アルペンホルンが山中に鳴り渡り、勇壮な小太鼓の連打に続いて「第21連隊の歌」のメロディが聞こえる序曲で始まる。山の遠くからフランス軍の大砲の音が聞こえる。村の女性たちが跪いてマリア像に祈りを捧げている。この戦争で旅の足止めをくっていたベルケンフィールド侯爵夫人と執事のオルタンシウスが山小屋に戻って来る。公爵夫人はフランス軍は山賊同様だと聞いていると言い、〈クープレ〉「我が一族の女性にとって」(Pour une femme de mon non)と歌う(この歌はイタリア語版ではカットされている)。そこへフランス軍が退却したとの連絡が届き民衆は安堵し、浮かれた気分になる。そこにフランス軍第21連隊が軍曹シュルピスに率いられ現れる。村人たちはフランス軍を恐れて逃げ去り、ベルケンフィールド侯爵夫人も小屋に隠れる。そこに第21連隊の酒保をしている軍服姿のマリーが現れる。マリーは幼い頃戦場でシュルピス軍曹に拾われ、この連隊の中で育てられた孤児だが、兵士たちのアイドルのような存在で、皆に可愛がられて育った。二人は〈太鼓の二重唱〉「戦いの最中に私は生まれた」(Au bruit de la guerre, J’ai reçu le jour !)を歌う。最近、落ち込み勝ちなマリーに軍曹が理由を尋ねると、マリーは以前崖から落ちかけたところを救ってくれたチロルの青年が忘れられないと言う。その時一人の青年が兵士たちに陣営の周りをうろついていて挙動不審だったので、捕まって連行されてきた。彼こそマリーの命の恩人トニオであり、彼もマリーを忘れられずに彼女の姿を追っていたため、スパイではないかと疑われたのだ。マリーの説得で疑いが晴れ、トニオも入隊することになる。マリーは皆に所望されて〈連隊の歌〉「誰もが知っている、誰もが口にする」(Chacun le sait, chacun le dit)を歌う。皆が去ると、二人はお互いの心のうちを語る〈愛の二重唱〉「僕の腕の中で君が」(Depuis l’instant où, dans mes bras)を歌う。二人は一度、この場を退場する。シュルピスが戻って来て、ベルケンフィールド侯爵夫人と会話を始める。夫人はシュルピスにベルケンフィールド城まで護衛してもらえないかと持ち掛ける。シュルピスが夫人の昔愛したロベール大尉のことを知っていることに驚く。夫人はシュルピスにその昔、妹がフランス人のロベール大尉と恋に落ち、女の子を生んだが、妹は死にたった一人の侯爵家の血縁の子も死んでしまったという。
シュルピス軍曹は侯爵夫人の名前がベルケンフィールドと聞き、ロベール大尉の名前と同じなので、びっくりする。連隊で育てたマリーこそが、死んだ夫人の妹とフランス軍人との間に生まれた娘であったことが判明する。ベルケンフィールド侯爵夫人はマリーを、貴族に相応しい教育をするために引き取るという。事実が知らされたマリーは皆との別れの辛さにマリーが拒むと、トニオが連隊の兵士と共に戻って来る。兵士たちはトニオが連隊に入ったことを告げると、トニオは「これでマリーと一緒にいられる」との喜びを表し、〈カヴァティーヌ〉「ああ!友よ、何とめでたい日々だろう」(Ah ! mes amis, quel jour de fête !)を歌う。シュルピスが皆に「マリーは侯爵家のお姫様であることが分かったから、ここを去らなければならない」と言うと兵士たちは落胆する。マリーは軍曹に説得されて、侯爵夫人とともにパリに行くことを決意する〈ロマンス〉「私は行かなければならない」(Il faut partir !)を歌い、皆とトニオに別れを告げる。トニオは「必ず君を迎えに行く」と約束をする。
第2幕
数カ月後のパリのベルケンフィールド伯爵夫人の館の客間
シュルピス軍曹も、3カ月ほど前に怪我をし、この家に世話になったが、人柄とマリーの信頼をかわれて、この家の執事として雇われている。ベルケンフィールド侯爵夫人はバイエルンの名家であるクラッケントルプ公爵家の甥と結婚させることに決めた。マリーはこの結婚を渋々受け入れたものの、乗り気ではない。ベルケンフィールド侯爵夫人の邸宅では、マリーが礼儀作法、バレーと稽古にいやいやながら取り組んでいるが、慣れない上流階級のしきたりにうんざりしているのだった。マリーが客間に入ってくると、公爵夫人のピアノ伴奏で歌のレッスンがはじまる。しかし、マリーは堅苦しい歌が気に入らず、笑いをこらえながら歌い始めるが、傍にいるシュルピスの忍び笑いに釣り込まれ、調子の良い、昔懐かしい〈連隊の歌〉の節になってしまう。夫人は何度も注意して歌い直させる。そのうち、マリーとシュルピスは〈連隊の歌〉を歌いながら部屋を歩き回る。夫人も最後には引き込まれて、つい一緒になって〈連隊の歌〉を歌ってしまうのだった。3人はマリーを淑女に育てるためにはまだ前途多難であると考え、〈3重唱〉「森の中に夜明けが訪れ」(Le jour naissait dans le bocage)を歌う。夫人とシュルピスが退場すると、一人になったマリーは楽しかった連隊での生活を思い出し、〈アリア〉「高い身分や豊かさなど」(Par le rang et par l’opulence,)を歌う。すると遠くから懐かしい連隊の行進曲が近づいて来るのが聞こえる。今や大尉に昇進したトニオと連隊がやって来る。皆は再会を喜び合う。マリーの発案で皆にワインが振舞われることになり、兵士たちはオルタンシウスと部屋を出ていく。マリー、トニオ、シュルピスが揃い、3人は〈3重唱〉「3人が揃った」(Tous les trois réunis)を歌う。侯爵夫人が戻って来て、トニオを見るとすぐに出ていくよう命じる。トニオはマリーへの想いを切々と訴える〈ロマンス〉「僕はマリーのそばに」(Pour me rapprocher de Marie)を歌う(この歌もイタリア語版ではカットされている)。伯爵夫人はトニオを追い出し、シュルピスを呼び寄せる。伯爵夫人はシュルピスにマリーが実は自分の子供であると告白し、マリーに自分の全財産を相続させるためにも、マリーとクラッケントルプ家との結婚を実現させたいのだと告げる。クラッケントルプ伯爵夫人の一行が到着し、婚約の手続きが始まるが、マリーはなかなか姿を現さない。侯爵夫人と甥はマリーの無礼を非難する。ようやくマリーが現れ、シュルピスから話を聞くとマリーは「お母様」と夫人に抱き着く。そこに庭から兵士たちがマリーを救い出そうとなだれ込んでくる。招かれていた貴族たちはマリーが連隊の酒保で働いていたことを知って眉をひそめる。マリーは孤児として連隊で育てられた自らの生い立ちを正直に告白し、それでも実母の意向に従いサインすると言う。マリーが結婚証明書に署名をしようとすると、ベルケンフィールド侯爵夫人は娘の正直な心に打たれて、ついにマリーとトニオの結婚を許す。クラッケントルプ伯爵夫人の一行は婚約の破談に立腹し、退場する。残った人々は「フランス万歳」(Salut à la France !)と叫び、二人を祝福する合唱で幕を閉じる。