風景の中の家族
『風景の中の家族』(ふうけいのなかのかぞく、西: Grupo familiar ante un paisaje、英: Yonker Ramp and His Sweetheart)は、17世紀オランダ黄金時代のハールレムの巨匠フランス・ハルスが1645-1648年ごろ、キャンバス上に油彩で制作した絵画である。作品は、マドリードのティッセン=ボルネミッサ美術館に所蔵されている[1]。 本作は、ハルスが屋外の「ピクニックの様式」で制作したわずか数点の家族を描いた絵画のうちの1つであり、ハルスの時代には稀であった黒人の少年を取り上げた唯一の作品である。本作はまた、ハルスの描いた作品中最大の作品の1つで、ハルスが生涯にわたって何度も描いたハールレムの市民警備隊を描いた作品を別とすれば最大のものである。この家族の名前はわかっていないが、黒人の召使が描かれているので、主人は西インド諸島と関係がある人物のようである[2]。 過去の記述1910年のハルスの目録で、研究者のホフステーデ・デ・フロートは以下のように記述している。
来歴この絵画は、1902年に画商ジョゼフ・ドュヴィーンの手中に入った[1]。1910年には、ジョン・モルガンの入札により、500,000ドルでオットー・ハーマン・カーンに購入された。彼は、後に本作をニューヨークのメトロポリタン美術館に貸し出した[4]。 1935年、作品はニューヨークのモグマー芸術基金 (Mogmar Art Foundation) にあったが、その基金からティッセン=ボルネミッサ・コレクションにより購入された[1]。 18世紀における絵画の来歴については、ほとんどわかていない。1906年、ロイヤル・アカデミーにおいて『画家と家族の肖像』として展示された[5]。 女性の彩色されたスカートと、より一般的であった石臼型のカラーではなく平たいカラーは、彼らが最新のファッションを購入できた富裕な市民であったことを示している。ナショナル・ギャラリー (ロンドン) にあるハルスの『家族の肖像』のように、本作の背景はピーテル・デ・モレインにより制作されたと提唱されてきた。最初、ニール・マクリーン (Neil MacLaren) がナショナル・ギャラリーの『家族の肖像』についてそう提唱したが、続いてシーモア・スライヴは、ティッセン=ボルネミッサ美術館の本作についても同様に提唱した[2][6][7]。 本作は、1966年に修復され、その過程の記録は、J・ポール・ゲティ美術館に保管されている[7]。 現代との関わり2017年4月に、本作は、タイタス・ケイファーのTED (カンファレンス) の主題となった。彼は、本作のような過去数世紀のヨーロッパの美術品を含む文化遺産において、黒人がどのように描かれているかについての大胆な提言をするため、本作を模写してみせた[8]。彼は話しながら、黒人の少年を除くすべての人物を塗りつぶしたが、その要点とは、このような絵画では、往々にして背景に登場する黒人たちよりも、レースのカラーについて多くが知られているというものであった。本作の場合は、描かれている家族についても同様に知られていないが、ケイファーの提唱は的を得ている。17世紀のハールレムにいた黒人の数は実際には知られていないが、ペトルス・カンパーの『顔のアングル』に関する1770年の人気のあった講義によると、画家たちが彼らを描く際の困難さを考慮して、ほぼゼロであったと推測される。その講義において、カンパーは、ハルスではなく、別のハールレムの画家コルネリス・フィスハーがすべての画家の中で黒人を最もうまく描く技術を持っていたと主張した。
脚注
参考文献
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