カプラン水車カプラン水車(カプランすいしゃ、英語: Kaplan turbine)は、プロペラ状の羽根車(ランナ)を持つプロペラ水車のうち、羽根の角度を調整できるものをいう。1913年、オーストリアの大学教授、ヴィクトル・カプラン(1876年11月27日 – 1934年8月23日)によって発明された。 カプラン水車は、発電用水車の進化から見ればフランシス水車を低落差に対応できるようにした型であるといえる。フランシス水車では不可能であった有効落差の低い発電所においても効率的な発電を可能とした。 現在、世界中の至る所の低落差・大流量の水力発電所で広く用いられている。 歴史1912年、ヴィクトル・カプランは羽根の角度を調整できるプロペラ水車に関する特許を取得した。しかし、商業的成功を収めるだけの設備が開発されるまでにはもう10年間を要した。彼は1922年、健康上の理由により研究活動を終えるまで、水車に発生するキャビテーション問題と闘い続けた。 1919年、彼はチェコのポジェブラディ市において実演用にとカプラン水車を設置。1922年、ドイツのフォイト (Voith) 社が 1,100 英馬力(約 800 キロワット)のカプラン水車を採用し設置。1925年、スウェーデンのリッラ・エーデット市で8,000キロワットの水車の運用を開始。これにより商業的成功を収めたカプラン水車は広く採用されることになった。 理論カプラン水車は、内側に向かって流れる水を作用させる反動水車である。すなわち、流水の運動エネルギーが水車を回転させる圧力エネルギーへと変化する。カプラン水車は、放射状・軸状それぞれの特徴を兼ね備えた設計をしている。 水車入口周囲に巻き付いている渦巻状の水管がケーシング(渦形室)である。ケーシングからランナの接線方向より流入し渦を作った水は、プロペラ状のランナを回転させる要因となる。 水車出口は、水を減速させ運動エネルギーを回復させることを特に考慮して形成された吸出管(すいだしかん、ドラフト)が接続されている。 吸出管が水で満たされている限り、水車は水流の最低点にある必要はない。ただし、水車の位置が高いほど吸出管から羽根にかかる吸引力は増す。その結果として低下する圧力により、キャビテーション発生のおそれがある。 ガイドベーン(案内羽根)と水車羽根の形状を変化させられるため、効率的な運転が可能となる。カプラン水車の効率はおおむね 90 パーセント以上であるが、特に低水頭用のものではこの値を下回る。 現在、数値流体力学などを駆使した研究によって運転効率の改善、ならびに水車を通過する魚など水生生物の生存率を上げる試みがなされている。 水車の羽根は高油圧ベアリングで回転させられるので、カプラン水車の設計においては如何に油を封止し水路への放出を防ぐかが鍵となる。油が河川に流出すると、資源の浪費なだけでなく環境的な問題が発生する。 各部名称
適用カプラン水車は、世界中至る所の水力発電所で広く採用されている。カプラン水車は有効落差が小さく、特に使用水量の大きな発電所に適している。 わずか 60 センチメートルの落差でも利用できる、小型化された廉価な製品が製造されている。 大型のカプラン水車は可能な限り高い効率点(おおむね 90 パーセント以上)で運用するため、おのおのの水力発電所ごとに設計される。これらは設計・製造・導入のためのコストが高いものであるが、設置後数十年間にわたって運転することができる。 カプラン水車はある程度の有効落差を超えた高さに適用しようとすると、羽根の角度を調整するための機構を収めたランナの先端部分が大型化せざるを得なくなる。結果として水の抵抗を強く受けるようになりエネルギーの損失につながるため、代わりに可動羽根斜流水車(デリア水車)が導入される場合がある。 種類プロペラ水車のうち、カプラン水車は最も広く採用されているものである。カプラン水車にはいくつかの種類がある。
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