配牌配牌(はいぱい)とは、麻雀において、局の開始時に各プレイヤーが牌を取得する行為、および、それによって取得された牌(手牌)のことをいう。本稿では配牌に関する細目事項も併せて概説する。 配牌の手順
手積みの麻雀であれば、前の局が終了したあと、次の局の牌山を積む前に洗牌が行われる。充分に洗牌された牌を各自が積み、積み終われば親がサイコロを振る。 全自動卓の場合は、前の局の牌をすべて卓の中に流し込み、卓中央のセットボタン(サイコロボタンでないほう)を押す。親はセットボタンと前後してサイコロボタンを押す。 親が振ったサイコロの目によって、右表の通り開門位置が決定される。例えばサイの目が5なら、親は自山の右から5幢目(と6幢目の間)を割る。その左側の2幢、すなわち6幢目と7幢目の2幢4枚が親の配牌の第1ブロックである。なお、サイコロは2個振られるため、目が1になることはない。 以降の手順は以下の通り。
なお、右図に見る通り、配牌の取得は開門位置から牌山を時計回りに進行する。これは座順およびツモ番や親番の移動が反時計回りに進行するのとは逆である。 また、東家(親)だけ配牌が1枚多いが、これは配牌と同時に第1ツモを取っているものと解される。 配牌に関する留意事項
「3ノコ」「4ノコ」「5ノコ」全自動卓では各牌山に積まれるのは17幢と決まっている。そのため出目が大きい場合は右からではなく左から数えたほうが早く、出目12の時は俗に「3ノコ」(3幢残し)、出目11の時は「4ノコ」(4幢残し)、出目10の時は「5ノコ」(5幢残し)などと言う。右表にまとめた通り、比較的よく使用されるのは自9の場合の「6ノコ」までで、左8の「7ノコ」はほとんど聞かれない。 嶺上牌を降ろすドラをめくるのは開門位置のプレイヤーの役割である。ドラをめくると同時に嶺上牌も下段に降ろす。これは局の途中で嶺上牌がこぼれて見えてしまうのを防ぐための習慣である。フリー雀荘等では、嶺上牌は必ず降ろしておくのがマナーとされる。 また、一部のルールブックにも配牌時の嶺上牌についての言及が見られる。いわく、「ドラ表示に際して、ドラ表示牌をめくる前に嶺上牌を降ろし、しかるのちにドラ表示牌をめくれば、めくった拍子に嶺上牌がこぼれてしまうようなことは起こらない」との記述がある[2]。 配牌時のトラブル配牌の前後には以下のようなトラブルがありがちである。ただし、その時の対処はルールブック等にも明確に書かれていないことが多く、プレイヤー4人の合議で対処するか、フリー雀荘であれば店側の人間に裁定を求めることになる。それぞれのケースでいずれの裁定となるかは必ずしも確定的ではないが、それほど重い罰則は科されない傾向にある。
配牌完了型全自動卓従来型の全自動卓の場合、卓の中から上がってくるのは牌山だけである。しかし配牌完了型全自動卓の場合は、牌山と同時に手牌まで各自の手元に配られた状態で牌が上がってくる。いちいちサイコロを振って開門位置を決め、3ブロック+チョンチョンに分けて配牌を取る、などといった煩雑な手順を経る必要がなく、ドラ表示牌も最初からめくられた状態であがってくるので、ドラをめくるという手順もない。配牌時におけるほとんどの手順が自動化されている。 ただし、親の手元に配られるのも13枚なので、親は第一ツモをツモってから第一打を切らなければならない。「親は配牌が完了したら第一打を切る」という従来の動作に慣れ切っている場合、第一ツモを取り忘れて第一打を切ってしまうという事態が頻繁に起こりうるので、親番の時は充分に注意が必要である。[4][5] 配牌完了型全自動卓における局の開始の手順
第一ツモ取り忘れの救済措置親が第一ツモを取り忘れて第一打を切った場合、13枚の状態から1枚切るわけであるから、当然少牌に陥る。通常はアガリ放棄などの罰則が取られるが、慣れないうちは頻繁に起きるトラブルであるため、以下のような救済措置が講じられることもある。
