サッカーアンドラ代表 (サッカーアンドラだいひょう、カタルーニャ語 : Selecció de futbol d'Andorra )は、アンドラサッカー連盟 (Federació Andorrana de Futbol)によって編成されるアンドラ公国 のサッカー のナショナルチームである。
概要
ジブラルタル (人口2.8万人、面積6.5 km2 )、サンマリノ (人口3.0万人、面積61km2 )、リヒテンシュタイン (人口3.4万人、面積160km2 )、フェロー諸島 (人口4.8万人、面積1400km2 )に続いて、欧州サッカー連盟 (UEFA)加盟国(または地域)の中で5番目に小さな国である[ 1] 。
アンドラは独立国家としての歴史が浅く、人口(7万人)や面積(467 km2 )の観点からも人材は限られている。また、国家の周囲をピレネー山脈 に囲まれていて平地が少ないために施設の整備が進んでいない。アンドラン・プリメーラ・ディビシオ のレベルは低く、隣国スペインのリーガ・エスパニョーラ に参加するFCアンドラ などのクラブもある。また、代表選手の多くはスペインでプレーしており、テルセーラ・ディビシオン (4部相当)以下のクラブに所属していることが多い。代表選手の多くがアマチュア選手である。
歴史
1990年代
代表発足とFIFA/UEFA加盟
アンドラ代表としての初試合は1982年だが、1994年にアンドラサッカー協会が設立され[ 2] 、1995年に国内リーグが発足した。1996年に国際サッカー連盟 (FIFA)および欧州サッカー連盟 (UEFA)に加盟[ 2] [ 3] 。初の国際試合は1996年のエストニア との親善試合であるが、この試合には1-6で大敗した[ 5] 。
UEFA EURO 2000予選
FIFAによって承認された初めての試合は、1998年9月5日のUEFA EURO 2000予選 ・アルメニア 戦であり、この試合でヘスス・ルセンドが公式戦初得点を挙げた。同予選で初めて国際大会の予選に参加し、それ以来UEFA欧州選手権 予選やFIFAワールドカップ 予選に出場し続けている。1999年にスペインから迎えられたダビド・ロドリゴ 監督は在任中に一貫して4-5-1システムを用い、若い人材の育成と土台の強化に努めた。同予選は10戦全敗に終わったが[ 6] 、特にアウェーでは苦戦し、どの試合でも3失点以上を喫した[ 6] 。予選を通じての得点は3点であり、このうちの2点はPKによるものであった[ 6] 。また、2点はアウェーで記録した[ 6] 。28失点を喫し[ 6] 、ロシア とのアウェーゲームでは1-6の大敗を喫した[ 6] 。
2000年代
2002 FIFAワールドカップ・予選
初めて参加したFIFAワールドカップ 予選は2002 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 であり、キプロス 、エストニア、アイルランド共和国 、オランダ 、ポルトガル と同組となった[ 7] 。初戦のエストニア戦を0-1で落とし、キプロスにも2-3で敗れたが、FIFAワールドカップ予選における初得点を挙げた[ 7] 。アウェーでのエストニア戦には1-2で敗れ[ 7] 、全敗で日程を終了した。アウェーでの得点はアイルランド戦(1-3)での1点のみであり[ 7] 、スペイン・リェイダ の中立地で行われたポルトガル戦では同予選最悪の6点差(1-7)での敗北を喫した[ 7] 。10試合で勝ち点をひとつも得られず、36失点を喫した[ 7] 。
UEFA EURO 2004予選
UEFA EURO 2004予選 ではアウェーでのブルガリア 戦(1-2)で唯一の得点を挙げた[ 8] 。0-3で敗れたブルガリア戦・クロアチア 戦・ベルギー 戦、0-2で敗れたエストニア戦(ホーム&アウェー)・クロアチア戦、0-1で敗れたベルギー戦と、以前より僅差での敗戦が多くなったが[ 8] 、全ての試合に敗れて勝ち点0に終わった。
2006 FIFAワールドカップ・予選
2006 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 では過去の大会に比べ好成績を残した。2004年10月13日に行われたマケドニア 戦では、スペインのセグンダ・ディビシオン (2部)のクラブでプレーするマルク・ベルナウス がロングスローからシュートを決め、1-0で公式戦初勝利を挙げた。アンドラ・ラ・ベリャで行われたこの試合の観客はわずか200人であった[ 9] 。この試合後、敵将のドラギ・カナトラロフスキ 監督は辞任し、「恥ずべき結果であり、屈辱だ」と試合を振り返った[ 10] 。アウェーでのマケドニア戦とホームでのフィンランド 戦をスコアレスドローで終え[ 11] 、勝ち点を5(1勝2分9敗)とした。同予選はアンドラが勝ち点を挙げた唯一の国際大会である[ 12] 。
UEFA EURO 2008予選
