『金星人地球を征服』(It Conquered the World)は1956年制作のアメリカ映画。ロジャー・コーマン監督によるSF映画である。モノクロ、71分、スタンダード。AIP配給。日本では劇場未公開(TV放映のみ)だったが、1994年に国内で初めて劇場公開された[1]。
ストーリー
トム・アンダーソン博士(リー・ヴァン・クリーフ)は、特殊な無線装置を開発し、ゾンターと名乗る金星人との交信に成功した。博士は彼らの優れた技術で平和を実現するため、金星人を呼び寄せてしまう。だが、金星人はコウモリに似たマインドコントロール装置によって人類を洗脳し、征服することを企んでいたのだ。博士の友人のネルソン博士(ピーター・グレイブス)はそのことに気付くが、彼の妻ジョーンは既に金星人に洗脳されていた。ネルソン博士は妻をやむなく射殺すると、アンダーソン博士と共に金星人が潜む洞窟に突入する[2][3]。
キャスト
※括弧内は日本語吹替(テレビ版)
製作
本作の脚本は当初、ルー・ラソフが執筆していたが突然カナダに帰国したため、チャールズ・グリフィスが撮影開始の二日前に引き継ぎ完成させた(しかし彼の名前はクレジットされていない)[4]。製作、監督はB級映画の帝王、ロジャー・コーマン。わずか10日間で撮影を完了した。主演は、後にスパイ大作戦のジム・フェルプスで有名になるピーター・グレイブスと、これも後にマカロニ・ウェスタンのスターとなるリー・ヴァン・クリーフが共演した。
金星人
金星人のカニのような造形はコーマン自身のアイデアで、当初大重力の惑星[5]の生物は背が低くなるだろうという”科学考証”に基づき、平べったいクリーチャーを作成した。しかし、それを見た主演女優ガーランドが、「本当にこれが地球を征服しに来たの?」"That conquered the world?”と言いながら蹴り倒したため、コーマンはすぐに顔の上に三角錐を取り付け、ガーランドの背より高くした[6]。
クリーチャーの制作は、『百万の眼を持つ刺客』などを手掛けたポール・ブレイズデルが担当し、また着ぐるみの内部にも彼自身が入った。ベニヤ板で作った骨組みに張ったワイヤーで動かせるようになっていた。表面はフォームラテックス製で赤い塗装がされていたという(画面はモノクロのため判別がつき難い)[6]。
日本では大伴昌司が少年誌の記事等[7]で「金星ガニ」として紹介したためその名前で呼ばれることもある。米国では「キュウリの怪物」「アイスクリームコーン」などと呼ばれている[6]。なお、建物の窓越しに金星人がガーランドやグレイブスを襲っているスチル写真があるが、そのようなシーンはない(宣伝用スチルである)。
リメイク
『en:Zontar, the Thing from Venus』1966年にラリー・ブキャナン監督によりカラー作品としてリメイクされた。日本でのTV公開時タイトルは、『SF金星怪人ゾンターの襲撃』。金星人の造形は単なるヒューマノイド(三つ目のコウモリ人間)に変更されている[8]。
公開
英語圏
日本
- 日本では長らく劇場未公開でテレビ放映[10]のみであったが、1994年に、『SF・特撮・モンスター/シネマ秘蔵版大全』と題した特集上映で、他のAIP作品と共に劇場公開された[1]。
- 1990年代にビデオソフトが発売されていた
- 2010年にランコーポーレーションより激安DVDとして発売
脚注
関連項目