1860年代に撮影された写真
トーマス・カーライル (Thomas Carlyle , 1795年 12月4日 - 1881年 2月5日 [ 1] )は、19世紀 イギリス の歴史家 ・評論家 。
スコットランド のダンフリーズ・アンド・ガロウェイ 州のエクルフェカン (英語版 ) 出身。
代表作には、『英雄崇拝論 (英語版 ) 』、『フランス革命 史』、『オリバー・クロムウェル 』、『衣装哲学 』、『過去と現在』などがある。ドイツ文学 を研究したことでも知られ、ゲーテ との往復書簡がある。〈全集 The works of Thomas Carlyle 〉は30巻に達している。
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1865年にはエディンバラ大学 の学長に任命され、1868年まで務めた。
近代日本への影響
著作は明治 以来多数、日本語訳されて来たが、今日では復刊以外での新本購入は困難である。
『英雄崇拝論』に代表されるように、「世界の歴史は英雄によって作られる」と主張したことで知られるが、彼の言う「英雄」とは歴史に影響を与えた神、預言者 、詩人、僧侶、文人、帝王 などを指す。
日本語文献では、カーライル没後間もない明治20年代半ば(1880年代後半)に、民友社 で平田久『カーライル』が、丸善 で石田羊一郎ほか訳『英雄崇拝論』が出版された。同書は詩人土井晩翠 訳が、春陽堂 で1898年 (明治31年)に刊行している。大正 期(1912年 - 1926年)には戸川秋骨 訳 『オリヴア・クロンウエル』(実業之日本社 )が、大正末期に、春秋社 で柳田泉 訳『カーライル全集(全9巻)』が出され、昭和 20年代(1945年 - 1954年)に一部再刊された。(後者の)同時期に神吉三郎 訳『ゲーテ論』(育生社)が出されている。
山路愛山 、内村鑑三 ・新渡戸稲造 およびその門下生たち の矢内原忠雄 ・畔上賢造 等に多大な影響を与えた。例えば内村鑑三は「後世への最大遺物」において、「勇ましい高尚なる生涯」が「後世への最大遺物」になる例として、カーライルがハリエット・テイラー (英語版 ) (友人ジョン・スチュアート・ミル の晩年の内妻)により誤って燃やされてしまった「フランス革命史」の膨大な完成原稿を書き直したエピソードを挙げ、「私はカーライルという人については全体非常に尊敬を表しております」としている。
作家夏目漱石 はロンドン 留学時に記念館を訪れ、帰国後に紀行文 「カーライル博物館」を書いている。初期作品「吾輩は猫である 」に、登場人物がカーライルと同じ「胃弱」であることを自慢して友人にからかわれる描写がある。
イギリスなどヨーロッパ では20世紀 以降寧ろ時代遅れの印象が強まり反ユダヤ主義 的言動はナチス への影響も含めて批判の的となっている一方、ボルヘス はチェスタトン などと並んで優れた文学者の一人としてカーライルを挙げている[ 2] 。
格言
カーライルは、大英帝国(ヴィクトリア朝 )時代を代表する著述家・言論人として様々な金言がある。
「この国民にしてこの政府あり」はその一つ。元は19世紀イギリスの修道士の発言「国民は、自分達と同程度の政府しか持てない」。「杓子定規なお役所仕事」をレッドテープ と呼ぶが、これはカーライルが広めたとされる。「雄弁は銀、沈黙は金 」はカーライルの言葉ではなく、カーライルの『衣装哲学』第三章目によると、これは彼がスイスで見たドイツ語の碑文である[ 3] 。
著作
邦訳
『カーライル選集』(日本教文社 (全6巻)、1962-63年)
1巻「衣服の哲学」 宇山直亮 訳
2巻「英雄と英雄崇拝」 入江勇起男 訳
3巻「過去と現在」 上田和夫 訳
4巻「妻と友へ」 入江勇起男訳
5巻「文学と人生」 高村新一 訳
6巻「歴史の生命」 宇山直亮訳 - 各・オンデマンド版、2014-15年
多田貞三 訳 『追想 ジェーン・ウェルシ・カーライル』 山口書店、1986年
石田憲次 ・石田英二 訳 『過去と現在』 岩波文庫(上下)、1941年
石田憲次訳 『衣服哲学』 岩波文庫 1946年、復刊1994年、2010年
老田三郎 訳 『英雄崇拜論』 岩波文庫 1949年、復刊2003年
山崎八郎 訳 『ゲーテ=カーライル往復書簡』 岩波文庫 1951年、復刊1993年
谷崎隆昭 訳 『衣服哲学』 山口書店 1983年
谷崎隆昭訳 『過去と現在』 山口書店 1984年
脚注・出典
^ Thomas Carlyle British essayist and historian Encyclopædia Britannica
^ 訳文は『序文つき序文集』(国書刊行会 、2001年)に所収。
^ “Sartor Resartus by Thomas Carlyle. ”. www.gutenberg.org . 2020年1月13日 閲覧。
関連文献
イアン・キャンベル『トマス・カーライル』 多田貞三訳、成美堂、1981年
A.ローレンス・ルケーン 『カーライル』 樋口欣三 訳、教文館 「コンパクト評伝シリーズ」、1995年
向井清 『衣装哲学の形成 カーライル初期の研究』 山口書店 1987年
向井清 『トマス・カーライル研究 文学・宗教・歴史』 大阪教育図書、2002年
向井清 『カーライルの人生と思想』 大阪教育図書、2005年
『古典的シェイクスピア 論叢 ベン・ジョンソン からカーライルまで』 川地美子編訳、みすず書房 、1994年
外部リンク