ジュノー [ 7] またはユノー [ 8] またはユノ [ 9] (3 Juno) は太陽系 の小惑星帯 にある小惑星 の1つ。1804年 9月1日 にドイツ の天文家カール・ハーディング がニーダーザクセン州 のリリエンタールで発見した[ 1] 。小惑星帯の中では11番目に大きい天体であり、S型小惑星 の中ではエウノミア に次いで大きい。ジュノーは小惑星帯の質量の1%を占めていると推定されている[ 10] 。
歴史
発見
ジュノーは1804年9月1日、カール・ハンディングにより発見された[ 1] 。ジュノーは3番目に発見された小惑星であるが、当初は惑星だと考えられていた。1850年代になると小惑星に分類された[ 11] 。
名称
ジュノーはローマ神話 の最大の女神、ユーノー にちなんで名付けられた。名称には一部国によって例外がある。一つは言語の違いによるもので、イタリア ではGiunone 、フランス ではJunon 、ロシア ではYunona という。もう一つの例外は国の違いによる神の立場によるものであり、ギリシアの場合はヘーラー にちなんでHera(3 Ήρα)、中国語 では同じ結婚の神として婚神星 (hūnshénxīng )と呼ばれる。
惑星の記号としては③が使われるが、古くは⚵( )の文字が用いられ、現在もまれに見られる。
特徴
ジュノーは10番目に大きい小惑星(準惑星除く)であり、質量は小惑星帯 全体の1%を占める[ 10] 。しかしケレスとジュノーの質量比は100:3の違いがある[ 2] 。公転周期は約4.36年である[ 1] 。また、ジュノーは小惑星帯中のジュノー族 に属する。
小惑星番号が1から10の小惑星と月の大きさの比較。ジュノーは左から3番目。
ジュノーはS型小惑星の中でも異常なアルベドを持ち、これは表面の特性がかなり異なっていることを示している。この高いアルベドにより小惑星帯より太陽側にないにもかかわらず、高い視等級 を持つ原因が説明できる。ジュノーは好都合な条件では衝 の際に視等級7.5にまで到達し、海王星 やタイタン よりも明るくなったため、ヒギエア 、エウロパ 、ダビダ 、インテラムニア などより早く発見された。ジュノーは衝の時なら双眼鏡 でも見える範囲にあり、離角 が少しあっても、3インチ望遠鏡で確認できる[ 12] 。
1807年から1845年の惑星
順番
名称(英語)
名称(日本語)
記号
1
Mercury
水星
2
Venus
金星
3
Earth
地球
4
Mars
火星
5
Vesta
ベスタ
6
Juno
ジュノー
7
Ceres
ケレス
8
Pallas
パラス
9
Jupiter
木星
10
Saturn
土星
11
Uranus
天王星
ジュノーは元々、ケレス、パラス、ベスタと共に惑星とみなされていた[ 11] 。1811年にヨハン・シュレーター はジュノーの直径を2290kmと推定してしまった[ 11] 。これら4つは分類し直され、小惑星に追加された。ジュノーは小さく、球体ではなかったので準惑星 に分類されることはなかった。
ジュノーの太陽からの平均距離は太陽とケレスやパラスの平均距離よりわずかに近い。軌道傾斜角 12°の楕円軌道をとっており、軌道離心率 は冥王星 と同じくらいだがわずかに上回っている。軌道離心率の高さにより近日点はベスタよりも近く、遠日点はケレスよりも遠い。ジュノーは1854年に33 ポリヒムニア が発見されるまでは軌道離心率最大の天体であった。また、直径が200km以上で軌道離心率がジュノーを上回るものは324 バンベルガ のみである[ 13] 。
ジュノーは赤道傾斜角 約50°で順行 している[ 14] 。ジュノーの表面温度は太陽に面しているときに最大になり、2001年10月2日に293Kと測定された。後に太陽からの距離が考慮されて表面温度の最大は301Kとなった[ 5] 。
ジュノーの分光器による観測でジュノーはカンラン石 や輝石 などの鉄を含有するケイ酸塩 の石質隕石 であるコンドライト の母天体であることが分かった[ 15] 。赤外線を通した画像によるとジュノーには100kmほどのクレーター があり、衝突時にできた結果である[ 16] [ 17] 。
観測
