Hyper-V の管理や設定変更には、Hyper-V 機能を有効にした Windows Server に直接ログオンして行う方法と、リモートで行う方法がある。リモート管理するには Windows Server、もしくはHyper-Vリモート管理ツールがインストールされたクライアントOS(Windows Vista、およびWindows 7)、またはx64版・x86版を問わずHyper-V マネージャーを有効にしたPro以上のエディションのWindows 8/8.1、およびWindows 10、Windows 11が必要になる。また、Core サーバの MMC ポインティングのリダイレクトによるリモートデスクトップもしくはリモートサーバを用いることができる。
Hyper-V Server
Hyper-V の無償版として Hyper-V Server が存在する。これは、Hyper-V 機能のみを利用できるように大半の機能が制限された、Server Core をベースとした Windows Server である[6]。
無償で提供されている Hyper-V Server はコマンドラインインタフェース (CLI) に限定されている。Hyper-V 機能を実行・管理するオペレーティングシステム の設定は、ログオン後に起動するシェルのコマンドを用いる。Hyper-V Server 2008 からはテキストベースのメニューが用意されているため、初期設定が行いやすくなっている。
最初の Hyper-V Server は、Windows Server 2008 のラインナップの1つとして、「Windows Server 2008 Hyper-V」の名称で2008年8月1日にリリースされた。その後、マイクロソフトは Windows Server 2008 R2のリリースに合わせて「Microsoft Hyper-V Server 2008 R2」を、Windows Server 2012 のリリースに合わせて「Microsoft Hyper-V Server 2012」をリリースしている。
アーキテクチャ
Hyper-Vはパーティションによる隔離をサポートする。パーティションは隔離を実現するための論理ユニットで、OSのハイパーバイザーによりサポートされる。ハイパーバイザーのインスタンスは少なくとも1個のWindows Server 2008が動作する親パーティションを持つ。仮想化スタックは親パーティションの中で動作し、ハードウェアへ直にアクセスする。親パーティションはゲストOSを動作させる子パーティションを生成する。親パーティションは子パーティションをhypercall APIを用いて作成する。hypercall APIはHyper-Vを操作するAPIである。
子パーティションはハードウェアリソースを直アクセスしない。そのかわり、仮想デバイスという概念でリソースの仮想的なビューを持つ。仮想デバイスに要求すると、VMBusを経由して親パーティションのデバイスにリダイレクトされる。リクエストはそこで管理される。VMBusはパーティション間の通信を可能にする論理的なチャンネルである。レスポンスも同様にVMBusを経由してリダイレクトされる。もし親パーティションのデバイスが仮想デバイスでもあるなら、親パーティションやより遠くに、物理デバイスへのアクセスできるところまでリダイレクトされる。親パーティションは仮想化サービスプロバイダ (Virtualization Service Provider) を実行する。それはVMBusを接続し、子パーティションからのデバイスのアクセス要求をハンドルする。子パーティションの仮想デバイスは内部で仮想サービスクライアント (Virtualization Service Client) を実行する。それはVMBusを経由して親パーティションのVSPへリクエストをリダイレクトする。この全体のプロセスはゲストOSに透過的である。
仮想デバイスはEnlightened I/Oと名づけられたWindows Server Virtualizationの特徴をうまく利用することができる。Enlightened I/Oはストレージ、ネットワーク、グラフィックの各サブシステムやそれ以外をサポートする。Enlightened I/OはVMBusをダイレクトに利用できるSCSIに似た高レベル通信プロトコルを用いた仮想化向けの実装に特化しており、デバイスのエミュレーション層をバイパスすることができる。それにより、Hyper-V下のゲストOSは他のエミュレーションされたハードウェアを用いたOSに比べより高速に動作する。これにより通信はより効率的になるが、ゲストOSもEnlightened I/Oをサポートする必要がある。当初はWindows Server 2008、Windows Vista、SUSE Linux Enterprise Serverのみが標準でEnlightened I/Oをサポートしていたが、後からLinux用のドライバがGPLで公開されるようになった[7][8]。
Windows 7 Enterprise, Ultimate, Professional(x86,x64)
○
○
○
○
○
Windows Vista Enterprise, Ultimate, business(x86,x64)
○SP1
○SP2
○SP2
○SP2
○SP2
Windows XP Professional(x86)
○SP2
○SP2
○SP2
○SP2
○SP3
CentOS 8
CentOS 7
○7.0 – 7.2
○7.0 – 7.2
○7.0 – .2
○7.0 – 7.2
CentOS 6
○6.0 – 6.7
○6.0 – 6.7
○6.0 – 6.7
○6.0 – -6.7
CentOS 5
○5.5 – 5.11
○5.5 – 5.11
○5.5 – 5.11
