鶴見 済(つるみ わたる、1964年 - )は、日本のフリーライター。東京都出身。東京大学文学部社会学科卒業。代表作は『完全自殺マニュアル』。
人物
大学時代に社会学者・見田宗介に出会い、その思想に影響を受けたり、ゼミにも参加した歴史学者・木村尚三郎の低成長時代論から影響を受ける。大学卒業後、大手電機メーカー、出版社勤務を経てフリーライターとなる。1993年『完全自殺マニュアル』(太田出版)がベストセラーとなったことで一躍有名となった。出版当時29歳。
鶴見は一貫して、現代日本社会における「生きづらさ」「どうすれば楽に生きられるのか」という問題にこだわってきた。
デビュー作の『完全自殺マニュアル』では、いざとなれば死ぬこともできるのだから、「頑張って生きる」「強く生きる」という生き方から降り、苦しい日常生活をより楽に生きていくことを提唱した[1]。
1996年には、「自殺もせずになんとか楽に生きていくための実用書」と前置きされた『人格改造マニュアル』を出版し、クスリや精神療法、瞑想などにより内面をコントロールすることで日常を乗り切るという選択肢を提示。長年にわたる自らの精神科通院体験も元になっているという。またドラッグに関しては、「Just Say NoからJust Say Knowへ」という世界的な流れを受けて、タブーにするのではなく知識の提供に努めた。
1998年に出版された『檻のなかのダンス』では、自らのレイヴ体験から「リズムに合わせて踊る=ダンス」というシンプルな動作により身体を解放し、規律・訓練的な監獄社会から自由になることを主張。レイヴ・ムーブメントを社会学的に位置づけるという役割を担った。自らの勾留体験も、監獄的な社会と重ね合わせて紹介した。
2000年に出版された対談集『レイヴ力』では、作家の清野栄一らとともに、日本に定着したレイヴ・ムーブメントを様々な角度から解き明かした。またダンスに加えて自然とつながることで、生きている実感を取り戻そうと語っている。
2012年の『脱資本主義宣言』では、楽に生きられない原因として経済の仕組みに注目。経済成長至上主義、過剰消費、グローバル化などを批判し、衣食住にまつわることを自ら行うことで、生きることへの興味を取り戻そうとする。さらに自然界とのつながりや自然界の仕組みを、経済の仕組みに代わるモデルとして強調している。
2017年には『0円で生きる』を出版。お金を使わずにできる贈与、共有、相互扶助などの具体的な方法の数々を、自身が実践したうえで紹介した。その目的は、お金への依存度を下げ、お金のない人やお金を稼ぐのが苦手な人でも生きやすい社会にすることだという。「小さくても豊かな経済の作り方」という副題のとおりのマニュアルではあるが、贈与や貨幣経済の歴史などの解説も多い。
2022年の『人間関係を半分降りる』では、生きづらさを生む一番のもとは結局人間関係であるとした。
自身の過去の友人関係、家族関係、恋人関係に向きあい、もっと可変的な関係を作ることを主張している。そのために第三の居場所づくりも提唱し、自ら作っている居場所についても書いている。
日本の近すぎる人間関係も問題であると指摘し、その背景には、明治以降に輸入されたヒューマニズムなどによる人間関係の美化の悪影響があると見ている。
Twitterやブログでは、日本独自の生きづらさへの批判など、社会全般に関する発言を行なっている。
不適応者の居場所というつながりのない人のための場を運営している。不要品を路上で無料で放出する0円ショップというイベントも仲間と主催。放棄された国有地を周辺の住民が耕している共同の畑にも参加している。
著書
単著
- 『完全自殺マニュアル』太田出版 1993年
- 『無気力製造工場』太田出版 1994年
- 『人格改造マニュアル』太田出版 1996年
- 『檻のなかのダンス』太田出版 1998年
- 『脱資本主義宣言』新潮社 2012年
- 『0円で生きる』新潮社 2017年
- 『人間関係を半分降りる』筑摩書房 2022年
共編著
- 『ぼくたちの「完全自殺マニュアル」』(編)太田出版 1994年
- (木村重樹編、清野栄一共著)『レイヴ力 = rave of life』(レイヴりょく) 筑摩書房 2000年
脚注
外部リンク