車両識別番号車両識別番号(Vehicle Identification Number、一般的には略してVIN)は、自動車産業界で個々の車両を識別するために使用しているシリアル番号を含んだ一意のコードであり国際標準化機構(ISO)3833によって定義されている。 VINは1954年にアメリカの自動車メーカーが採用したのが最初だが、1981年以前はこの番号は標準とはなっておらず、各々の製造業者が独自の様式を使用していた。VINは、数字の1(いち)や0(ゼロ)との混同がないよう、I(アイ)、O(オー)、Q(キュー)を除く17桁の英数字で構成されている。 日本のメーカーが生産・販売する日本国内向け車両の場合は、2015年8月下旬以降に生産したUDトラックスの車両及びマツダが製造していたアバルト・124スパイダー以外は国土交通大臣が定める「型式 - 番号」表記の車台番号を使用しているためVINは採用されていない。ただし海外輸出向け車両や海外工場生産車に関してはこの限りでない。 中古車を購入しようとする人がVINを使用して盗難歴や事故歴(branded vehicle)、欠陥車(lemon)等を見極められるように車両履歴の照会サービスを行っている国もある。この種のサービスを利用できる国の一覧は「en:used car」の記事を参照。 VINの構成近年の車両識別番号システムは2種類の関連する標準規格、元々は1979年と1980年に国際標準化機構(ISO)が発行したISO 3779とISO 3780にそれぞれ準拠している。これらのISO標準規格と互換性を持ちつつ幾分は異なる実装方法で欧州連合(EU)とアメリカ合衆国で採用されている。[1] VINは下記の区分で構成されている:
国際製造者識別子最初の3桁は国際製造者識別子(World Manufacturer Identifier)又はWMI記号を使用して一意の製造業者を識別している。年産500台未満の製造業者はVINの3桁目と2つ目の国際製造者識別部分の12、13、14番目の桁に9を使用している。製造業者の中には3桁目の文字を車両区分(例:バス、トラック)の記号や製造業者内のディビジョン、又はその双方に使用しているところがある。例えば1G(アメリカ合衆国のゼネラルモーターズ社に割り当てられている)では、1G1はシボレーの乗用車を、1G2はポンティアックの乗用車を、1GCはシボレーのトラックを表している。 アメリカ合衆国のSAE(Society of Automotive Engineers)がWMIを各国や製造業者に割り当てている。[2] WMIの最初の文字は製造業者が所在する地域を表しているが、ヨーロッパ圏では本社の所在地を割り当てることもできるため、たとえばドイツ、イギリス、スペイン、ポーランドの各工場で製造されているオペル・ボクスホール車は全てWOLで始まるVINを使用しており、これは本社がドイツにあるためである。また韓国で製造されるルノー・ラティテュードや、日本で製造されるプジョー・4007なども本国フランス製と同じVFで始めるVINを採用している。 日本のメーカーの海外工場生産車両もそれぞれの国の記号を持つため、VINの最初の2桁を見れば製造国が識別できる。 国名記号下記の表記法では、文字は数字に先行し0が最後の数字であるとしている。例えば、8X-82は8X、8Y、8Z、81、82を表している。ここには80が含まれないことに注意。
車両記述区分VINの4桁目から9桁目は車両記述区分(Vehicle Descriptor Section)又はVDSである。これは個々の規則に従い車両の型を特定しており、使用されているプラットフォーム、型式とボディ形式の情報を含んでいる場合がある。各製造業者はこの区分を独自の方式で使用している。1980年代以来、ほとんどの製造業者は8桁目を1つの車種に複数のエンジンが搭載できる場合にそのエンジン型式を特定することに使用している。例えば、2007年のシボレー・コルベットではU= 6.0 L V8、E= 7.0 L V8を表している。 北米チェックディジット適切に一貫した要素の一つはチェックディジットとして使用されている9桁目である。北アメリカ(北米)の車両には必須であり、この規則は北米以外でさえも適切に一貫して使用されている。 車両識別子区分VINの10桁目から17桁目は車両識別子区分(Vehicle Identifier Section)又はVISとして使用されている。これは製造業者により当該車両を特定するために使用される。これには装着されているオプション品、エンジン型式やトランスミッション型式の情報を含んでいることがあるが、たいていの場合は単なる連続番号である。実際、北米では最後の5桁は数字でなければならない。 年式の符号化VISの一貫した要素の一つは10桁目であり、北米では車両の年式を符号化するために必要となる。VIN自体で許されていない3文字(I、O、Q)のほかに文字のU、Zと数字の0は年度符号では使用されない。年度は車両の年式であることに注意。 1980年度は幾つかの製造業者、特にゼネラルモーターズとクライスラーでは"A"(1981年までは17桁のVINは義務付けされていなかったので1981年以前では製造業者はVINで"A"又はゼロを使用することができた)と符号化されるが、フォード・モーターとAMCは1980年度用にはゼロを使用していた。その後の使用できる文字が増え、"Y"は2000年度を表すことになった。2001年度から2009年度は数字の1から9で、それ以降は"A", "B", "C"等で表される。
北米工場記号もう一つの一貫した要素(北米では必須)は、車両の製造工場を符号化したものを11桁目の文字に使用していることである。各製造業者は各々独自の工場記号を持っているが、VINの中でこれらは標準化されている。 チェックディジット計算法チェックディジットを使用してVINを検証する場合は、最初に(a)計算のためにチェックディジットを外すか(b)加重値の0の乗算(multiplicative property of zero)で無効にする。その後でチェックディジットの元の値と計算結果の値を比較する。もし2つの値が一致しなければ(計算に誤りがない場合)、VINの中に誤りがある。しかしながら、一致するということはVINが正しいということの証明にはならない。なぜならば2つの異なるどんなVINにも11回に1回は一致するチェックディジットが存在する可能性があるからである。 数字への置換置換は文字を全て取り除き、それらの文字を各々に対応する適した数字に置き換えることにより行う。文字を代替する数字を下の表に挙げる。I、O と Q の使用は許されておらず、有効なVINには使用されていない。この表の使用にあたり、これらの文字はN/A(適用無し)としている。数字はそのままの値を使用する。
S は2であり1では無い。行内で左詰にはしない。 計算で使用する加重値VINの中の各桁に対する加重値は以下の通り。9桁目のチェックディジットは0に置き換え乗算の段階で無効にする。
計算事例仮定のVIN:1M8GDM9A_KP042788を考えてみる。下線部はチェックディジット。
チェックディジットの 'X' を当てはめるとVIN: 1M8GDM9A_KP042788 は: 1M8GDM9AXKP042788と書き表される。 1並び(17桁全てが '1')はチェックディジット的には有効である。89(加重値の加算値)に1を掛けた値は89であり、89を11で割った時の余りのチェックディジットは1であるからである。これはVINを検証するアルゴリズムをテストする簡単な方法である。 出典関連項目外部リンクInformation related to 車両識別番号 |