KV-2 (ロシア語 : КВ-2 :カーヴェー ドヴァー)は、第二次世界大戦 中にソビエト連邦 で開発された重戦車 である。
"KV"とは、当時のソ連国防相 であるクリメント・ヴォロシーロフ (Климент Ворошилов )の名を冠したもので、英語 では「KV」、ドイツ語 では「KW」と表記される。
152mm榴弾砲D-10T を搭載した回転砲塔 を装備するその巨体ゆえに、ドイツ兵 からはギガント (巨人)と呼ばれた
概要
初期生産型のKV-2 1939年型のレプリカ
1939年 、フィンランドに侵攻 したソ連軍 は、カレリア地峡 の国境 地帯に築かれたフィンランド軍 の強固な防衛陣地 、マンネルハイム線 に前進を阻まれ大損害を強いられ、前線 からは強力な火力支援 戦車 の要請が送られた。
そのため、当時開発が終わって採用されたばかりのKV-1 重戦車 をベースに、152mm榴弾砲M-10 を備えた新しい回転砲塔 を設計・搭載した陣地突破用戦車が開発された。(設計はレニングラード のキロフスキー工場 の設計局による)1939年 12月の開発要請に対し、1940年 1月末には試作車 完成、2月には増加試作型2両が完成し(その後同型の増加試作型はもう1両完成した)、直ちに冬戦争 に送られるという突貫作業であった。前線に送られた2両は、2月11日 、マンネルハイム 線の一角であるスンマ地区で初めて実戦投入された。
本車の装備する152mm榴弾砲 の絶大な火力 は、開発当初の要望に十二分に応えた。また、送られたうちの1両は、フィンランド陸軍のボフォース 37mm対戦車砲 弾を48発も命中させられたにもかかわらず、砲塔前面で110mm、側面75mmの重装甲 はその砲弾 をことごとく跳弾するか、受け止めたため装甲が窪みこそしたものの、戦闘に支障を来さなかった。この活躍を受け、火力支援型KVは早速正式採用された。
当初、この戦車は単に「大型砲塔KV(KV s bolshoi bashnei)」として区別されていただけだったが、正式採用に伴いKV-2と名付けられ、ソ連の戦車兵 からは親しみを込め、「ドレッドノート 」と呼ばれた[ 2] 。
試作車および初期生産ロットの車輛は、全て平面の装甲板による、平面形が7角形の砲塔を搭載していたが、後に装甲板の構成が簡略化され、両側面は途中でカーブした1枚板の装甲を持つ、平面形が6角形の砲塔となり、1940年末以降の生産車に搭載された。この主量産型砲塔は初期型砲塔に比べてわずかに背が低く、また、後面に近接防御用のDT機銃 も備えていた。KV-2は、1940年 -1941年 にかけて、増加試作型を含め202両が生産された。
しかし、2名の装填手を要する分離装薬式の砲弾は発射速度は遅く、砲塔も人の背丈ほどもあった。また、砲塔は大幅に大型化しているにも関わらずターレット リング径はKV-1と同じで、数tもある砲塔を支えることに多大な無理を生じさせていた。重い砲塔は、車体が傾いた状態では満足に回転させることもできず、通常のKV-1でさえ難がある機動性 と信頼性はさらに低くなった。そのため、ターレットリングはのちに改善されている。
これほど運用上の制約がある車両でありながら、通常の戦車と混成で同じように扱われたため、いたずらに消耗を重ねることとなった。このため、KV-2は開戦後ほどなくして生産は打ち切られ、ソ連戦車としては比較的少数の生産で終わった。
その後、大戦中のソ連軍では、火力支援用途には大口径 ・長射程の牽引火砲 やBM-13 カチューシャ が主力となり、また、対戦車用途も考慮した重自走砲 としてケースメート式のSU-152 ズヴェロボーイ /ISU-152 なども開発されたが、KV-2のような重装甲・回転砲塔式の突破戦車は(ペーパープランはさておき)作られなかった。
独ソ戦での活躍
放棄されたKV-2(1940年型)1941年 夏 独ソ戦初期の撮影
1941年 6月の独ソ戦 開戦後は、フィンランド戦 を生き残った増加試作型 、量産型ともに前線に投入され、フィンランド戦同様、その巨体と重装甲 はドイツ兵 を驚愕させた。
1941年6月23日 、35(t) を装備するドイツ第6装甲師団 は、リトアニア のドゥビサ川 (英語版 ) 方面の戦いで、KV-2を保有するソ連第2戦車師団と遭遇、戦車 40両と多くの火砲 を撃破 される大損害を被った。このため、前進していたドイツ第1装甲師団 は反転して、第6装甲師団を支援しなければならなくなった。
