『野のユリ』(ののゆり、Lilies of the Field)は1963年のアメリカ合衆国のドラマ映画。監督はラルフ・ネルソン、出演はシドニー・ポワチエとリリア・スカラなど。ウィリアム・エドマンド・バレット(英語版)の1962年の小説『Lilies of the Field』を原作としている。
主演のシドニー・ポワチエが黒人俳優として初のアカデミー主演男優賞を受賞している[2]。
ストーリー
黒人青年のホーマー・スミスはアリゾナの砂漠を気ままに放浪していたが、車の故障で一軒家にたどり着く。そこには東ドイツからの亡命者である5人の修道女が住んでいた。ホーマーを見たマリア院長は、ホーマーを「神が遣わした者」と信じ込み、この砂漠の荒れ地に教会を建てるのを手伝うように頼みだした。
屋根の修理だけを引き受けることにしたホーマーだったが、院長はいっこうに賃金を支払おうとしない。それどころか、マリア院長は無理やりホーマーに教会建設にとりかかるように迫る。ホーマーも次第に彼女たちのペースに巻き込まれ、嫌々ながらも彼女たちに協力するようになっていく。
建築仕事に自信のあるホーマーはプライドを刺激され、教会の建設に執念を燃やし始める。初めホーマーは自分の作品として独りで建設することにこだわり、町の人々の協力を断ったが、考えを改め、町の人々と協調して教会の建設を進めるようになる。
マリア院長と4人の修道女たちは、各方面に手紙を出し、寄付金を募り、地元の建設会社に資材の提供を頼み込む。彼女たちの熱意におされた社長はとうとう建設資材を寄付することを申し出る。そうした紆余曲折を経て、マリア院長の望んだ教会堂は奇跡的に完成する。
しかし教会堂が完成した夜にホーマーは記念のミサを見ることもなく、また車で放浪の旅に戻ってゆく。
キャスト
日本語吹替版
タイトルの由来
映画のタイトル『野のユリ』の由来は新約聖書マタイ伝6章28節にある「野のゆりがどのように育つかをよく見なさい。ほねおることも、紡ぐこともしない。あなたがたに言っておく。栄華をきわめたソロモン王でさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。」[4] という、イエスが「思い煩ってはならない」ことのたとえとして語ったことばによる。映画の序盤で、賃金の支払いを求めるホーマーにマリア院長が、新約聖書のこの箇所を引き合いに出し、支払いを渋るシーンがある。
劇中歌
作品の評価
Rotten Tomatoesによれば、23件の評論のうち高評価は91%にあたる21件で、平均点は10点満点中7.90点となっている[5]。
脚注
注釈
出典
参考資料
- DVD 『野のユリ』20世紀フォックス ホームエンターテインメント ジャパン。
- 『新約聖書』フランシスコ会聖書研究所訳注、中央出版社、改訂初版1984年。
外部リンク