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この項目では、行政区分について説明しています。歴史的部族名については「オルドス部」を、地域名については「オルドス地方」をご覧ください。 |
オルドス市(オルドスし、モンゴル語:ᠣᠷᠳᠣᠰ
ᠬᠣᠲᠠ、転写:Ordos qota、オルドス・ホト、鄂爾多斯市)は中華人民共和国内モンゴル自治区西南部に位置する地級市。黄河が北に大きく屈曲した地点にあたるオルドス高原に位置する。2002年2月26日、イフ・ジョー・アイマク(伊克昭盟)からホト(市)となった。
行政区画
2トーリグ(市轄区)、7ホショー(旗)を管轄する。
年表
この節の出典[1][2][3]
綏遠省イフ・ジョー盟
イフ・ジョー盟モンゴル族自治区
- 1949年12月21日 (1県7旗)
- 東勝県を編入。
- ダラト旗組織訓練処がダラト旗に編入。
- 桃力民弁事処がオトク旗・ハンギン旗に分割編入。
- 1950年4月7日 (1県7旗2区)
- 1950年6月1日 - 山西省興県専区河曲県の一部が分立し、十里長灘区が発足。(1県7旗3区)
- 1951年11月20日 - 陝西省楡林専区靖辺県の一部がオトク旗に編入。(1県7旗3区)
- 1952年2月 - 寧夏省陶楽県の一部がオトク旗に編入。(1県7旗3区)
- 1952年10月21日 (1県7旗)
- 通格朗区・ダルグート区がジャサク旗に編入。
- 十里長灘区がジュンガル旗に編入。
- 1953年9月15日 - 集寧専区包頭県の一部がダラト旗に編入。(1県7旗)
- 1953年9月28日 (1県7旗)
- 1954年1月28日 - 綏遠省の内モンゴル自治区への編入により、内モンゴル自治区イフ・ジョー盟となる。
内モンゴル自治区イフ・ジョー盟
- 1954年6月 - 平地泉行政区サラチ(薩拉斉)県の一部がダラト旗に編入。(1県7旗)
- 1955年1月10日 - ジュンガル旗の一部が平地泉行政区サラチ県に編入。(1県7旗)
- 1956年6月1日 - 陝西省楡林専区靖辺県の一部がウーシン旗に編入。(1県7旗)
- 1958年11月21日 - 郡王旗・ジャサク旗が合併し、エジンホロ旗が発足。(1県6旗)
- 1960年1月7日 - バヤンノール盟磴口県の一部がオトク旗に編入。(1県6旗)
- 1961年7月9日 - オトク旗の一部(桌子山鉱区)が分立し、海勃湾市が発足。(1市1県6旗)
- 1975年8月30日 - 海勃湾市がバヤンノール盟ウダ市と合併し、地級市の烏海市となる。(1県6旗)
- 1980年8月12日 - オトク旗の一部が分立し、オトク前旗が発足。(1県7旗)
- 1983年10月10日 - 東勝県が市制施行し、東勝市となる。(1市7旗)
- 2001年2月26日 - イフ・ジョー盟が地級市のオルドス市に昇格。
オルドス市
- 2001年2月26日 - イフ・ジョー盟が地級市のオルドス市に昇格。(1区7旗)
- 2003年 - エジンホロ旗の一部が東勝区に編入。(1区7旗)
- 2016年6月8日 - 東勝区の一部が分立し、ヒヤバグシ区が発足。(2区7旗)
歴史
オルドス市の市域は遊牧の好適地であるとともに、モンゴル高原から華北、華北からモンゴル高原に通じる交通上の要衝であり、古くは匈奴と秦・漢が争奪した地帯である。匈奴の呼韓邪単于は、後漢に従いこの地に王庭をおいた。15世紀にモンゴルのオルドス部部が移住してきたため、これにちなんで地名の上でもオルドスと呼ばれるようになった。オルドスはモンゴル語・テュルク語で「宮廷」を意味する「オルド」が語源であり、この集団はモンゴル帝国の始祖チンギス・ハーンの生前の宮廷をチンギスの霊廟として奉祀しており、現在も成吉思汗陵(中国語版)が存在している(ただし、チンギスは密葬されたため、実際の墓ではない。もともと移動式のゲルでチンギスを祀っていたのを変更して、周恩来とウランフの後押しで1956年にできた建物であり、遺骸は棺になく、弓矢や鞍などが祀られてる。しかし、棺を担いだオルドスの扎薩克で中国最後のモンゴル王公である奇忠義(中国語版)は人骨の一部が納められていたとも証言している[4])。
