薄嚢シダ類 (はくのうシダるい、薄囊シダ類、Leptosporangiate ferns )は、大葉シダ植物 に含まれるシダ植物 (シダ類 )のうち、胞子嚢 が単一の細胞から生じ、完成した胞子嚢は1層の細胞層の壁を持つものを指す[ 2] [ 3] 。現在では、PPG I (2016) においてウラボシ亜綱 [ 4] (薄嚢シダ亜綱 [ 5] ) Polypodiidae として扱われる[ 6] 。薄嚢シダ類は大葉シダ植物 の中で最も種数が多い[ 7] 。多くの化石種が知られている[ 7] 。
かつてはCopeland (1947) などでシダ目 Filicales として、スミスら (2006) の分類体系ではウラボシ綱 Polypodiopsida (シダ綱 Filicopsida )として扱われていた[ 8] 群と同義である。
系統関係
上位
Wickett ら (2014) 、Puttick ら (2018) による分子系統解析に基づく[ 9] 。
下位
Shen ら (2018) の分子系統解析に基づく。
特徴
陸上植物で唯一、1つの始原細胞 から1つの胞子嚢 を形成する薄嚢胞子嚢 を持つ[ 7] 。葉 、中心柱 、鱗片 、毛 などの形態形質が多様化している[ 7] 。
薄嚢胞子嚢
胞子嚢 は薄嚢シダ類以外の陸上植物では複数の表皮細胞 とその内側の細胞から形成されるのに対し、薄嚢シダ類では胞子嚢幹細胞 と呼ばれる1つの始原細胞に由来する[ 7] 。
分類体系
PPG I 分類体系
現在、シダ学のコミュニティで広く認められている分類体系をまとめたPPG I (2016) の分類体系を以下に示す。
ウラボシ亜綱 subclass Polypodiidae Cronquist , Takht. & W.Zimm.
スミスらの分類体系
以下、スミスら (2006) の分類体系から科 と目 を示す。和名は海老原 (2016) に基づく。薄嚢シダ類はウラボシ綱またはシダ綱として扱われた。
ウラボシ綱 Polypodiopsida (シダ綱 Filicopsida )
人とのかかわり
シダ類の中で、薄嚢シダ類は食用とされるものを多く含む[ 7] 。
脚注
^ PPG I 2016 、pp.563-603
^ 伊藤 2012 , pp.116-129
^ 村上 2012 , pp.67-73
^ 巌佐ほか 2013 , p.1642
^ 海老原 2016 , pp.26-27
^ PPG I 2016 , pp.563-603
^ a b c d e f 長谷部 2020 , pp. 124-173
^ Smith et al. 2006 , pp.705-731
^ 長谷部 2020 , pp. 1-4, 68-70
^ 海老原淳 . “次世代シーケンサーを用いた倍数性シダ類複合体の進化史解明 ”. KAKEN . 2021年3月24日 閲覧。
^ Kabeya, Y. and Hasebe, M. . “真正ウラボシ類II/ヘミディクティウム科 ”. 陸上植物の進化 . 基礎生物学研究所 . 2021年3月24日 閲覧。
参考文献
PPG I (The Pteridophyte Phylogeny Group) (2016). “A community-derived classification for extant lycophytes and ferns”. Journal of Systematics and Evolution (Institute of Botany, Chinese Academy of Sciences) 56 (6): 563-603.
Shen, Hui; Jin, Dongmei; Shu, Jiang-Ping; Zhou, Xi-Le; Lei, Ming; Wei, Ran; Shang, Hui; Wei, Hong-Jin et al. (2018). “Large-scale phylogenomic analysis resolves a backbone phylogeny in ferns”. GigaScience 7 (2). doi :10.1093/gigascience/gix116 .
Smith, Alan R.; Pryer, Kathleen M.; Schuettpelz, Eric; Korall, Petra; Schneider, Harald; Wolf, Paul G. (2006). “A classification for extant ferns” . TAXON 55 (3): 705-731. http://fieldmuseum.org/sites/default/files/smith-et-al-taxon-2006.original.pdf .
伊藤元己 『植物の系統と進化』裳華房 〈新・生命科学シリーズ〉、2012年5月25日、116-129頁。ISBN 978-4785358525 。
巌佐庸、倉谷滋、斎藤成也 、塚谷裕一 『岩波生物学辞典 第5版』岩波書店 、2013年2月26日、1642-1644頁。ISBN 9784000803144 。
海老原淳 、日本シダの会 企画・協力『日本産シダ植物標準図鑑1』学研プラス 、2016年7月13日、16-17頁。ISBN 978-4054053564 。
長谷部光泰 『陸上植物の形態と進化』裳華房 、2020年7月1日、1-4,68-70,124-173頁。ISBN 978-4785358716 。
村上哲明 (2012), シダ植物(広義) . In: 日本植物分類学会 監修 、戸部博 、田村実編著 『新しい植物分類学Ⅱ』講談社 、2012年8月10日、67-73頁。ISBN 978-4061534490 。