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マダラハクテンヒラタエイ

マダラハクテンヒラタエイ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 軟骨魚綱 Chondrichthyes
亜綱 : 板鰓亜綱 Elasmobranchii
: トビエイ目 Myliobatiformes
: ヒラタエイ科 Urolophidae
: ヒラタエイ属 Urolophus
: マダラハクテンヒラタエイ U.paucimaculatus
学名
Urolophus paucimaculatus
Dixon, 1969
和名
マダラハクテンヒラタエイ[2]
英名
Sparsely-spotted stingaree
white-spotted stingaree
Dixon's stingaree
分布域[3]

マダラハクテンヒラタエイ (学名:Urolophus paucimaculatus)は、ヒラタエイ属に分類されるエイの一種。

解説

オーストラリア南部の海岸でよく見られる。水深150 mまでの砂泥底や藻場に生息する底魚で、分布域の北部では生息水深が深い傾向にある[4]。体長は最大57cmに達し、体盤は幅広の菱形。背面は灰色で、目の間にV字型の模様がある。分布域南部の個体には白い斑点がある。鼻孔の間には独特の形をした鼻褶がある。尾の両側には皮褶があり、背鰭は無く、葉形の尾鰭がある。日中はあまり活動的でなく、主に甲殻類を、その他多毛類底生生物を捕食する。無胎盤性の胎生で、胎仔は母親の子宮分泌液によって栄養を与えられる。東部と西部の集団では生活史が異なり、東部では妊娠期間が12ヶ月で産仔数が最大6であるのに対し、西部では妊娠期間 が10ヶ月で、産仔数は1か2である。また、西部の個体の方が寿命が長い。尾の毒棘は人に危害を加える可能性があり、刺激されると攻撃的に反応する。生息域の大部分では漁業活動が少ない為、国際自然保護連合(IUCN)によって低危険種に指定されている。

分類・名称

ミュージアム・ビクトリアのジョーン・ディクソンによって1969年に『The Victorian Naturalist』の中で記載された。種小名はラテン語で「少ない斑点」という意味。模式標本ビクトリア州バス海峡から採集された[5]。国際自然保護連合によると、東部と西部の集団は生活史が異なり、分類学的調査が必要である[1]

分布と生息地

砂地や藻場に生息する。

オーストラリア南部沖に最も豊富に生息するエイの1つであり、ニューサウスウェールズ州から西オーストラリア州まで、タスマニア州を含む広範囲に分布している[1]。気候変動の影響で、過去数十年で分布域は南に拡大した[1][6]ポートフィリップ湾では漁業によって他の種が減少した為、1970年から1991年にかけて本種の個体数が増加した[7]。浅い入江から水深150 m以上の大陸棚まで、様々な環境の砂底や藻場に生息する。グレートオーストラリア湾など、北部の個体は水深80 - 100 mより深い場所で見つかる傾向がある。対して南のビクトリア州やタスマニア州沖の個体は、水深30 m以下の場所に多い[1][3]。年齢や性別による生息地の変化の証拠は無い[8]。冬の間に沖合に移動している可能性がある[9]

形態

体盤は横長の菱形で、角は丸い。体盤前縁はほぼ一直線で、吻は分厚く鈍角で、体盤からほとんど突き出ない。目は小さく、すぐ後ろに雫型の噴水孔がある。鼻孔の縁は後方に向かって伸びている。鼻孔の間にはベル型の鼻褶があり、その後縁は細かい房状になっている。同様の形の鼻褶をもつのはKapala stingaree (U. kapalensis)のみである。口は小さく、口底には5個か6個の乳頭突起があり、突起は殆ど先端が二叉している。下顎の外側にはさらに小さな乳頭突起が存在する[3]。歯は小さく、基部がほぼ楕円形で、五角形に並んでいる。鰓孔は短く、5対ある。腹鰭は小さく、丸い[10]。尾の長さは体盤の 77 - 98%である。尾の基部は平らで、先端に向かって細くなり、先端には葉形の尾鰭がある。尾の両側には顕著な皮褶があり、半分程の位置に鋸歯状の尾棘がある。背鰭は無い。皮膚には皮歯が全く無い。体色は背面が一様に明るい灰色で、目の間に暗色の V 字型の模様があり、腹面は白色で、縁は僅かに暗色。分布域南部の個体は、背面に黒く縁取られた白色の斑点が規則的に並ぶ。幼体の尾鰭は黒く、成長とともに明るくなるが、縁は変化しない場合もある。体長は最大57cm[3]

生態

夜行性であり、日中は砂に埋もれて休んでいることが多い[11]。 主に甲殻類を捕食し、食事の80%を占めている。特に端脚類アミエビが多い。多毛類は主要な二次食料源である。軟体動物棘皮動物、小型の硬骨魚類も捕食する。成長に伴い食事の種類は増加する。具体的にはアミ、等脚類、端脚類の割合が低下し、エビ、多毛類、カニの割合が高くなる[8][9]エビスザメに捕食される[12]。本種の寄生虫には多節条虫亜綱Acanthobothrium[13]単生綱Calicotyle urolophiおよびMerizocotyle urolophiが知られている[14][15]

無胎盤性の胎生で、卵黄の栄養を使い果たすと、母親の子宮分泌液によって栄養を供給される。卵巣子宮は右側が機能し、毎年繁殖する。東部の集団では排卵は春または初夏に起こり、胎仔数は1から6で、雌の体が大きいほど多い。妊娠期間は約1年で、仔魚の体長は出生時約15 - 16cm。雄は2年半、体長約28cmで、雌は3年、体長約27cmで性成熟する。寿命は少なくとも雄で8年、雌で9年[1][9]。西部の集団では、初夏から真夏にかけて交尾し、産仔数は1か2。妊娠期間は10ヶ月で、出産は晩春から初夏にかけて行われる。仔魚は出生時、体盤幅13 cm。雄は3年、体盤幅約21 cmで、雌は5年、体盤幅約 22 cmで性成熟する。寿命は最長で14年[1][16]。どちらの集団でも雌の方が大きく、成長も遅い[9][16]