いずれのケースでも、東家は切った第一打を変更することはできない。また、3番目のケースでは東家の第一ツモと南家の第一ツモが入れ替わることになる。4番目のケースでは一巡目のみ全員のツモ筋がずれる。 これらの救済措置が講じられる場合、その許容範囲はおおむね一巡目以内である。すなわち親が第二ツモをツモる以前であれば、親はペナルティなしで手牌を本来の枚数に戻すことができる。しかし第一ツモの取り忘れに気付いたのが二巡目以降であれば、親は少牌により和了放棄となる。 一度振りと二度振り
開門位置決定のサイコロを一度振るか二度振るかの取り決めである。一度振りなら開門位置は前述の表のようになるが、二度振りでは出目と開門位置の対照が複雑化する。二度振りにおける開門位置の決定手順は以下の通り。
通常の一度振りの場合、南家の山なら右から2幢目か6幢目か10幢目が開門位置になる。東家の山なら右から5幢目か9幢目が開門位置である。すなわち一度振りでは、それぞれの山と開門位置の対応が固定されている。しかし二度振りではこの法則が崩れ、二度サイコロを振る結果、南家の山の右から13幢目が開門位置になったり、東家の山の右から14幢目が開門位置になったりする(それぞれ右2+11、右6+7、右10+3などで右13。自5+9、自9+5などで自14)。このように開門位置の固定的対応を崩せば、イカサマ師の積み込みは成功しにくくなる[8]。 しかし積み込みの心配をせねばならなかったのは全自動卓が登場する以前の手積み時代のことで、全自動卓の登場によって積み込み師が賭場から退場してゆくと、サイを二度振りにする意味はなくなった。その結果二度振りの習慣は廃れ、自動卓完備のフリー雀荘等ではもっぱら一度振りが支配的である。 一部のルールブックにも言及が見られる。いわく、「全自動卓の普及によって積み込みの心配がなくなれば、一度振りのほうが分かりやすくていい」[9]とある。 なお、仲間内などで手積みの麻雀を打つ場合は、念のためではあるが二度振りにする余地はある(イカサマの可能性がないのであれば、開門の決定がただ煩雑になるだけである)。 パッコロパッコロとは、麻雀専用の正12面体のサイコロである。赤と黒の1つずつを1セットとして用い、赤いほうには東南西北が各3面ずつ、黒いほうには1から12までの漢数字が彫ってある。親はこれを2つ同時に振り、開門位置を決定する。主に三人麻雀で使用されるが、4人打ちの麻雀でも使用可能である。
このように、パッコロを使った場合、通常のサイコロの2つ振りでは出ることのない1の目が出るほか、開門位置とサイの目の関係もバラバラになる。 市販の牌セットには付属品として6面体のサイコロが付いているが、通常パッコロはついていない。ただしバラ売りでは流通しており、オンラインで購入が可能である[10][11]。(パッコロの画像も参照可能) 三人打ち専門店などでは、まれにパッコロを使用した全自動卓が設置されていることがある。とはいえサイコロの部分が違っているだけで、他の部分は通常の全自動卓と同じである。 あまり一般には普及していないパッコロであるが、考案されたのは1970年代で、大脇善明という人物が考案者であると伝わっている[12]。 配牌の良し悪し牌を136枚使ってその中から無作為に14牌を引き出した場合の組み合わせ、すなわち第一ツモを含めた配牌の組み合わせは、全部で102億1253万3760通りある[13]。配牌でどのような牌を取得するかは偶然性に支配されるが、平均値は4向聴であるという[13]。 配牌終了の段階で和了の可能性が高い場合、さらには高得点が期待できる場合、「配牌が良い」と表現される。逆の場合は「配牌が悪い」という。 脚注
配牌に関連のある役関連項目 |