フッケンヒバ [ 7] [ 8] (福建柏[ 7] [ 12] 、学名 : Chamaecyparis hodginsii )は、裸子植物 マツ綱 のヒノキ科 ヒノキ属 に分類される常緑 高木 になる針葉樹 の1種である。林業分野ではラオスヒノキ ともよばれる[ 9] [ 10] [ 11] 。ふつう独自の属(フッケンヒバ属 Fokienia )に分類され Fokienia hodginsii の学名が充てられていたが、分子系統学 的研究からヒノキ属に含まれることが示唆され、ヒノキ属に分類することが提唱されている。材 には芳香があり、葉 は鱗片状、平面的に分枝する小枝を覆う。"花期"は春、球果 は翌年の秋に熟す。中国南部からラオス 、ベトナム に分布する。材は建築 などに、精油 は化粧品 や医薬品 に利用される。
特徴
常緑 高木 になる針葉樹 であり、幹は直立し、大きなものは高さ25–35メートル (m)、幹の胸高直径 2 m になる[ 5] (図1, 2a, b)。樹冠 は円錐形[ 5] (図1, 2a, b)。樹皮 は灰褐色から紫褐色、平滑または不規則に縦に割れ、芳香がある[ 5] [ 13] (下図2c)。小枝は平面的に分枝し、十字対生 する葉で覆われる[ 5] [ 14] (下記参照)。
葉 は鱗片状、十字対生 して扁平に枝を覆うが、成木では節が短縮して葉がほとんど4輪生する[ 5] [ 14] 。成木では、葉はアスナロ に似た鱗片状で長さ2–7ミリメートル (mm)、鈍頭、側葉は卵形で背軸側に白色の気孔帯があり、背腹の葉は倒披針形で先端は三角形[ 5] [ 13] [ 14] [ 7] (下図3)。幼木の葉は大きく、長さ約 8 mm、トゲ状、向軸面 が青緑色[ 5] [ 13] 。
雌雄同株 、"花期"は3–4月[ 14] [ 13] 。雄球花 [ 注 2] は黄緑色、楕円形、長さ 4-5 mm、5–6対の小胞子葉からなり、各小胞子葉には3個の花粉嚢が付随する[ 14] [ 13] 。雌球花 [ 注 3] も小枝先端に単生し、十字対生する5–8対の果鱗 からなり、各果鱗には2個の胚珠 が付随する[ 5] [ 14] 。球果は2年目の10–11月に熟し、木質、亜球形、1.5-2.5 × 1.2-2.2 cm、果鱗先端は盾状で中央に突起がある[ 5] [ 14] [ 13] [ 7] 。種子 は長さ 4–5 mm、3–4隆条があり、両面に樹脂塊が存在、翼は不等であり、大きな翼は約 5 mm、小さな翼は 1.5 mm 以下[ 5] [ 13] 。
精油成分として、幹 や根 はネロリドール 、ムウロロール 、α-カジノール を、葉 はα-ピネン 、リモネン 、球果 は、α-ピネン、ミルセン を多く含む[ 18] 。
分布
中国 南部(福建省 、広東省 、広西チワン族自治区 、貴州省 、湖南省 、江西省 、四川省 、雲南省 、浙江省 )からラオス 、ベトナム の亜熱帯域に分布する[ 5] [ 6] [ 13] 。タイプ産地は雲南省のベトナム国境近く[ 5] 。降水量が多い標高 100–1,800メートルの山地に生育し、沢沿いや林縁などに見られる[ 5] [ 13] 。耐陰性は低い[ 5] 。Dacrydium elatum (マキ科 )や Pinus dalatensis (マツ科 )、モクレン科 、クスノキ科 、ブナ科 の樹木と混生する[ 5] 。
人間との関わり
材 は軽く上質、木目 は通直、芳香がある[ 5] 。建築 、家具 、工芸品 などに利用され、古くは棺 に使われた[ 5] 。また、高火力の木炭 原料とされる[ 5] 。根 の材から抽出される精油 は、化粧品 や医薬品 に利用される[ 5] 。
分類
21世紀初頭までフッケンヒバは独自の属(フッケンヒバ属 Fokienia )に分類され、2023年現在でも Fokienia hodginsii の学名が充てられていることがある[ 6] [ 8] 。しかし、分子系統学 的研究から、本種はヒノキ属 (Chamaecyparis )の中に含まれることが示唆されており、ヒノキ属に分類すること(Chamaecyparis hodginsii )が提唱されている[ 5] 。
学名 の種小名 である hodginsii は、発見者である A. E. W. Hodgins 船長の名に由来する[ 5] 。
脚注
注釈
出典
^ a b Thomas, P. & Yang, Y. (2013年). “Chamaecyparis hodginsii ”. The IUCN Red List of Threatened Species 2013 . IUCN. 2024年2月11日 閲覧。
^ 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編), ed (2015). “種子植物の系統関係図と全5巻の構成”. 改訂新版 日本の野生植物 1 . 平凡社. p. 18. ISBN 978-4582535310
^ 米倉浩司・邑田仁 (2013). 維管束植物分類表 . 北隆館. p. 44. ISBN 978-4832609754
^ 大場秀章 (2009). 植物分類表 . アボック社. p. 18. ISBN 978-4900358614
^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v “Chamaecyparis hodginsii ”. The Gymnosperm Database. 2024年2月11日 閲覧。
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^ a b c d e 大澤毅守 (1997). “クロベ”. 週刊朝日百科 植物の世界 11 . pp. 186–189. ISBN 9784023800106
^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Fokienia hodginsii (Dunn) A.Henry et H.H.Thomas ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList) . 2022年2月11日 閲覧。
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^ a b 圓谷浩之 (2011). “ラオス産木炭, 特にマイテュー白炭について”. 海外の森林と林業 80 : 34–40. doi :10.32205/jjjiff.80.0_34 .
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^ 堀田満 (1989). “フッケンヒバ属”. In 堀田満ほか. 世界有用植物事典 . 平凡社. p. 463. ISBN 9784582115055
^ a b c d e f g h i Flora of China Editorial Committee (2010年). “Fokienia hodginsii ”. Flora of China . Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2024年2月11日 閲覧。
^ a b c d e f g Flora of China Editorial Committee (2010年). “Fokienia ”. Flora of China . Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2024年2月11日 閲覧。
^ a b 長谷部光泰 (2020). 陸上植物の形態と進化 . 裳華房. p. 205. ISBN 978-4785358716
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^ アーネスト M. ギフォード 、エイドリアンス S. フォスター 『維管束植物の形態と進化 原著第3版』長谷部光泰 、鈴木武 、植田邦彦 監訳、文一総合出版 、2002年4月10日、332–484頁。ISBN 4-8299-2160-9 。
^ Nguyen, A. D., Nguyen, T. T. N. & Tran, H. T. (2018). “Chemical composition of essential oils of Fokienia hodginsii (Dunn)”. European Journal of Technical and Natural Sciences 4 : 64–68.
関連項目
外部リンク
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