グレッグ・イーガン(Greg Egan, 1961年8月20日 – )は、オーストラリアの小説家、SF作家。パース出身、病院のプログラマーなどを経て、1992年から専業作家として活動している。公の場には姿を現さず、自身の肖像は公開しない覆面作家としての活動を保っている[1]。
出身は、オーストラリア西オーストラリア州のパース[2]。幼少期の頃から科学とSFに興味を持ち、7、8歳の頃には、本を書くこと、映画の製作、何らかの科学者として働くことを人生に費やしたいと考えるようになっていた[3]。行っていた映画の自主製作では、イギリスの脚本家のデイビッド・カンプトン(英語版)の一幕物の映画化権利を購入したこともあった[2]。 大学まで進学し、西オーストラリア大学で数学の理学士号を取得している[4]。大学を卒業後はシドニーの映画の専門学校へ進学する[4]。しかし自分が映画産業で働く気になれないことを理解し、4週間程度の在学の後に退学する[2]。
その後6か月ほどの仕事の無い期間を経て、1983年からシドニーの病院で、病院付属の施設でプログラマーとして4年半働く[2]。その後1987年末に、パースに戻り、同系列の病院で再度働く[2]。これらの病院で働いた経験については、イーガンは「物理科学を専門としてきたので、医療、生化学の知識を得る良い機会となった」と述べている[2]。この頃からプログラマーの仕事との兼業の形で執筆活動を本格化し出し、1992年からは専業作家として活動している。1983年にオーストラリアで出版されたアンソロジーに収められた「Artifact」が作家デビュー作となっている[5]。
科学小説、SF小説を幼少期から親しみ[3]、10代の初めの頃はアシモフ、クラーク、フィリップ・K・ディック、J・G・バラードなどを読んでいた[2]。特に興味を持ったのは、15歳頃に読んだカート・ヴォネガットとラリー・ニーヴンで、それぞれの著者での特に好きな小説は「スローターハウス5」と「プロテクター」を挙げている[2]。その後10代終わりから20代初めにかけては、ウィリアム・ギャディスやトマス・ピンチョンなどのSF以外の小説を読むようになるが、グレッグ・ベアの「ブラッド・ミュージック」を読み、再びSF小説に惹かれるようになったという[2]。
初期の頃にはSFの他にホラー寄りの作品を執筆していたが、1989年にSF雑誌インターゾーンに掲載された「キューティ」に対して同雑誌編集長であったデイビッド・プリンゲルからの薦めをきっかけに、全面的にSF小説に取り組むようになった[5][2]。イーガンは「あの小さな後押しが、次のクライヴ・バーカーになろうとするような、もう十年費やそうかという徒労から救ってくれた!」と述べている[6]。
ナノテクノロジー、量子論、認知科学、宇宙論、数学等、広範囲な分野を題材としたSF作品を発表している。ハードSFの代表的作家として挙げられることが多い。執筆に当たっては関連分野の学会誌なども参照して執筆を行う[7]。
自作の参考文献として、例えば、『ディアスポラ』では、マーヴィン・ミンスキー、ダニエル・デネット、ルイス・カウフマンの著作を[8]、『万物理論』ではスティーヴン・ワインバーグ、エドワード・サイード、エメ・セゼールの著作を[9]あげている。公の場には出ないが、ネット上では活発に活動し、自身のウェブサイトにおいて科学エッセイや小説、作品解説などを公開している。
ワールドコンでは、ヒューゴー賞 中長編小説部門で、1999年に『祈りの海』で受賞しており、2001年に『オラクル』でノミネートしている。ヒューゴー賞 中編小説部門では、1995年に『繭』、1996年に『ルミナス』、『TAP』、1999年に『プランク・ダイブ』、2000年に『ボーダー・ガード』、2008年に『暗黒整数』、『グローリー』でノミネートしている。
オーストラリアでは、ディトマー賞(英語版)短編部門で、1989年に『散骨』、1991年に『愛撫』、1993年に『Worthless』、1995年に『チェルノブイリの聖母』、1998年に『しあわせの理由』でノミネートしており、1993年に『ふたりの距離』、1995年に『繭』で受賞している。ディトマー賞長編部門では、1993年に『宇宙消失』、1995年に『順列都市』で受賞している。2000年にも『Teranesia 』で長編部門を受賞したが、イーガン自身がこの受賞を辞退している[10]。
アメリカでは、1995年に『順列都市』でジョン・W・キャンベル記念賞を受賞している。また、1999年に『祈りの海』でローカス賞中長編部門を、『プランク・ダイブ』で2000年に『ボーダー・ガード』でローカス賞中編部門を受賞している。
日本では、2001年に『祈りの海』[11]、2002年に『しあわせの理由』[11]、2003年に『ルミナス』[11]、2010年に『暗黒整数』[12] 、2020年に『不気味の谷』[13]で星雲賞海外短編部門を、2005年に『万物理論』[14] 、2006年に『ディアスポラ』[15]で星雲賞海外長編部門を受賞している。
Axiomatic (1995年)
Our Lady of Chernobyl (1995年)
Luminous (1998年)
Dark Integers and Other Stories (2008年)
Crystal Nights and Other Stories (2009年)
Oceanic (2009年)
The Best of Greg Egan (2019年)
Instantiation (2020年)