てもなく、元の世界への戻る方法も不明で、その後紆余曲折を経て薬用植物研究所に研究員として働き始める。 召喚から3か月後、王国の第三騎士団が魔物討伐で甚大な被害を受けるが、セイの作ったポーションで団長アルベルト・ホークらは回復する。以降、ホークたちとの交流を続け、図書館で知り合ったエリザベス・アシュレイの頼みを聞いたり、宮廷魔道師団で魔法付与を行ったり、ホーク団長に魔法付与されたアクセサリーを渡すため、第三騎士団を訪ねるなどして日々を過ごしていた。 召喚から7か月後、城の書庫にあった本で回復魔法を学んだセイは、再度の魔物討伐で負傷した騎士たちを見舞う。その際、回復不能の重傷を負った騎士を放っておけなかったセイは、強力な回復魔法で身体の欠損すら再生させてしまい、彼らから「聖女」として崇められることになる。 その直後、聖女召喚の儀の反動による昏睡から目覚めた宮廷魔道師団長ユーリ・ドレヴェスから鑑定を受けるが、国一番の魔道師である彼よりセイのほうがレベルが上で、鑑定不能だった。報告を受けた国王ジークフリート・スランタニアは、公の謁見の場でセイに謝罪し、恩賞として何を望むかと問う。特に欲しい物の無いセイは、禁書庫の閲覧と正規の魔法指導を願い出、ユーリから直接魔法の指導を受けることになる。 召喚から9か月後、セイは、ホーク団長率いる魔物討伐に回復要員として参加する。ところが団長が窮地に陥った時、セイの中から金色の魔力があふれ出す。それは周囲の魔物と、魔物が湧き出す黒い沼を呑み込むと、一瞬ですべてを消し去った。聖女のみが使えるという伝説の広域浄化魔法、「聖女の術」にほかならなかった。 この功績により、セイは王宮すべてから「聖女」だと認められる。しかし、アイラを聖女にしようと必死だったカイル王子はそれを信じず、「セイは聖女ではない」と人目のある場所で発言してしまい、父王から謹慎を命じられた。 召喚から1年後、セイはホーク団長および第三騎士団と共に、薬師の聖地と呼ばれるクラウスナー領へ魔物討伐の遠征に向かう。この遠征で「ホーク団長のことを思い浮かべる」のが聖女の術の発動条件[注釈 3]であると気づき、術を自在に発動できるようになる。 制作背景本作品は橘由華が「タチバナ」名義[8]で、2016年4月29日より小説家になろうに連載されている[9]。掲載開始10日後の5月9日には小説家になろうの日間ランキング1位[8]、1か月後の5月29日にはジャンル別ランキングにおいて日間・週間・月間で同時に1位となった[10]。累計では2017年6月時点で、14,288,206回(ページビュー)・3,684,023人(ユニークアクセス)に読まれている[11]。掲載開始8か月後の2016年12月28日には作者の橘由華より書籍として翌年2月に出版することが告知された[12]。書籍の内容は、小説家になろうの連載よりも「20%くらい増量しています」とし、「Web版を書くときに削った部分が追加されています」と大筋での差異は無いことが予告された[12]。書籍は2017年2月10日にカドカワBOOKS(KADOKAWA)より第1巻が刊行された[3]。 橘は小説家になろうのトップページの賞の案内を見たことがきっかけで書き始め、参考のために閲覧した人気ランキングで男性向けでも女性向けでもタイトルに「聖女」が入っていることを知り、そこからプロットを組み立てていった[13]。作中のキャラクターは、「同じ職場で働きたい人」というコンセプトで設定されている[13]。そのため、登場人物のほとんどが主人公に好意的で、唯一主人公を冷遇してトラブルメーカーとなる人物(カイル王子)も過失と思い込みによるもので悪意はなく、悪人が一切登場しないのが特徴的といえる。なお、カイル王子の処遇に関しては単行本2巻の作者あとがきの中で、当初のストーリー構想では断罪されて偽聖女アイラと共に国外追放される予定だったのを、「アイラがかわいそう」という読者の声が多かったため方針変更したと語っている。 社会的評価第1巻は出版物流通大手の日本出版販売(日販)が運営するサイト「ほんのひきだし」が集計するライト文芸ランキングにおいて2017年1月24日から2月20日集計の13位となった[14]。第2巻は同ランキングの2017年8月21日から9月20日集計で6位となった[15]。第3巻はライト文芸ランキングの2018年9月21日から10月20日集計で5位となり[16]、全ジャンル総合の週間ランキングでも7位となった[17]。 既刊一覧小説
漫画
テレビアニメSeason1は2021年4月から6月までAT-Xほかにて放送された[45][46]。原作4巻までのアニメ化。 Season2は2023年10月から12月まで放送された[47][48][49]。原作5巻から8巻のアニメ化。 アニメ版では、原作・コミカライズ版にあったレベル、HP/MP、スキルレベルが確認できるゲームのパラメーター的なステータス画面が存在せず、現実世界と同様に能力の高さは数値ではなく感覚的なものとして描かれている。また、原作では物語の合間に「舞台裏」として、スランタニア王国側の事情を説明するパートが挿入されているが、アニメではアイラの視点で描かれる第7話を除けば、セイ以外の人物しか登場しないシーンは最低限しか描かれていない。 原作では聖女召喚直後にカイル王子がセイを無視した理由は明確に描かれず、謹慎を受けるまで召喚された異世界人はアイラ一人だけと思い込んでいた。しかしアニメ版ではアニメオリジナルの設定を追加することで、原作での彼の行動の不自然さを解消する補完が行われている。 アニメ版のカイル王子は召喚された異世界人が二人いることは認識していたが、セイの身なりが地味だったため聖女(アイラ)に仕える侍女か乳母が一緒に転送されてきたと勘違いをし、王族がそのような身分の低い者に直接話しかけたりしないのはスランタニア王国では当然の振る舞いであったと説明されている。その後、自分の手から離れてホーク辺境伯家やヴァルデック伯爵家といった有力貴族関係者の庇護を経たセイが目覚ましい実績を上げる中で、アイラが聖女ではない可能性が高くなってきた。そのため、自分が失脚した後に彼女が偽聖女として咎めを受けるのを防ぐために、敢えて頑迷な王子として振舞い聖女セイを公衆の面前で侮辱することで、アイラはカイル王子の暴走に巻き込まれた被害者と周囲に印象付け、弟のレイン王子にアイラの保護を引き継がせるのが真意だった。 スタッフ
キャスト
主題歌
各話リスト
放送局
BD / DVD
Webラジオセイ役の石川由依とエリザベス・アシュレイ役の上田麗奈によるWebラジオ『TVアニメ「聖女の魔力は万能です Season2」〜セイとリズのお茶会ラジオ〜』が音泉にて2023年10月3日から12月26日まで隔週で火曜19時に配信された[56]。 注釈・出典注釈出典
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