○5.5 – 5.11
Red Hat Enterprise Linux 8
Red Hat Enterprise Linux 7
○7.0 – 7.2
○7.0 – 7.2
○7.0 – 7.2
○7.0 – 7.2
Red Hat Enterprise Linux 6
○6.0 – 6.7
○6.0 – 6.7
○6.0 – 6.7
○6.0 – 6.7
Red Hat Enterprise Linux 5
○5.0
○5.5 – 5.11
○5.5 – 5.11
○5.5 – 5.11
○5.5 – 5.11
Red Hat Enterprise Linux 4
○4.0
Red Hat Enterprise Linux 3
○3.0
Red Hat Enterprise Linux 2
○2.1
Red Hat Linux 9
○9.0
Debian 10
Debian 9
Debian 8
○8.0 – 8.2
○8.0 – 8.2
○8.0 – 8.2
○8.0 – 8.2
Debian 7
○7.0 – 7.9
○7.0 – 7.9
○7.0 – 7.9
○7.0 – 7.9
SUSE Linux Enterprise Server 12
○
○
○
○
SUSE Linux Enterprise Server 11
○SP2 – SP4
○SP2 – SP4
○SP2 – SP4
○
SUSE Linux Enterprise Server 10
○SP1
○SP4
○SP4
○
○
SUSE Linux Enterprise Server 9
○
SUSE Linux 10
○10.0-10.2
SUSE Linux 9
○9.3
Ubuntu 18.04 LTS
Ubuntu 16.04 LTS
○16.04
○16.04
○16.04
○16.04
Ubuntu 14.04 LTS
○14.04
○14.04
○14.04
○14.04
FreeBSD 12
FreeBSD 11
FreeBSD 10
○10
○10 – 10.2
○10 – 10.2
○10 – 10.2
FreeBSD 9
○9.1
○9.1
○9.1
○9.1
FreeBSD 8
○8.4
○8.4
○8.4
○8.4
Windows Server 2008ゲストおよびWindows HPC Server 2008、Windows 7は1-、2-、4-wayの SMPに設定することが可能で, Windows Server 2003およびWindows Vistaでは1-、2-wayのSMP、SUSE Linux を除くその他のゲストOSは1-wayのみである
[36]。他のゲストOS、例えばUbuntu Linux 6.06/6.10/7.10 あるいは Fedora 8/9 などはサポートされないが、これらが動作したという報告が上げられている
[44][45][46]。
Enlightened I/O付きのゲストOSおよびハイパーバイザーに対応したカーネル、例えばWindows Server 2008、Windows Vista SP1、およびCitrix XenServerや SISE から計画されているものなどは、ホストのリソースをよりよく利用できるだろう。ホストのリソースはVSCドライバーによってこれらのゲストOSからVSPにVMバスを通して直接通信される
[47]。Non-enlightenedなOSはエミュレートされたI/Oで動作する
[48]。
しかしながら、integration components(VSCドライバーを含む)はWindows Server 2003 SP2、Windows XP SP3、Windows Vista SP1、Linuxから利用でき、より高いパフォーマンスを獲得できる。
Xenを有効にしたLinuxゲストはHyper-Vによって準仮想化が可能である。現在、SUSE Linux Enterprise Server 10,11,12 x86およびx64 Editionがこの方法においてマイクロソフトから公式にサポートされている[49]が、Xenを有効にしたLinuxはSUSE Linuxに限らず動作すると考えられる。2008年2月、レッドハットとマイクロソフトは、それぞれのOSにおけるハイパーバイザー相互運用性についての仮想化の契約にサインした。これによってRed Hat Enterprise Linux 5は公式にHyper-Vでサポートされる
[50]。
VHD ファイルの Virtual Server 2005 と Virtual PC 2004/2007 との互換性
Hyper-Vを始めとしてVirtual Server 2005、Virtual PC 2004/2007等の製品はゲストOSを1つのVHDファイルに保存することができる。このファイルはゲストOS全体を格納しているものの、他のファイルによって「アンドゥ情報」などを構成することもできる。
Virtual Server 2005、Virtual PC 2004/2007による古い VHDファイルは Windows 2008 Hyper-V Serverでコピーし、使用することができる。しかし、古い『Virtual PC 統合コンポーネント』は移転の際に取り除く必要がある。移転したゲストOSはHyper-Vを使って構成し、開始された後、仮想ハードウェアの変更が検出されるだろう。『 Hyper-V 統合サービス( 又は Integration Services ) 』(Virtual PC 統合コンポーネントに類似した機能)をインストールすることで5つのサービスの形でパフォーマンスを向上させる。ゲストOSのビデオ表示およびネットワークカードの新しいドライバも共にインストールされる。結果として最近のバージョンのWindowsでは再アクティベーション、およびプロダクトキーの再発行が必要となる。