インターネットテレビインターネットテレビまたはストリーミングテレビとは、テレビ番組などのテレビコンテンツを、インターネット上でストリーミングメディアとして配信するデジタル配信のこと。無線システム、ケーブルテレビ、または衛星テレビシステムによって配信される地上デジタルテレビ放送とは対照的である。 概要インターネットテレビは、インターネットを介して配信されている映像番組を視聴する動画配信サービスである。音声のみの配信サービスはインターネットラジオと呼ばれ区別されている。 伝統的マスメディアが視聴率を基準として万人受けするプログラムを編成しているのに対し、インターネットテレビは膨大な量のコンテンツをサーバに置き、ユーザーは個々の好みでコンテンツをダウンロードして視聴できるため、特定層だけに人気があるようなコンテンツを揃えることでロングテール戦略が取れるようになったこと、ピア・ツー・ピアによって個々のユーザー情報をサーバ側が管理することでオンデマンド配信が可能となったこと、Web 2.0の出現によって視聴者と製作者の壁が破壊され、テレビがソーシャルメディアの一部となったことなどの違いがある[1]。また、伝統的マスメディアでは、コンテンツに30分枠、1時間枠といった定型化された時間の制約があったが、インターネットテレビのコンテンツの尺は、原則的に自由である[1]。 ラモン・ロバトは、インターネットテレビサイトを時制・課金方法・コンテンツの製作者の三属性によって以下のように類別している[1]。なお、実際に行われているサービスは、これらの要素を複数併せ持つ場合が多い。
これら以外にも、権利処理を行わない違法配信サイトや、インターネットテレビ情報をまとめたキュレーションサイトもインターネットテレビに含めることができる[1]。 日本国内の実情独立動画配信サービス2007年にネットフリックスが米国で動画配信サービスを開始するなど、ビデオ・オン・デマンド時代の到来が予想された[2]。日本国内におけるインターネットテレビ技術の標準化に向けた取り組みとして、2008年(平成20年)5月にNTT、KDDI、ソフトバンクの通信3キャリアが中心となり、NHKや民放5局、ソニー、パナソニック、シャープ、東芝、日立製作所などが参加して、IPTV技術規格の標準化団体「中間社団法人 IPTVフォーラム(後に中間法人法廃止に伴い一般社団法人化)が設立され、2009年11月現在で社員会員54社、協賛会員20社が参加して、技術規格の標準化を推進していた。理事長は慶應義塾大学教授の村井純。 同団体の技術仕様体系としては、配信サービス仕様として「VOD仕様」・「ダウンロード仕様」・「IP放送仕様」、サービスアプローチ仕様として「放送連携サービスアプローチ仕様」・「インターネットスコープサービスアプローチ仕様」・「CDNサービスアプローチ仕様」、その他「地上デジタルテレビジョン放送IP再送信運用規定」・「BSデジタル放送IP再送信運用規定」の8つの技術規格に分類していた。 回線速度の向上に伴い、制作会社やプロバイダー、ポータルサイトによる独立した動画配信サービスが勃興し始めた。2008年7月にGyaOが登録会員数2000万人を超えた[3]。また、吉本興業はcasTYをいち早く手がけたり、Netflix配信番組を制作した。 ただし先駆者のその後は順風満帆ではなく、GyaOは経営に行き詰まってYahoo!動画とサービス統合しGyaO!(現:GYAO!)に変わり、casTYも事業見直しで終了した[注釈 1]。このような設備投資のコストを避けるため、2010年代になると大手企業も一般動画サイト・サービスに同居する例が多くなっている。 海外勢では2011年にHuluが日本上陸をしたものの苦戦し、2014年に日本テレビに事業譲渡したが、2016年に上陸したNetflix、Amazonプライムビデオは成功を収めている[4]。 地上波テレビ局とインターネットテレビ2000年代末以降、既存のテレビ局も本格的にインターネット動画配信に参入しだした。当初は、無料でクリップ・ニュースを配信したり、過去に既存のテレビ網で放送されたドラマなどの番組を有料ビデオ・オン・デマンドによりパソコン向けに配信し始めた。ただし、テレビ局によって対応は様々で、第2日本テレビのように入会無料の例もあったが、だいたいは入会金が必要であった[注釈 2]。 