プロジェクトJAPAN『プロジェクトJAPAN』(プロジェクトジャパン)は、日本放送協会(NHK)が2009年(平成21年)度から3年間の中期経営計画において実施した大型プロジェクトである。 概要2009年(平成21年)の日本は横浜港開港から150年、2010年は韓国併合から100年、第二次世界大戦の終戦から65年、2011年は太平洋戦争開戦から70年、サンフランシスコ講和条約締結から60年が経つ節目の年にそれぞれあたる。そこでNHKは日本の歴史を変えたこれら一連の出来事を振り返り今後の日本のあり方を考えようと、テレビジョン放送が完全にデジタル化される2011年度までの3か年中期計画期間中における大型プロジェクトとしてこの企画を立ち上げた[1][2][3]。 『NHKスペシャル』 『ETV特集』 『坂の上の雲』などの番組や各種イベントが展開された。 『NHKスペシャル シリーズ 「JAPANデビュー」』第1回放送をめぐっては、番組出演者や台湾人並びに視聴者などから放送内容に問題があったとして1万人を超える集団訴訟が起こされたが、原告側の逆転敗訴で幕を閉じた(後述)。 基軸テーマ・キーワード
各番組の内容放送済みの番組を除き、タイトルは仮のものである。 プロジェクトJAPAN プロローグ「戦争と平和の150年」
NHKスペシャル シリーズ 「JAPANデビュー」
世界と出会った日本人
ETV特集 シリーズ「日本と朝鮮半島2千年」→「ETV特集 シリーズ「日本と朝鮮半島2千年」」を参照
ETV特集 日本は世界でどう生きるのかシリーズ 未来をつくる君たちへ
スペシャルドラマ『坂の上の雲』→「坂の上の雲 (テレビドラマ)」を参照
ドキュメンタリー 坂の上の雲の時代
NHKスペシャル「シリーズ 日本と朝鮮半島」『NHKスペシャル』内の放送区分は「歴史・紀行」[4]。『ETV特集』の「日本と朝鮮半島2千年」から引き継ぎ[5]、近代史における日本と朝鮮の国際関係を取り扱う。
NHKスペシャル 新企画2011年4月から放送予定。 NHK戦争証言アーカイブスインターネット上で公開されるWebサービス。全国のNHKの放送局が保存している元兵士や市民らの証言動画などを(権利関係の処理作業や不正コピー防止対策などを行った上で)一元化して公開する。2009年8月13日から10月12日まで証言者約70人、一部コンテンツの開示を行った「トライアルサイト」として公開。期間中の閲覧は約70万ページビューを記録した[6]。 2010年8月2日に正式サイト[7]がオープン。オープン時には約310人分の戦争証言を公開し(時間はそれぞれ異なるが、一人あたり10分から1時間程度としている)、見出しを付けたりキーワードによる検索などを行うことにより閲覧者が見やすいような工夫を施している。最終的には戦争証言は1,000人規模の収録を目指すとしている[6]。 他にも『ドキュメント太平洋戦争』(全6回)、『証言記録 兵士たちの戦争』(全29回)、『証言記録 市民たちの戦争』(全9回)[8]、当時のニュース映画の『日本ニュース』(1940年 - 1945年に公開された264本中254本)、玉音放送などの音声資料を無料で視聴できるようになっている[6]。 スタッフ
「JAPANデビュー」第1回放送をめぐる騒動・訴訟抗議とデモの発生日本の台湾統治をテーマとして2009年(平成21年)4月5日に放送された、シリーズ『JAPANデビュー』第1回「アジアの“一等国”」をめぐり、放送後「日本統治時代が悪と一方的に描かれており、内容が偏向している」、「日本の台湾統治を批判するため、(台湾人の)証言をねじ曲げている」、「番組にはやらせや、事実の歪曲・捏造があり、放送法に違反している」[9]、「台湾の人の心と日台関係を傷つけた」[10]などとして日台(中華民国)双方から抗議や批判が続出した。NHKには2009年4、5月だけで4,344件の意見が寄せられた[11]。