アズキの実
江戸時代の『成形図説 』に載る小豆の絵
アズキ (小豆 、荅、学名 : Vigna angularis var. angularis または Vigna angularis )は、マメ科 ササゲ属 アズキ亜属に属する一年草 。種子 は豆 の一種(広義の穀物 )である。しょうず ともいう[ 7] 。
ヤブツルアズキ (東アジア 原産)の栽培種である[ 注 1] 。
歴史
祖先 の野生種 であるヤブツルアズキ (V. angularis var. nipponensis )は日本 からヒマラヤ の照葉樹林 帯に分布し、栽培種のアズキは極東 のヤブツルアズキと同じ遺伝的特徴をもつ[ 8] 。原産地は一般に東アジア と考えられている[ 9] 。しかし、野生種が以前の想定よりも広い範囲に分布していることが明らかになったため栽培化 が起こった地域を再検討する必要があるとされている[ 9] 。
以前はインゲンマメ属 (Phaseolus )やアズキ属(Azukia )に入れられていたことがあった[ 10] 。
日本
日本では古くから栽培されており、縄文時代 の遺跡 からも発掘され、日本最古の書籍『古事記 』にも登場する。滋賀県 の粟津湖底遺跡 (紀元前 4000年頃)[ 11] や登呂遺跡 (弥生時代 、紀元1世紀頃)からも出土しており、古くから日本の様々な地域で栽培されていたと考えられている[ 12] [ 13] 。
アズキは「小豆」と漢字が当てられるが[ 14] 、その読みはショウズであり[ 7] 、アズキは大和言葉 (和名 )であると考えられる。「アズキ」の名称の由来 については、以下の各説がある[ 15] [ 16] 。
アは赤を意味し、ツキ・ズキが溶けることを意味し、他の豆より調理時間が短いことを意味していた。
地方用語でアズ・アヅとは崩れやすいという意味であり、そこから煮崩れしやすいアズキと名付けられた。
赤粒木(あかつぶき)からアズキとなった。
平安時代 の『本草和名 』(ホンゾウワミョウ)には「赤小豆」を阿加阿都岐(アカアツキ)と記述している[ 17] が、由来は記されていない。
『古事記』には、殺されたオオゲツヒメ の鼻から小豆が生じたとする。『万葉集 』2580・2582・2899では「あづきなく」(不当に)の「あづき」に「小豆」の漢字をあてており、この語が奈良時代 からあったことがわかる。
栽培、品種
日本における栽培面積の6割以上、生産量 の4分の3を北海道 が占める[ 18] 。北海道のほか、丹波 (現在の兵庫県 北東部や京都府 北部など)、備中 (現在の岡山県 西部)が、日本の三大産地である。低温に弱く、霜 害を受けやすいため、霜の降りなくなった時期に播種 される。
日本産の品種 には以下のようなものがある。えりも小豆の開発によって、収穫量は大幅に増大した。
大納言 (大粒種) - 5.8ミリメートルの篩 にかかり、小豆より大きく色が濃い品種は尾張国 (現在の愛知県 西部)名産だったことから、尾張大納言に因んでこの名称で呼ぶ[ 19] 。また、煮たときに皮が破れにくく、いわゆる「腹切れ」が生じにくいため、切腹 の習慣がないほど高位な官職 であった大納言 から名付けられたという説[ 20] や、豆の形が烏帽子 に似ているからという説もある[ 21] [ 22] 。美方大納言小豆 のほか、丹波、馬路、備中、あかね、ほくと、とよみ、ほまれ、など。
中納言 (普通小豆) - えりも、しゅまり、きたのおとめ、さほろ、など。
白小豆 ( しろあずき・しろしょうず ) [ 注 2] - 主な産地は、備中、丹波、北海道。白小豆 は栽培が難しい為、希少で高価。赤小豆とはまた違った独特のさっぱりした風味 が特徴。特に備中白小豆 ( びっちゅうしろしょうず ) は最高級とされる[ 24] 。
黒小豆 - 東北地方 や沖縄 などでは黒ささげ を「黒小豆」と呼ぶ地域がある[ 25] 。
利用
食用
赤飯等
古くは赤米 で炊いたご飯が赤飯 であったが、現在は少量のアズキ入りのおこわ またはもち米 の飯 が、一部地域を除いて、最も一般的な赤飯となっている。ただし、小豆は水に浸して戻すための浸漬時間を長くするほど加熱中に割れる「胴切れ」が起きやすくなる[ 26] 。関東地方 などでは「切腹に通じる」として武家では避けられ、赤飯に小豆ではなく皮が破れにくいササゲ を用いる地域もある[ 27] 。
また、祝事 の席で食す料理の一つに白米 と小豆で作った小豆粥 (あづきがゆ)がある[ 28] 。日本では1月15日(小正月 )に邪気を払い、1年の健康を願って、小豆粥を食する風習が年中行事 として残る[ 28] 。
菓子類
