SFクズ論争(SFクズろんそう)、クズSF論争(クズSFろんそう)、日本SFクズ論争(にほんSFクズろんそう)、もしくはSF「冬の時代」論争[1](SFふゆのじだいろんそう)は、『本の雑誌』1997年3月号掲載の記事を契機として関連メディアおよびインターネット上に巻き起こった一連の論争。
概要
1997年2月10日発売の『本の雑誌』3月号に掲載された『この10年のSFはみんなクズだ!』と題された特集が発端である。これは高橋良平と鏡明の対談をメインとする記事で、「クズ」発言を行ったのは高橋である。
高橋は、商業的ヒット作に恵まれない日本SF界への嘆きやフラストレーションという文脈から「この際ここ10年のSFはみんなクズだ、としてしまえばすっきりする」とし、SF業界の閉鎖性・マニア化についても直近の話題作であった小説『パラサイト・イヴ』の篠田櫛子による解説[2]での指摘を引き合いに出して批判している。対談相手の鏡はSF批評界と出版界の「馴れ合い」を指摘し、高橋に異論は挟まなかった。大森望、山岸真がそれに対してコメントを寄せるという紙面内容であった。
同月9日付『日本経済新聞』には『国内SF氷河期の様相』とする記事[3]も掲載されており、事実上名指しで批判を受けた早川書房『S-Fマガジン』は5月号(3月25日発売)からは『緊急フォーラム:SFの現在を考える』として連続特集を組むこととなった(同10月号、第5回まで継続)。
参考文献
- 別冊本の雑誌15 SF本の雑誌 ISBN 4860110978 (該当対談の再録を含む)
- S-Fマガジン
- 1997年5月号『緊急フォーラム:SFの現在を考える1』
- 1997年6月号『緊急フォーラム 2』
- 1997年7月号『緊急フォーラム 3』
- 1997年9月号『緊急フォーラム 4』
- 1997年10月号『緊急フォーラム 最終回』
脚注・出典
- ^ 『本の雑誌』はそれ以前の1993年5月号で『頑張れ、SF!』とする特集を組んでおり、広義の「冬の時代」論争は当「クズ」論争よりも先行して存在したとする見方もあるが、ここでは区別しない
- ^ 篠田は『パラサイト・イヴ』はあくまで「SF的」作品に止まるとした上で、SFが狭く堅苦しくなっている現状と、周辺ジャンルのSF「もどき」・SF「的」作品がSF界から読者を奪っている状況を指摘した。角川ホラー文庫, ISBN 4043405014
- ^ 富田律之記者による署名記事。『S-Fマガジン』編集長(当時)塩澤快浩の言として「SFは袋小路に入っている」という発言が紹介されたが、塩澤は記者による曲解・捏造であると主張した(森下一仁ウェブページ 近況及び『S-Fマガジン』4月号 編集後記)
関連項目