IPランドスケープIPランドスケープ(アイピーランドスケープ、英語: intellectual property landscape)とは、2017年4月に特許庁が公表した『知財人材スキル標準(version 2.0)』において戦略レベルのスキルとして定義された用語である。 日本においてIPランドスケープが登場した背景
日本国内においては以下のような様々な定義が存在し、主に「知財情報(主に特許情報)を経営戦略・事業戦略策定へ活用」と「知財を重視した経営」の2つの意味合いのいずれかで用いられることが多い。
『知財人材スキル標準(version 2.0)』でIPランドスケープが定義された背景として、日本特許庁の報告書[4]における以下の海外企業・特許事務所のヒアリングによって、IPランドスケープの把握が重要であるとの結果が得られたことが挙げられる。
海外におけるIPランドスケープ
海外においてIPランドスケープという用語が、上記のような「知財情報(主に特許情報)を経営戦略・事業戦略策定へ活用」と「知財を重視した経営」という意味合いで用いられることはあまりなく、IP(知的財産)のランドスケープ(風景・景観)の言葉通りに「知財全般の概況把握」のように、より漠然とした意味合いで使われるケースが多い(Googleで"ip landscape"で検索)。
現在日本国内で用いられているIPランドスケープに近しい意味合いの英語としてはPatent Landscape(パテントランドスケープ)[8][9]がある。日本では特許情報分析の結果を可視化したものをパテントマップ・特許マップと呼ぶが、海外ではPatent Landscape(パテントランドスケープ)と呼ぶことが多い。Patent Landscape(パテントランドスケープ)だけではなく、パテントマップ・特許マップにおいても、特許情報だけではなくマーケット情報や企業情報など複合的に分析することが必要かつ重要である(パテントマップ・特許マップは特許情報のみの分析にとどまるものであり、特許以外のマーケット情報や企業情報を加味しない分析であるという誤った言説も一時期流れていた)。
欧米においてはPatent Landscape(パテントランドスケープ)が用いられることが多いが、韓国においては知財を重視した研究開発活動を指す用語として「IP-R&D」が普及している[10][11][12]。
なお、Googleトレンドにおいて”ip landscape”と"patent landscape"のキーワード検索ボリュームの推移を確認すると、”ip landscape”はあまり用いられている用語ではないことが確認できる(特に近年キーワード検索ボリュームが増加して、注目を浴びている様子もうかがえない)。 日本におけるIPランドスケープの定義IPランドスケープというキーワードについては国内外問わず明確な定義はなく、各社各様に用いているのが現状である。 弁理士の乾は「IP ランドスケープの基礎と現状」において日本のIPランドスケープと欧米のPatent Landscapeについて詳細な比較を行っている。 また、K.I.T.虎ノ門大学院教授の杉光は、2019年にした発表論文[13]の中で、IPランドスケープに関する定義に関する先行研究がない点を指摘しており、パテントマップや知財情報分析・知財情報解析、特許情報分析、三位一体の経営戦略、知財経営などとの用語との比較検討を行い、日本企業と欧米企業における知財部門が置かれている環境を踏まえて「日本の環境の場合,知財情報分析の手法についていくら研究が進展しても経営陣や事業責任者がそれを積極的に活用しようとする意思や意欲のない限り,狭義の IP ランドスケープと標準定義の IP ランドスケープには大きな差が必然的に生まれる」と指摘している。 なお、特許庁の「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究」において、
と定義しており、知財情報も盛り込んだ結果を事業責任者・経営者と共有する 2の重要性を強調している。 IPランドスケープに積極的に取り組んでいる日本企業富士フイルム株式会社の今井知的財産本部長はインタビュー記事[14]において、
のように述べており、IPランドスケープという用語を用いていなくても、知財情報を事業戦略等へ積極的に活用してきた企業は存在する。以下ではあくまでもIPランドスケープという用語を積極的に用いている日本企業について取り上げる(50音順)。
2021年にIPランドスケープ活動を推進していくために、IPランドスケープ推進協議会が設立され、グローバル知財戦略フォーラム2021においてその概要についてライブ配信された。また3月18日に第1回協議会が開催され、25社の会員企業が参加している。
脚注
外部リンク
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