ラジオ局が映像配信をする例もあり、文化放送は2007年からインターネットラジオ「超!A&G+」では低解像度ではあるが映像配信も行っていた。 日本のテレビ局は視聴率調査に関して極めて保守的[注釈 3] であることもあり、インターネット利用に消極的とみられていた。日本のテレビ局は系列地方局を多数抱えており、地方テレビ局の広告収入が減収となる恐れがある[5] 、番組の視聴率低下の恐れがあることが懸念され、地上波テレビ番組のネット配信は限定的であった。2005年のライブドアによるニッポン放送買収騒動、楽天によるTBS買収騒動は通信と放送の融合を唱えた新興ネット勢力に対して冷ややかな形で収まった。 ブロードバンド時代になってからもテレビ局のネット活用は停滞。2011年の東日本大震災の際に真っ先にネット配信を行ったのはNHKの放送をUstreamで違法配信していた中学生だった[6][7]。ようやく2015年に民放キー局5社によるTVerが開始され、一部の番組がネットでも配信されるようになった。2016年にはテレビ朝日とサイバーエージェントによるAbemaTVが開局し、テレビ局とネット会社の連携が成り立った。 テレビ放送番組の同時サイマル配信サイマル放送は長らく行われず、テレビ放送番組のインターネットでの同時サイマル配信は、エムキャスを使ったTOKYO MXや群馬テレビを除き、災害・重大事件の発生時、一部の式典を除いて、ほとんど行われなかったが、2019年6月にはNHKテレビ(総合・Eテレ)のネット同時配信を認める改正放送法が成立[8]、NHKプラスが2020年3月から開始された。 在京キー局では5局が2020年秋以降、テレビ番組を放送と同時にインターネットに流す同時配信を始める方向で準備していることが明らかになり、2020年10月に在京キー局のトップを切って日本テレビが中京テレビや読売テレビと共同でTVerを用いたプライムタイムの同時配信に踏み切り[9]、他系列も相次いで参入した。 主な配信サイト音声のみや、YouTube・ニコニコ動画などの動画投稿サイト内チャンネルなど一般サイトに同居する形での動画配信を除く。 日本国政府、各省庁が運営地方自治体が運営
テレビ局、ラジオ局が運営
プロバイダー、ポータルサイト、通信会社が運営
番組制作会社、映像コンテンツ会社が運営YouTubeやスティッカム等、汎用のプラットフォームによるライブストリーミング配信を除く。音声のみはインターネットラジオやポッドキャストを参照。
地域情報の配信を目的とする団体、企業が運営YouTubeやスティッカム等、汎用のプラットフォームによる動画配信を除く。音声のみはインターネットラジオを参照。
その他
海外の実情中国の実情中国では広播電視電影総局の検閲をパスし、かつインターネット放送に問題がない番組などに限り、CCTV(中国中央テレビ)が総合放送、娯楽放送、スポーツ放送、英語放送などのチャンネルを無料でリアルタイム配信しており、他にGDTV(広東テレビ)の広東語放送などもある。番組のオンデマンド配信もある。 韓国の実情韓国では、KBS、MBC、SBSの主要放送局や一部ケーブルテレビの番組がストリーミング放送されており、地上波と同期されている為リアルタイムで見ることができる(ただし、スポーツ中継や映画、アニメ番組等は放映権の関係上、ネット放送されない)他、過去に放送された番組もクリップで見ることができる。これらのサービスはほとんどの場合無料で提供されており、会員加入の必要すらないケースもある。韓国のインターネットも参照のこと。 オーストラリアの実情オーストラリアでは公共放送であるABC(豪州放送協会 Australian Broadcasting Corporation)がニュース番組だけでなく、ビジネス、スポーツ、料理、子供向けなど各種番組のオンデマンド無料配信を行っている。 フランスの実情フランスの主要全国ネット放送局はインターネットで番組を提供していないが、地方放送局のボルドー・テレビは番組のオンデマンド配信やストリーミング放送を行っている。なお、ボルドー・テレビは全国ネットのリレー放送をしておらず、独自取材番組のみである。なお大手プロバイダ業者の一部は、ADSL回線を通じてMPEG4形式で多数のテレビ放送局(一部民放や有料放送局を除く)を配信するサービスも行っている。 脚注
関連項目
外部リンク |