UEFA EURO 2008予選 ではロシア やイングランドなどと同じ組に入ったが、最終戦のロシア戦に0-1で敗れたことにより、ロシアはイングランドを上回ってUEFA EURO 2008 本大会出場を決めた[ 12] 。同予選最大得点差での敗戦はホームでのクロアチア戦(0-7)であり、アンドラ代表のUEFA主催大会での最大得点差での敗戦にもなった[ 13] 。予選12試合で2得点42失点に終わり、得失点差マイナス40は公式大会の予選に置いてアンドラ代表最悪の数字となった[ 12] 。
2010 FIFAワールドカップ・予選
2010 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 は10戦全敗に終わった[ 14] 。3得点39失点の成績で、アウェーでのイングランド戦(0-6)にはグループ内最大の点差で敗れた[ 14] 。2010年2月にロドリゴ監督がアンドラサッカー協会の強化部長に退き、代表元キャプテンのコルド・アルバレス・デ・エウラーテ が新監督に就任した。
2010年代
UEFA EURO 2012予選
UEFA EURO 2012予選 も2010 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選と似たような結果に終わった。全10試合に敗れ、1得点25失点の成績だった。しかし、スロバキア 戦にはホーム&アウェーともに0-1と善戦し、アイルランド からは1点を奪った[ 15] 。
2014 FIFAワールドカップ・予選
2014 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 ではオランダ、トルコ、ハンガリー、ルーマニア、エストニアと同組となったが、10戦全敗で勝ち点0、無得点30失点に終わった。ホームでのハンガリー戦、アウェーでのトルコ戦には0-5で敗れたが、アンドラに大勝したハンガリーはグループ首位のオランダに1-8で敗れている。この予選で無得点に終わった国はアンドラのみだが、得失点差のワースト記録はグループHのサンマリノ(得失点差53、1得点54失点)に譲った。もっとも多くの観客を集めたのはオランダ戦とルーマニア戦(1,100人)だが、エストニア戦の観客数は723人にとどまり、エストニア戦はこのヨーロッパ予選全体の最低観客数となった。
UEFA EURO 2016予選
UEFA EURO 2016予選 は、ベルギー、ウェールズ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、キプロス、イスラエルと同じグループBに入った。2014年9月9日、初戦のウェールズ戦でPKにより先制したが、後半2得点を奪われ逆転負けとなった。同年10月13日、第3戦のイスラエル戦でも前半PKで同点に追いついたが、結局1-4で敗れた。その後キプロス、ベルギー相手にも1点ずつを記録したが、10試合であげた4得点のうちPKが3得点(すべてイルデフォンス・リマ が得点)、相手のオウンゴールが1得点という内容で、10戦全敗の最下位で予選敗退となった。
2018 FIFAワールドカップ・予選
2018 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 はアンドラサッカーにとって歴史的な結果をもたらした。2017年 6月9日 、UEFA EURO 2016 でベスト16にまで進出したハンガリーを1-0で撃破。実に代表戦では86試合ぶり、FIFAワールドカップ予選では2006年大会ヨーロッパ予選(2004年10月13日のマケドニア戦)以来の勝利を収めた。試合終了の瞬間、選手たち喜びを爆発させ、涙を流し崩れおちる者もいた。だがグループB での10試合で勝利はこの1試合だけ、通算では1勝1分け8敗の最下位に終わった。
UEFAネーションズリーグ2018-19
この年から新たに始まった国際大会UEFAネーションズリーグ2018-19 ではジョージア、ラトビア、カザフスタンとともに最下層であるリーグDのグループ1に入った。初戦のラトビア戦を0-0の引き分けに持ち込み初勝ち点、続く2戦目のカザフスタン戦で大会初ゴールを挙げるなどしたものの最終成績は4分2敗の最下位に終わり初勝利を挙げることはできなかった。
UEFA EURO 2020予選
UEFA EURO 2020予選 は、フランス、トルコ、アイスランド、アルバニア、モルドバと同じグループHに入った。2019年 10月12日 、第7戦であるモルドバ戦に1-0で勝利し、1998年に行われた最初の公式戦であるアルメニア戦(UEFA EURO 2000予選)から続くEURO予選における連敗記録(56連敗)が57試合目にして遂にストップした[ 16] 。第9戦のアルバニア戦では2-2で引き分け、久しぶりの複数得点を記録した。最終的に1勝1分け8敗となりグループHの5位(全6チーム)に終わった。EURO予選での勝ち点獲得は今回が初であり、最下位を免れたのも初であった。