人との関わり

攻撃的であり、危険を感じると毒針を用いて身を守る[17]。食用になるが、市場にはほとんど出回らない[3]。 漁獲圧はそれほど大きくないが、地引網底引網混獲されることがある[4]。混獲されると廃棄され、その後の生存率は高いが、胎仔を流産してしまう事が多い。しかし個体数は安定している為、国際自然保護連合は本種を低危険種としている。政府による保護の恩恵を受けている[1]

出典

  1. ^ a b c d e f g h Kyne, P.M.; Trinnie, F.; White, W.T.; Walker, T.I. (2019). Urolophus paucimaculatus. IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T60102A68649928. doi:10.2305/IUCN.UK.2019-1.RLTS.T60102A68649928.en. https://www.iucnredlist.org/species/60102/68649928 05 February 2024閲覧。. 
  2. ^ 『サメガイドブック 世界のサメ・エイ図鑑』p.226
  3. ^ a b c d e Last, P.R. & J.D. Stevens (2009). Sharks and Rays of Australia (second ed.). Harvard University Press. p. 422–423. ISBN 978-0-674-03411-2 
  4. ^ a b Urolophus paucimaculatus” (英語). fishesofaustralia.net.au. 2024年2月5日閲覧。
  5. ^ Dixon, J. M. (January 1969). “A new species of ray of the genus Urolophus (Elasmobranchii: Urolophidae) from Victoria”. The Victorian Naturalist 86 (1): 11–18. 
  6. ^ Last, P.R.; W.T. White; D.C. Gledhill; A.J. Hobday; R. Brown; G.J. Edgar & G. Pecl (July 23, 2010). “Long-term shifts in abundance and distribution of a temperate fish fauna: a response to climate change and fishing practices”. Global Ecology and Biogeography 20 (published online): 58–72. doi:10.1111/j.1466-8238.2010.00575.x. 
  7. ^ Hobday, D.K., R.A. Officer, and G.D. Parry (1999). “Changes to demersal fish communities in Port Phillip Bay, Australia, over two decades, 1970–91”. Marine and Freshwater Research 50 (5): 397–407. doi:10.1071/mf97088. 
  8. ^ a b Platell, M.E.; I.C. Potter & K.R. Clarke (1998). “Resource partitioning by four species of elasmobranchs (Batoidea: Urolophidae) in coastal waters of temperate Australia”. Marine Biology 131 (4): 719–734. doi:10.1007/s002270050363. 
  9. ^ a b c d Edwards, R.R.C. (1980). “Aspects of the population dynamics and ecology of the white spotted stingaree, Urolophus paucimaculatus Dixon, in Port Phillip Bay, Victoria”. Australian Journal of Marine and Freshwater Research 31 (4): 459–467. doi:10.1071/mf9800459. 
  10. ^ Last, P.R. & L.J.V. Compagno (1999). “Myliobatiformes: Urolophidae”. In Carpenter, K.E. & V.H. Niem. FAO identification guide for fishery purposes: The living marine resources of the Western Central Pacific. Food and Agricultural Organization of the United Nations. pp. 1469–1476. ISBN 92-5-104302-7 
  11. ^ Kuiter, R.H. & R.H. Kuiter (2006). Guide to Sea Fishes of Australia. New Holland. p. 20. ISBN 1-86436-091-7 
  12. ^ Braccini, J.M. (2008). “Feeding ecology of two high-order predators from south-eastern Australia: the coastal broadnose and the deepwater sharpnose sevengill sharks”. Marine Ecology Progress Series 371: 273–284. Bibcode2008MEPS..371..273B. doi:10.3354/meps07684. https://www.int-res.com/articles/meps2008/371/m371p273.pdf. 
  13. ^ Campbell, R.R. & I. Beveridge (2002). “The genus Acanthobothrium (Cestoda : Tetraphyllidea : Onchobothriidae) parasitic in Australian elasmobranch fishes”. Invertebrate Systematics 16 (2): 237–344. doi:10.1071/IT01004. 
  14. ^ Chisholm, L.A.; M. Beverley-Burton & P. Last (1991). “Calicotyle urolophi n. sp. (Monogenea: Monocotylidae) from stingarees, Urolophus spp. (Elasmobranchii: Urolophidae) taken in coastal waters of Southern Australia”. Systematic Parasitology 20: 63–68. doi:10.1007/bf00009712. 
  15. ^ Chisholm, L.A. & I.D. Whittington (January 1999). “A revision of the Merizocotylinae Johnston and Tiegs, 1922 (Monogenea: Monocotylidae) with descriptions of new species of Empruthotrema Johnston and Tiegs, 1922 and Merizocotyle Cerfontaine, 1894”. Journal of Natural History 33 (1): 1–28. doi:10.1080/002229399300452. 
  16. ^ a b White, W.T. & I.C. Potter (2005). “Reproductive biology, size and age compositions and growth of the batoid Urolophus paucimaculatus, including comparisons with other species of the Urolophidae”. Marine and Freshwater Research 56 (1): 101–110. doi:10.1071/mf04225. 
  17. ^ Michael, S.W. (1993). Reef Sharks & Rays of the World. Sea Challengers. p. 92. ISBN 0-930118-18-9 

参考文献

関連項目

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