ケヤキ属
ケヤキ属(ケヤキぞく、欅属、学名:Zelkova)はニレ科に含まれる属である。 形態いずれも落葉樹、樹高は小さいもので10m未満のものから最大30-40mに達する種類もある。樹形は同科のニレ属(Ulmus)の樹木と似ており、太い幹が比較的低い位置から分岐し「箒をひっくり返したような」などと形容される独特の樹形になることが多い。ただし、樹形は生育環境によって左右されるので必ずしもこうなるとは言えない。
樹皮は平滑、所々鱗状に剥がれるというものが多い[1]。これに対しニレ属の多くの樹種では縦に大きく裂ける物が多い。若枝は左右にジグザグに伸びる(仮軸分枝)。
葉は枝に左右交互に付き(互生)、縁には明確な鋸歯を持つ。鋸歯はニレ属が二重鋸歯と呼ばれる独特なものを持つのに対し、本属は普通の鋸歯である。葉脈は一本の主脈から左右に側脈を伸ばす形(羽状脈)でニレ属に似る[1]。これに対し同科のエノキ属、ウラジロエノキ属、ムクノキ属などは主脈が3本あるように見える(三行脈)、ただしこれらの三行脈のグループは最新のAPG分類体系ではニレ科ではなく、アサ科に入れられる。
花は単性花で雌雄同株(同一個体に雄花と雌花が付く)、これに対しニレ属は両性花を付ける。風媒花であり花は地味、雄花は枝から垂れ下がるように咲き、雌花は葉の付け根部分(葉腋)に付く。種子は歪んだ腎臓型で翼を持たない。これに対しニレ属は明らかな翼を持つ[1]。
生態ニレ属と同じく谷沿いや斜面下部などの肥沃で湿潤な地形を好む種が多いが、乾燥・貧栄養にも耐える。萌芽力も旺盛で人工的増殖として挿し木繁殖も容易。 本属の種子は翼を持たないが秋の落葉時に小枝や葉と共に落ちてこれが翼の代わりをする。この枝は英名fruiting shoot(和訳は一定しておらず、研究者によって結果枝、着果枝や着実枝などとよばれる)と呼ばれ、冬芽を欠くなど一般的な枝(生長枝などと呼ばれる)との違いもあるという[2]。種子や果実には羽を持たず、羽の役割をする葉がつくものではほかにフタバガキ科が有名である。
名前日本語のケヤキは「けやけき木」(けやけし―美しいの意味)が由来ではないかと言われる。かつては「槻(つき)」とも呼ばれ、これは「強い木」が由来ではないかとされる。漢字は欅、ただし中国では欅はサワグルミの仲間を指し、ケヤキ属に充てられる字は「欅」である。 人間との関わり景観移植が容易で剪定にもよく耐える強靭さ、成長の早さ、爽やかな樹形に新緑・紅葉の美しさなどが魅力的でニレ属樹木と共に街路樹や公園樹として利用される。日本では公園などの他、寺社や鉄道防風林にもよく見られる樹種である。欧米でも昔からあった在来ニレがニレ立枯病での大量枯死が問題になっており、これに代わる種としてケヤキ属樹木を使うこともあるようである。ただし、ケヤキ属樹木であってもニレ立枯病の原因菌を人工的に接種すると道管などが侵されることが報告されている[3]。
木材乾燥によって狂いやすい、硬く加工しにくいなどの難点もあるが、反面摩耗に強く、また表面に現れる模様(杢)が美しいなどの理由で日本では高級材として扱われる。かつては日本産ケヤキ材を欧米に輸出したこともあったが色合いが欧米人の好みに合わずに廃れてしまったという。
世界のケヤキ属植物ユーラシア大陸の東部に3種、西部に3種の計6種が知られる。日本にはケヤキ(Zelkova serrata)一種が分布する。
脚注
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