2020年代
2022 FIFAワールドカップ・予選
2022 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 ではグループステージの抽選時にポット5に入り6チームのグループIに組み分けされたため、アンドラよりも世界ランクが下のサンマリノと同組となった[ 17] 。結果はサンマリノ以外には8戦全敗に終わったものの、対サンマリノでは第4戦は2-0、第8戦では3-0と2試合とも無失点で勝利した。ワールドカップ欧州予選での複数勝利は初であり、過去最高の成績となった。
評価
アンドラに敗れたり、苦戦した国は、サポーターなどから強い批判にさらされることがある。2007年3月にイングランド とアンドラが対戦した際には、イングランドが3-0で勝利したにもかかわらず、イングランドのスティーヴ・マクラーレン 監督は自国サポーターからブーイングを受けた。マクラーレン監督は試合後の会見での質問をわずか2分で打ち切り、「記者諸君、君らは書きたいことを何でも書くことができる。私は言うのはこれだけだからだ。ご清聴ありがとう」[ 18] と述べて席を立った。2011年9月には、FIFAランキング で最下位(タイ)の203位まで落ち込んだ[ 19] [ 20] 。FIFAおよびUEFAに加盟した1996年から2011年までのFIFAランキングの平均は163位である[ 20] 。
スタジアム
アンドラ代表のホームスタジアムであるエスタディ・コムナル・ダンドラ・ラ・ベリャ
アンドラ代表はホームゲームをサン・ジュリアー・ダ・ロリア教区 のエスタディ・コムナル・ダンドラ・ラ・ベリャ で行う。FCアンドラ 、UEサン・ジュリア 、FCランヘルス 、FCサンタ・コロマ 、FCルシタノス のホームスタジアムでもあるコムナル・ダンドラ・ラ・ベリャ は1,800人を収容する[ 21] 。アンドラ代表はアンドラ国外でホームゲームを行うこともある。例えば、UEFA EURO 2000予選 、UEFA EURO 2008予選 、2010 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 におけるイングランド 戦やフランス 戦などは多数の観客が見込まれたため、1997年から2009年までRCDエスパニョール がホームスタジアムとしていた、スペイン・バルセロナ にあるエスタディ・オリンピック・リュイス・コンパニス を使用した[ 22] [ 23] 。現在はアンドラ・ラ・ベリャ にあるエスタディ・ナシオナル を使用している。
成績
FIFAワールドカップの成績
FIFAワールドカップ
FIFAワールドカップ・予選
開催年
結果
試合
勝利
引分
敗戦
得点
失点
試合
勝利
引分
敗戦
得点
失点
2002
予選敗退
10
0
0
10
5
36
2006
12
1
2
9
4
34
2010
10
0
0
10
3
39
2014
10
0
0
10
0
30
2018
10
1
1
8
2
23
2022
10
2
0
8
8
24
合計
0/22
62
4
3
55
22
186
UEFA欧州選手権の成績
UEFA欧州選手権
UEFA欧州選手権・予選
開催年
結果
試合
勝利
引分
敗戦
得点
失点
試合
勝利
引分
敗戦
得点
失点
2000
予選敗退
10
0
0
10
3
28
2004
8
0
0
8
1
18
2008
12
0
0
12
2
42
2012
10
0
0
10
1
25
2016
10
0
0
10
4
36
2020
10
1
1
8
3
20
2024
10
0
2
8
3
20
合計
0/16
70
1
3
66
17
189
記録
得点一覧
アンドラ代表が国際大会(の予選)で得点することは稀であるため、以下に全得点を示す。2014 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 では無得点に終わった。
国別対戦成績
2012年10月16日時点
相手
試合数
勝利
引分
敗北
得点
失点
点差
勝率
アルバニア
3
1
0
2
2
4
−2
33.33%
アルメニア
8
0
1
7
2
21
−19
0%
アゼルバイジャン
4
0
3
1
1
2
−1
0%
ベルギー
2
0
0
2
0
4
−4
0%
ベラルーシ
4
1
0
3
4
11
−7
25%
ブラジル
1
0
0
3
0
3
−3
0%
ブルガリア
2
0
0
2
1
5
−4
0%
中華人民共和国
1
0
1
0
0
0
0
0%
クロアチア
6
0
0
6
0
24
−24
0%
キプロス
3
0
0
3
2
9
−7
0%
チェコ
2
0
0
2
1
12
−11
0%
イングランド
4
0
0
4
0
16
−16