和菓子 や中華菓子の重要な原料の一つ。和菓子業界ではしょうず とも呼ぶ。餡 (あん)にして、饅頭 、最中 、どら焼き 、たい焼き 、今川焼き 、あんパン などの中に入れる。牡丹餅 の重要な材料でもあり、節句 などの行事でも使用されている。
郷土料理等
栄養価
種子は低脂質 で炭水化物 が多く、他の豆 類同様に高蛋白で食物繊維 が豊富であり、無機質 やビタミン も多く含む。約20%はタンパク質 で栄養価 が高く、カリウム や亜鉛 などのミネラル も豊富である。ビタミンB1 が豊富であるが、餡等にすると激減する[ 29] 。
赤い品種の皮に含まれる紫色色素 は、歴史的にアントシアニン であると信じられていたが、2019年にこの紫色色素としてシアニジン とカテキン が縮環した疎水性 物質カテキノピラノシアニジン類が発見された[ 30] 。
食用以外の用途
お手玉 のなかの材料
楽器 の材料
擬音 の発生材料 - 竹籠と組み合わせて波の音を表したり、紙の上に落として大粒の雨の降る音を表したりする。
枕 の詰め物
粥占い[ 43] の材料の一つとしてアズキが用いられ日本各地の神社 に伝わる[ 44] 。神前で小豆粥 を炊き、その煮え具合で吉凶 を判断する[ 45] 。
逸話など
アズキは商品先物取引 の対象になっている。生産が天候 に左右されやすく、年によって価格 が乱高下するほか、投機 の対象としても国内外の資金が大量に流入することによる暴騰暴落が、古くより幾度も繰り返されてきた(近代まで、栽培供給元が日本国内に限定されていたという事情もある)。他品目との比較でもハイリスク ハイリターン という一面があり、かつては「素人は小豆と生糸 には手を出すな」という言葉もあった。また梶山季之 は小豆市場を題材とした小説『赤いダイヤ 』を著した。ただ、現状では商品先物取引においてアズキの取引高は、他の上場商品と比べて少なくなっており、生産技術の向上もあって、こうした現象は過去のものとなっている。ちなみに、商品先物取引においては、小豆は「アズキ」より「ショウズ 」という言い方が一般的である。
第一次世界大戦 戦中戦後、エンドウ 、インゲン の産地である中欧 方面が戦火で荒廃し、代用として、ヨーロッパ へ日本から大量に輸出 されたが、餡に加工せず食用されたため「渋く苦い食べ物」という印象をヨーロッパ人に植え付けた。
朝鮮 でもアズキは食用であるが、伝統的には雑穀 粥のような食べ方であり、餡や羊羹のような甘く煮詰めた食べ方は併合期 以降に広まったものである。
地方によっては小豆洗い という妖怪 が民話 に登場する。この他、『遠野物語 』の記述では、体中に小豆をまとった得体の知れぬもの(未確認生物)が物見山 中に現れ、南部藩 の侍 が鉄砲 を撃つも玉が当たらず、逃げられ、この件から「小豆平」という地名になったという由来がある。
井村屋製菓 では、毎月1日を「あずきの日」と定めている。
博物館施設
脚注
注釈
^ 歴史的に栽培の始まりは複数の地域(日本を含む)で独立に始まったと考えられる [独自研究? ] 。
^ 北海道の品種など[ 23] 、"しろしょうず"と呼びならわすようになっている。
出典
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^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Phaseolus angularis (Willd.) W.F.Wight f. angularis アズキ(シノニム) ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList) . 2023年5月8日 閲覧。
^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Azukia angularis (Willd.) Ohwi アズキ(シノニム) ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList) . 2023年5月8日 閲覧。
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^ 特集:DNAが語る古代ヤポネシア「アズキ 日本から大陸に渡った作物」、日経サイエンス、2024年2月号。
^ 対照的にダイズ という名前は中国大陸 の漢字 「大豆」由来と考えられる。
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関連項目
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外部リンク