Whirlpool (ハッシュ関数)
Whirlpool(すべて大文字でWHIRLPOOLと綴られることもある)は、暗号学的ハッシュ関数の一つである。AESに採用されたブロック暗号であるRijndaelの設計者の一人であるフィンセント・ライメンと、Paulo S. L. M. Barretoによって2000年に設計された。WhirlpoolはヨーロッパのNESSIEプロジェクトにおいて推奨ハッシュ関数の一つに採用された他、国際標準化機構 (ISO) および国際電気標準会議 (IEC) によって国際規格ISO/IEC 10118-3として標準化されている。 設計Whirlpoolは、ブロック暗号であるSquareに続いて設計されたハッシュ関数である。Whirlpoolは、かなり改変されたRijndaelに基づくen:Miyaguchi-Preneel構造を有している。2256 (≒ 1.158 × 1077) 未満の長さのメッセージに対して512ビットのハッシュを返す[3] 設計者によれば、Whirlpoolは特許でカバーされておらず、将来カバーされることもない。いかなる目的においても無料で利用できる[2]。 バージョンの変遷現在Whirlpoolには3つのバージョンが存在する。オリジナルのWhirlpoolは Whirlpool-0、最初の改訂版は Whirlpool-T、最新版は2003年の再改訂版で単に Whirlpool と区別される。ほとんどの場合は、再改訂版が用いられる。この版ではそれ以前の版で発見された脆弱性が修正されており、ハードウェア実装も容易である。ISO/IEC 10118-3で標準化されているのもこの再改訂版である。 これらの違いは以下の通りである。
内部構造Whirlpoolハッシュ関数は、en:Miyaguchi-PreneelモードのRijndaelに類似のブロック暗号 W に基づくMerkle-Damgård constructionである[2]。ブロック暗号 W は、8×8の状態マトリックス を持ち、総計512ビットとなる。暗号化プロセスは、4つのラウンド関数によって状態が更新され、それが10ラウンドから構成される。4つのラウンド関数は、SubBytes (SB)、ShiftColumns (SC)、MixRows (MR)、AddRoundKey (AK)である。1ラウンドでの計算は以下の通りとなる。 .
ハッシュ値の例Whirlpool-0("The quick brown fox jumps over the lazy dog") =
4F8F5CB531E3D49A61CF417CD133792CCFA501FD8DA53EE368FED20E5FE0248C3A0B64F98A6533CEE1DA614C3A8DDEC791FF05FEE6D971D57C1348320F4EB42D
Whirlpool-T("The quick brown fox jumps over the lazy dog") =
3CCF8252D8BBB258460D9AA999C06EE38E67CB546CFFCF48E91F700F6FC7C183AC8CC3D3096DD30A35B01F4620A1E3A20D79CD5168544D9E1B7CDF49970E87F1
Whirlpool("The quick brown fox jumps over the lazy dog") =
B97DE512E91E3828B40D2B0FDCE9CEB3C4A71F9BEA8D88E75C4FA854DF36725FD2B52EB6544EDCACD6F8BEDDFEA403CB55AE31F03AD62A5EF54E42EE82C3FB35
入力メッセージのわずかな違いも、出力されるハッシュ値に大きな変化を及ぼす。例えば、 "dog" を "eog" とした場合: Whirlpool-0("The quick brown fox jumps over the lazy eog") =
228FBF76B2A93469D4B25929836A12B7D7F2A0803E43DABA0C7FC38BC11C8F2A9416BBCF8AB8392EB2AB7BCB565A64AC50C26179164B26084A253CAF2E012676
Whirlpool-T("The quick brown fox jumps over the lazy eog") =
C8C15D2A0E0DE6E6885E8A7D9B8A9139746DA299AD50158F5FA9EECDDEF744F91B8B83C617080D77CB4247B1E964C2959C507AB2DB0F1F3BF3E3B299CA00CAE3
Whirlpool("The quick brown fox jumps over the lazy eog") =
C27BA124205F72E6847F3E19834F925CC666D0974167AF915BB462420ED40CC50900D85A1F923219D832357750492D5C143011A76988344C2635E69D06F2D38C
空の入力に対するハッシュ値の例: Whirlpool-0("") =
B3E1AB6EAF640A34F784593F2074416ACCD3B8E62C620175FCA0997B1BA2347339AA0D79E754C308209EA36811DFA40C1C32F1A2B9004725D987D3635165D3C8
Whirlpool-T("") =
470F0409ABAA446E49667D4EBE12A14387CEDBD10DD17B8243CAD550A089DC0FEEA7AA40F6C2AAAB71C6EBD076E43C7CFCA0AD32567897DCB5969861049A0F5A
Whirlpool("") =
19FA61D75522A4669B44E39C1D2E1726C530232130D407F89AFEE0964997F7A73E83BE698B288FEBCF88E3E03C4F0757EA8964E59B63D93708B138CC42A66EB3
実装設計者によって、C言語およびJavaで書かれたレファレンス実装がパブリックドメインで公開されている[2]。 Whirlpoolが用いられているアプリケーションの代表例としては、ディスク暗号化ソフトウェアであるFreeOTFEやTrueCrypt、VeraCryptが挙げられる。 関連項目脚注
外部リンク
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