0%
エストニア
10
0
0
10
5
24
−19
0%
フェロー諸島
1
0
1
0
0
0
0
0%
フィンランド
2
0
1
1
0
3
−3
0%
フランス
3
0
0
3
0
7
−7
0%
ガボン
1
0
0
1
0
2
−2
0%
ハンガリー
1
0
0
1
0
5
−5
0%
アイスランド
4
0
0
4
0
12
−12
0%
イスラエル
2
0
0
2
1
6
−5
0%
カザフスタン
2
0
0
2
1
6
−5
0%
ラトビア
3
0
0
3
1
9
−8
0%
リトアニア
2
0
0
2
1
7
−6
0%
北マケドニア
6
1
1
4
1
9
−8
17%
マルタ
2
0
2
0
2
2
0
0%
モルドバ
1
0
0
1
1
2
−1
0%
オランダ
5
0
0
5
0
19
−19
0%
ポーランド
1
0
0
1
0
4
−4
0%
ポルトガル
3
0
0
3
1
14
−13
0%
アイルランド
4
0
0
4
2
11
−9
0%
ルーマニア
3
0
0
3
1
11
−10
0%
ロシア
5
0
0
5
1
15
−14
0%
スロバキア
2
0
0
2
0
2
−2
0%
スペイン
1
0
0
1
0
4
−4
0%
ウクライナ
4
0
0
4
0
17
−17
0%
通算
108
3
10
95
31
302
−271
2.78%
FIFAランキングの推移
FIFAランキング は過去48ヶ月間の国際Aマッチを対象とする。1993年、1999年、2006年、2018年に算出方法が改定されている。FIFA加盟後の1996年から各年12月のランキングとポイントを掲載している[ 24] 。
1991年
1992年
1993年
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
FIFA非加盟
FIFA非加盟
FIFA非加盟
FIFA非加盟
FIFA非加盟
187位(0pt)
185位(1pt)
171位(7pt)
145位(180pt)
145位(243pt)
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
140位(274pt)
137位(303pt)
147位(294pt)
138位(336pt)
125位(356pt)
164位(76pt)
175位(57pt)
194位(20pt)
202位(3pt)
202位(2pt)
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
2017年
2018年
2019年
2020年
206位(0pt)
204位(11pt)
198位(17pt)
201位(9pt)
201位(6pt)
203位(12pt)
138位(215pt)
133位(1111pt)
135位(1082pt)
151位(1048pt)
2021年
2022年
2023年
155位(1030pt)
153位(1031pt)
164位(998pt)
歴代監督
マヌエル・ミルイールはアンドラ代表の初代監督であり、UEFA EURO 2000予選 の最初の3試合を指揮した。1999年にミルイールが退任し、後任にダビド・ロドリゴ 監督が就任。3月27日にホームで行われた同予選・アイスランド 戦(0-2)が初采配試合となった。2006年9月に行われたイスラエル 戦において、ロドリゴ監督はイスラエル代表のキャプテンであるヨッシ・ベナユン に対して「殺人国家」(nation of killers)という表現を用いてベナユンを脅迫したとして、多くの人々の怒りを買った[ 25] 。ロドリゴ監督は2010年まで約11年に渡ってアンドラ代表を指揮し、2010年2月にコルド・アルバレス が後任監督に就任した[ 26] 。
現在のメンバー
GK
DF
MF
FW
歴代選手
2006年1月、アンドラサッカー協会はUEFAジュビリーアウォーズ (過去50年の国内最高選手)にコルド・アルバレス (1998年-2009年、GK)を選出した[ 27] 。2009年6月にロンドンのウェンブリー・スタジアム で行われた2010 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 ・イングランド 戦で、ロスタイムにコルドが途中交代した際にはイングランドのサポーターからスタンディングオベーションが贈られた[ 28] 。観客たちはさらなる失点を防いだコルドを称賛し、彼はイングランド戦後にアンドラ代表から引退した[ 28] 。イルデフォンス・リマ・ソラ はアンドラ代表で10得点以上を挙げている唯一の選手であり[ 29] 、137試合11得点のリマは最多出場記録と最多得点記録を保持している[ 30] 。
GK
DF
MF
FW
歴代記録
2020年11月18日現在
通算出場数ランキング
通算得点数ランキング
脚注
参考文献
外部リンク