また、ラセイニアイ (英語版 ) 市内の第6装甲師団 とドゥビーサ川橋頭堡 の歩兵 部隊 を分断するために送り込まれた、たった1両のKV-2は橋頭堡に向かう増援部隊のトラック 12台を撃破し、街道上の分岐点に居座ってドイツ軍を食い止め続けた。これを排除すべく、5 cm PaK 38 対戦車砲 を装備する部隊が送り込まれたが返り討ちに遭い2門が破壊され、続く8.8cm 高射砲 1門も設置中に砲撃 を受け、破壊された。夜になって突撃工兵が爆薬 攻撃を仕掛け、履帯 を破壊して行動不能に追い込んだものの完全撃破には至らなかった。翌日、軽戦車 が囮となっている間に設置された8.8cm高射砲が水平射撃で6発を命中させた。しかし、貫通したのは2発のみで乗員はまだ生きており、砲塔 が動き始めたため、工兵 により被弾孔から手榴弾 が投げ込まれ、ようやく完全に沈黙した[ 3] [ 注釈 1] 。
なお、ドイツ軍は放棄されたKV-2を少数ながら鹵獲 しており、Pz. Kpfw.KW-2 754(r) の名称で使用している。ドイツ軍が鹵獲使用した物には、砲塔天面右前部にIV号戦車 の車長 用キューポラ を増設した独自改造車が存在した。
登場作品
映画
『ガールズ&パンツァー 劇場版 』
プラウダ高校の使用戦車 として1940型が登場。
アニメ
『ガールズ&パンツァー 』
1940年 型がプラウダ高校の使用戦車として登場。同校隊長のカチューシャは車高が高く、乗った時の眺めが良いからという理由で“かーべーたん”乃至“頼れる同志”と呼ぶほど気に入っている。
『ブレイブウィッチーズ 』
第5話で登場。主人公のひかり達が猛吹雪の中で乗り捨てられたKV-2を発見し、車内に入って吹雪をしのいでいた。
ゲーム
『Tank Troopers 』
デフォルメ化されたKV-2が登場。55,000G(Gはゲーム内の通貨)を支払うと選択可能となる。
『War Thunder 』
1939年 型と1940年 型のほか、プレミアム車両としてドイツ軍 の鹵獲 仕様Pz. Kpfw.KW-2 754(r) (1940年型にIV号戦車のキューポラをつけたもの。ジェリカンラックも増設されている)、107mm砲搭載型KV-2Zis6が登場。プレイヤーが操作可能。
『World of Tanks 』
ソ連 の重戦車 として登場。研究を進めることで砲塔 が1939年型から1940年型以降のものになる。
World of Tanks Blitz
ソ連 TierVI重戦車 KV-2として開発可能。
『アッシュアームズ-灰燼戦線- 』
スマートフォン用ゲームアプリ。赤色十月同盟学連所属の重戦車として登場。ゲーム内で数多くの兵器が美少女にデフォルメ されている中、熊の着ぐるみを着ている異色のキャラクター。
『コンバットチョロQ 』
アリーナのライトクラスの30番目の他、特定の作戦に登場。
使用できる戦車中、重量が最高に設定されており、被弾時に点滅して挙動が止まることの無い唯一の戦車でもある。
『新コンバットチョロQ 』
プレイヤーが使用可能な「Qタンク」として登場。
『トータル・タンク・シミュレーター 』
ソビエト連邦の改重戦車として40年型が登場。またKV-1も登場。
『ミリ姫大戦 』
ゲーム内のキャラクターが使用する兵器として登場。
『虫けら戦車 』
ニンテンドー3DSソフト。「ギガント」の名で登場する。
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脚注
注釈
^ このエピソードは日本には当初KV-1 のものとして誤って伝えられた。このため小林源文 はKV-1を主役としてこのエピソードを描写した劇画「街道上の怪物」を書いており、またツクダホビー のタンクコンバットシリーズの「パンサー」にも同様にKV-1を用いたシナリオがあり、解説文もKV-1となっていた
出典
^ スティーブン・ザロガ,ジム・キニア『世界の戦車イラストレイテッド10 KV-1&KV-2重戦車 1939-1945』、p.13
^ スティーブン・ザロガ,ジム・キニア『世界の戦車イラストレイテッド10 KV-1&KV-2重戦車 1939-1945』、pp.20-33
参考文献
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
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