これは平成20年度NHKスペシャルの平均反響数250件を上回るものであった[12]。 抗議やデモに対するNHKなどの反応これらの抗議に対して、NHKは放送総局長や会長が記者会見で説明、また番組ウェブサイト上でも2回にわたり説明文を掲載、番組の正当性を主張した。 日本共産党の山下芳生議員は参院総務委員会で「非常によい番組だった。(中略)親日的といわれる台湾の人々の心の奥底にある複雑な思いが伝わった。歴史を直視し、互いに共有し、反省すべきは反省もしてこそ相互理解により深い友好関係が構築できると感じた」と感想を述べた[13]。番組批判に批判的な立場からは、市民団体「開かれたNHKをめざす全国連絡会」が放送内容に疑問の声を挙げた小林委員を批判し、議連の発足や訴訟、デモなどによって自主自立の姿勢が損なわれないようにと求める意見書を7月7日NHKに提出[14][15][16]。同日、日本ジャーナリスト会議も番組批判について「表現の自由そのものに対する恫喝と干渉に当る」などと主張した[16]。西日本新聞の笠島は番組批判について「嫌な感じなのは元首相を含む国会議員が絡んでいること」などと批判。内容については「『台湾は親日的』との固定観念が問い直され、当時の『同化政策』がチベットやウイグルへの施策と通じる面もあるように感じられた」などと評した[17]。 第1審2009年6月25日には台湾人を含む8389名が、東京地方裁判所に対して、NHKの放送内容には、放送法の定める公平な報道に違反する、事実と異なる偏向、やらせや事実の歪曲・捏造などがあり、精神的損害を受けたとして、NHKに対し原告1人あたり1万円の損害賠償を求める訴えを起こした[18][19][20][21]。番組に出演した台湾人は反日的であるように宣伝されたと番組への批判の声を上げ、偏向歪曲が窺えるとして抗議と訂正を求める文書をNHKへ送付。またパイワン族は、尊厳は傷つけられたとして同番組を批判し、辱めを受けたとする質問状をNHKに対して送付、原告として訴訟に加わった。この訴訟は原告が1万人を越えている[22]。 2012年12月14日、東京地裁は「番組の編集はNHKに委ねられており、恣意的な編集はなかった」などとして、請求を棄却する判決を下した。原告側の台湾人の「NHKに取材を受けたが発言をねじ曲げられ、期待と違う内容が放送された」に対し、判決では「番組内容への期待は法的に保護されない」とし、また、「祖先を動物扱いされた」とする台湾人の主張に対しては「歴史的事実として紹介しただけで、原告の名誉を傷つけたとはいえない」と判断し、またNHKは公平な放送をする義務があると訴えた視聴者らの主張についても「視聴者ら個人に対する義務は負わない」とした[23]。 第2審第1審後、原告のうち42人がNHKに慰謝料など710万円を求め東京高等裁判所に控訴した。2013年11月28日、東京高裁は原告のうち「番組で祖先を動物扱いされた」と主張した女性1人について、番組で使われた「人間動物園」という言葉が台湾の先住民の子孫の名誉を毀損したとして、NHKに対して女性に100万円を支払うように命じた。判決では「人間動物園」は「当時は使われておらず、新しく使われ始めた言葉」と指摘。「一部の学者が唱える言葉に飛びつき、人種差別的な意味合いに配慮せずに番組で何度も言及した」と、放送は民族差別であると批判した。その一方で、他の原告の主張については、「日本に好意的な台湾の人やパイワン族の人に不快な気持ちを生じさせたと推測できる」としながらも、視聴者らの具体的な権利を侵害したとまでは言えないとして、訴えを棄却した[24]。訴訟の中心人物として活動した華阿財は、高裁判決を「不満だが、受け入れる」とコメントした[25]。 脚注
関連項目外部リンク
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