17世紀にオルドス部が清に服属すると、清は盟旗制によりオルドス部に7つの旗を置いてオルドス王家の後裔を各旗の旗長とし、オルドス7旗を1盟(イフ・ジョー盟)とした。
辛亥革命後の1928年、国民政府は綏遠省を置き、イフ・ジョー盟はその南部に吸収された。満州事変後、日本の関東軍の支援を受けて徳王(デムチュクドンロブ)の自治独立運動が起こるとイフ・ジョー盟もこれに加わり、1939年成立の蒙古連合自治政府傘下に入った。国共内戦後、中華人民共和国のもとで最終的に綏遠省が廃止されて行政区として復活し、1956年に内モンゴル自治区に加わった。
経済
産業
招商局(企業誘致局)によると、羊(カシミア)、煤(石炭)、土(カオリン=陶土)、気(天然ガス)、風(風力発電)、光(太陽光発電)を主に産出し、埋蔵されている鉱物資源は50種類を超える[5]。石炭だけで2250億元(約2兆9250億円)の収益がある[5]。2004年から炭鉱用地の収用が始まり、多くの農牧民が多額の補償金を受け取った[5]。
- 石炭の予想埋蔵量は1兆トン、確認埋蔵量は4860億トンである。内モンゴル自治区の2分の1、全国の6分の1を占める。
- 天然ガスの確認埋蔵量は2兆3000億立方メートルである。全国の3分の1を占める。
- トロナ6000万トン
- 石膏35億トン
- 硫酸ナトリウム70億トン
- カオリン(陶土)65億トン
- 珪砂5000万トン
- 食塩1000万トン など
特産の山羊からアルパシ・カシミアが取れ[5]、世界のカシミア製品の4分の1が生産されている[6]。
貧困都市であったが、1990年代から石炭生産に力を入れたことで中国有数の産炭地となり、石炭バブルによって空前の好景気に沸いた[7]。2000年の西部大開発プロジェクトを受けて開発が進み[8]、人口も約30万人から200万近くに急増した。2010年には中国全体ではマカオや香港と並ぶ中国本土で最も1人当たり域内総生産(GDP)が高い都市となった[7]。
不動産開発とバブル崩壊後のゴーストタウン化
2000年代頃から中国景気が活発化し、中国本土や影響を受ける周辺諸国では都市部と内陸部との格差も拡大しつつも、炭鉱山のあったオルドス市は石炭バブルと労働者受け皿としての不動産バブルの恩恵に浴して大変に潤った。しかし、石炭価格の暴落で市内はゴーストタウン化してしまった[9]。
2003年から建設が始まったヒヤバグシ新区(康巴什新区)のような巨大なニュータウンでは、開発と不動産投資が急速に進みすぎ、人の住まない住宅が増えて「世界最大のゴーストタウン」[10]とも呼ばれ、鬼城化は問題視された[11]。
『浙商網・浙江経済報道』の2013年の報道によると、石炭価格の大幅な値下がりにより市内に35ある炭鉱の半数以上が停止しており、市の成長率は内モンゴル最下位にまで落ち込んだと報じられており、1,000億元以上の負債を抱え、不動産市場が崩壊しているオルドス市は危機に瀕しており、中国の地方政府として初の破産に直面していると報じる中国メディアもあった[12]。
仮想通貨のマイニング
自前の石炭による火力発電により、市内は安価な電力供給が維持されていた。2007年頃、世界で仮想通貨の流通が開始された。一部の仮想通貨では信用取引を保証する改ざんの不可逆性を担保するデータの付加が求められており、このデータを得るにはその仮想通貨による全ての取引を参照して計算しなくてはならないため、膨大な計算量を必要とする。しかしボランティア的に行われるこの計算を成功させた者には仮想通貨での報酬が与えられる。この労力に見合う報酬が得られることから、この計算は仮想通貨における「データマイニング」と呼ばれている。
マイニングを行うため、高性能なコンピュータを設置して計算させ、そのための安価な電気代で稼働できる場所探しが世界中で一斉に行われ、安価な電気代を提供していたジョージアのアブハジアなどとともにオルドス市も注目され、バブル崩壊後に再び投資が集中した。北京市に本社を置く世界最大[13]のマイナーであるビットメイン(英語版)は市内の老舗のマイニング施設を買収している[14][15]。仮想通貨の取引は中国では違法だが、採掘活動は売却で得た利益が中国に還元され[16]、世界の7割超を中国が占めて市場を支配していることから、暫く中国政府に容認されていた[17]。
