アマツバメ目 (アマツバメもく、学名: Apodiformes )は鳥類 の分類目の1つである。空中生活に著しく適応したグループである。
ズクヨタカ科、カンムリアマツバメ科、アマツバメ科、ハチドリ科の4科が属す[ 1] [ 2] 。ズクヨタカ科、(カンムリアマツバメ科 + アマツバメ科)、ハチドリ科はそれぞれ生活様式などが著しく異なるが、骨格上の共通点や分子系統により、同一のグループに分類されている。
ズクヨタカ科を含めない説もあり、この場合、ここでのアマツバメ目、つまり (狭義のアマツバメ目 + ズクヨタカ科) は Daedalornithes [ 3] や Apodimorphae [ 4] と呼ぶ。
なお、「アマツバメ目」という名だが、ツバメ (スズメ目 )とは遠縁である。
形態
アマツバメ科とカンムリアマツバメ科の足は他の鳥と異なる大きな特徴がある。写真のように足の指(趾)が全て前方を向く皆前趾足 である。このため、アマツバメ類は木の枝などに止まることができない。地上に止まる際は、岩などの壁面に爪でぶら下がるようにして止まる。
ハチドリ科とズクヨタカ科は他の鳥と同様に親指が後方を向いており、木の枝に止まることができる。
骨格などに、以下の共有派生形質 を持つ[ 4] 。
いずれも、翼に対して、初列風切羽 が占める割合が大きく、次列風切羽が占める割合が小さい。初列風切羽は飛行において推進力 を発生させ、次列風切羽は揚力 を発生させるため[ 5] 、それぞれ、プロペラ機のプロペラと翼に相当する。この初列風切羽の比率が、アマツバメ科では、強大な推進力で高速飛行を可能としている。高速飛行のため、少ない次列風切羽の面積で必要な揚力が得られる [要出典 ] 。ハチドリ科では翼がほぼ全て初列風切羽となり、ヘリコプター[ 6] を上回る [要出典 ] ホバリング を可能としている。
ズクヨタカ科は夜行性 で、他の3科は昼行性 である。
分類
アマツバメ亜目 Apodi
アマツバメ科 Apodidae
ツバメに形態や生活様式がよく似ている。細長い鎌のような翼をもち、高速で飛行する。
カンムリアマツバメ科 Hemiprocnidae
アマツバメ科に非常に近い類縁のグループである。頭に冠毛をもつ。
ハチドリ亜目 Trochili
ハチドリ科 Trochilidae
鳥類の中で最も体が小さいグループである。高速で翼を動かすことで空中で静止するホバリングができる。
ズクヨタカ亜目 Aegotheli
ズクヨタカ科 Aegothelidae
従来はヨタカ目 に含められた。単独でズクヨタカ目 Aegotheliformes とする説もある。
絶滅科
† ユンゴルニス科 Jungornithidae
アルゴルニス Argornis 、ユンゴルニス Jungornis 、パラゴルニス Parargornis が属す。ハチドリ科に近縁[ 7] 。
系統
アマツバメ目は単系統 で、側系統 のヨタカ目 に内包される[ 8] 。アマツバメ目+ヨタカ目は単系統で、Strisores と呼ばれる。
アマツバメ目の姉妹群 が何かは確定しておらず、ヨタカ科 Caprimulgidae [ 8] 、あるいは (ヨタカ科 + タチヨタカ科 Nyctibiidae )[ 4] という説がある。後者の (ヨタカ科 + タチヨタカ科) は Caprimulgi と呼ばれ、アマツバメ目と合わせて Cypselomorphae と呼ばれる[ 4] 。
アマツバメ目のうち、皆前趾足を共有するアマツバメ亜目 (アマツバメ科+カンムリアマツバメ科)は単系統である。
昼行性の3科(伝統的なアマツバメ目)は単系統である。夜行性はヨタカ目を含めた Strisores の基底で共有派生形質として獲得され、伝統的なアマツバメ目の系統で昼行性が再度獲得された[ 4] 。
分類史
伝統的には、アマツバメ目にはカンムリアマツバメ科 、アマツバメ科 、ハチドリ科 の3科のみが属し、ズクヨタカ科 はヨタカ目 だった。
Sibley分類 でも、これらは切り離されて扱われていた。伝統的なアマツバメ目はアマツバメ上目 Apodimorphae に階級が上げられ(ただし Apodimorphae はのちに Mayr によりズクヨタカ科を含めた系統の名に再定義された)、現生鳥類の14の群の1つとされた。アマツバメ上目の中で、ハチドリ科がハチドリ目 Trochiliformes に分離され、アマツバメ目はアマツバメ科とカンムリアマツバメ科のみになった。ズクヨタカ科はフクロウ目 ズクヨタカ亜目 Aegotheli とされた。
Livezey & Zusi (2007)[ 9] は、大枠で伝統分類を踏襲したが、ヨタカ目とアマツバメ目を姉妹群とし Incessores 亜節(単型亜節)Cypselomorphae 上目にまとめた(Cypselomorphae の定義は通常と異なる)。 また、Sibley et al . 同様に単型のズクヨタカ亜目を、ヨタカ目の中にではあるが置いた。ただし、アマツバメ目は、カンムリアマツバメ亜目 Hemiprocni (カンムリアマツバメ科のみ)とアマツバメ亜目(アマツバメ科とハチドリ科)に分け、実際の系統と違った。