しかし、こうした地域での電力インフラの多くは脆弱であり、また投資により一気増える負荷に対応できないなどの理由や、違法取締の強化の目的で2017年頃までに徐々にマイニングマシンへの税的優遇の廃止や電力供給の停止など規制が強まっている。このため国内マイニング業者は海外移転を進めており、オルドス市も例外ではなくなっている[18]。
交通
著名な出身者
- 楊晶(政治家。内モンゴル自治区政府主席)
- 巴特爾(バスケットボール選手)
- 楊海英(文化人類学者)
施設
脚注
- ^ 县级以上行政区划变更情况 - 中華人民共和国民政部
- ^ 内蒙古自治区 - 区划地名网
- ^ 绥远省 - 行政区划网
- ^ “中国末代蒙古王爷奇忠义揭秘成吉思汗陵”. 人民網 (2004年11月2日). 2016年7月31日閲覧。
- ^ a b c d 北村豊. “現地リポ:「中国のドバイ」はゴーストタウン”. 日経ビジネスオンライン. 2016年8月6日閲覧。
- ^ “Resource Superiority”. ordos.gov (2015年8月26日). 2019年10月30日閲覧。
- ^ a b “「鬼しか住まぬ」中国オルドス 石炭バブルが崩壊”. 日本経済新聞. (2013年8月15日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1202R_U3A810C1000000/
- ^ “三井物産の取り組み-挑戦と創造「内モンゴルの未来に新しい価値を」”. 三井物産 (2008年2月). 2019年10月30日閲覧。
- ^ 中国の砂漠には、豪華すぎるゴーストタウンがある(画像集)
- ^ “Welcome to The World's Largest Ghost City: Ordos, China”. ギズモード. (2014年3月12日). https://gizmodo.com/welcome-to-the-worlds-largest-ghost-city-ordos-china-1541512511 2019年2月20日閲覧。
- ^ “無人都市 群がるマネー”. 読売新聞. (2011年2月8日)
- ^ “「ゴーストタウン」と呼ばれたオルドス市、破産の危機に直面 石炭産業への過度な依存が市財政を圧迫”. 日経ビジネス. (2013年7月12日). p. 4. http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130711/250948/?P=4
- ^ “仮想通貨を規制する中国、何が起きているのか”. フォーブス. (2017年9月24日). https://forbesjapan.com/articles/detail/17807 2018年1月6日閲覧。
- ^ “高騰し続ける仮想通貨Bitcoinを掘る世界最大のマイニング工場に潜入、2万5000台のマシンを酷使する採掘現場の恐るべき実態に迫る”. GIGAZINE. (2017年8月24日). https://gigazine.net/news/20170824-largest-bitcoinmine/ 2018年1月6日閲覧。
- ^ “【専欄】中国、ビットコイン規制の行方 マイニング禁止の事態に備える動きも”. フジサンケイ ビジネスアイ. (2017年10月17日). http://www.sankeibiz.jp/macro/news/171017/mcb1710170500011-n1.htm 2018年1月6日閲覧。
- ^ “ビットコイン分裂 中国の採掘2社が語る通貨の未来”. NIKKEI STYLE (2017年12月28日). 2018年1月6日閲覧。
- ^ Katrina Hamlin (2017年8月17日). “中国のしたたかなビットコイン戦略”. ロイター. 2018年1月6日閲覧。
- ^ “じつはアツかった! マイニングで大儲けの中国ビットコイン事情”. https://gigazine.net/news/20170824-largest-bitcoinmine/
関連項目
外部リンク