利用
中華料理 で有名な燕の巣 はアマツバメ科 のインドショクヨウアナツバメ Collocalia unicolor の巣である。
出典
^ Gill, Frank ; Donsker, David, eds. (2012), IOC World Bird Names , version 3.1, http://www.worldbirdnames.org/
^ Billerman, Shawn; Lovette, Irby; et al. (2009), “Alter the traditional orders Apodiformes and Caprimulgiformes to reflect new data on their relationships” , in AOU N&MA Check-list Committee, Proposals 2009-C , p. 267–314, http://www.aou.org/committees/nacc/proposals/2009-C.pdf
^ Sangster, G. (2005), “A name for the clade formed by owlet-nightjars,
swifts and hummingbirds (Aves)”, Zootaxa 799 : 1–6
^ a b c d e Mayr, Gerald (2010). “Phylogenetic relationships of the paraphyletic caprimulgiform' birds (nightjars and allies)” . J. Zool. Syst. Evol. Res. 48 (2): 126–137. doi :10.1111/j.1439-0469.2009.00552.x . https://doi.org/10.1111/j.1439-0469.2009.00552.x .
^ 東昭『生物の飛行』
^ 厳密にはヘリコプターのローターは回転翼で、プロペラではない。
^ Nesbitt, Sterling J.; Ksepka, Daniel T.; Clarke, Julia A. (2011-11-30), “Podargiform Affinities of the Enigmatic Fluvioviridavis platyrhamphus and the Early Diversification of Strisores (“Caprimulgiformes” + Apodiformes)”, PLoS ONE 6 (11): e26350, doi :10.1371/journal.pone.0026350
^ a b Hackett, S. J.; Kimball, Rebecca T.; et al. (2008), “A Phylogenomic Study of Birds Reveals Their Evolutionary History” , Science 320 : 1763–1768, doi :10.1126/science.1157704 , https://doi.org/10.1126/science.1157704
^ Livezey, Bradley C.; Zusi, Richard (2007), “Higher-order phylogeny of modern birds (Theropoda, Aves: Neornithes) based on comparative anatomy. II. Analysis and discussion” , Zoological Journal of the Linnean Society 149 : 1–95, http://biology-web.nmsu.edu/houde/Livezey&Zusi_2007.pdf
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
アマツバメ目 に関連するカテゴリがあります。
古顎類 新顎類
キジカモ類 新鳥類
Strisores 系統群(名称不明) Columbimorphae ツル目 Mirandornithes チドリ目 Phaethoquornithes
Eurypygimorphae Aequornithes
ツメバケイ目 Telluraves
タカ目 フクロウ目 ネズミドリ目 Cavitaves Australaves
Source: Orders of Birds - IOC World Bird List(国際鳥類学会議 )