ジュノーは掩蔽 がはじめて観測された小惑星である。1958年2月19日に暗い恒星SAO 112328 の前を通過した。それ以来、多くのジュノーによる掩蔽 が確認され、SAO 115946 が掩蔽された1979年12月11日には18人の観測者により観測された[ 18] 。2013年7月29日には視等級11.3のPPMX 9823370の掩蔽[ 19] 、その翌日には2UCAC 30446947の掩蔽が観測された[ 20] 。
火星の運動によって引き起こされる微小な摂動 からジュノーの質量を推定するために火星の軌道上を周回する探査機や表面からの探査機による無線探査が行われた[ 21] 。1839年頃にも小惑星の摂動により軌道がわずかに変化したが、どの小惑星かは分かっていない[ 22] 。
1996年にジュノーはウィルソン山天文台 にあるHooker望遠鏡で補償光学 を応用し、実視領域と近赤外線領域からの観測で画像が得られた。この画像によりジュノーの不規則な形やアルベドの小さい地形の詳細が判明した[ 17] 。
4種類の波長でから観測したジュノー。暗いところがクレーターである。2003年、Hooker望遠鏡により撮影。
動画 ジュノーの背景の星に対する動き。
静止画 2009年衝の際に撮影されたジュノー。
自転の映像 アルマ望遠鏡 により撮影されたジュノーの映像。
2014年 10月19日 、アルマ望遠鏡 は4時間にわたってジュノーの電波観測を行って連続画像を得ることに成功した[ 23] 。この観測から、ジュノーの不規則な形状が改めて明らかになるとともに、電波の反射の度合いの変化から、表面のレゴリス が一様ではない可能性があることも判明した。
脚注
注釈
^ JPLのデータにあるtp (前回近日点通過)にperiod(公転周期)を加えて計算(小数点第二位以下切り捨て)。計算式は 2458446.0 + 1592.8 = 2460038.8(JD )
^ a b 三軸径の情報により計算。
^ 1.44 ± 0.23 × × 10 −11M ☉ から計算。
出典
^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab “JPL Small-Body Database Browser: 3 Juno ”. ジェット推進研究所 . 2020年1月1日 閲覧。
^ a b
Jim Baer (2008年). “Recent Asteroid Mass Determinations ”. Personal Website. 2013年7月2日時点のオリジナル よりアーカイブ。2020年1月1日 閲覧。
^ a b James Baer, Steven Chesley, Robert Matson (2011). Astrometric masses of 26 asteroids and observations on asteroid porosity
^ a b
“Asteroid Lightcurve Derived Data. urn:nasa:pds:ast-lightcurve-database::3.0 ”. NASA Planetary Data System (2019年12月9日). 2020年1月1日 閲覧。
出典引用元は このPDF にあるlc.summary.csv のもの。
^ a b
Lim, Lucy F.; McConnochie, Timothy H.; Bell, James F.; Hayward, Thomas L. (2005). “Thermal infrared (8–13 µm) spectra of 29 asteroids: the Cornell Mid-Infrared Asteroid Spectroscopy (MIDAS) Survey”. Icarus 173 (2): 385–408. Bibcode : 2005Icar..173..385L . doi :10.1016/j.icarus.2004.08.005 .
^ “AstDys (3) Juno Ephemerides ”. Department of Mathematics, University of Pisa, Italy. 2020年1月1日 閲覧。
^ “小惑星日本語表記索引 : 1 - 50 ”. 日本惑星協会 . 2019年3月9日 閲覧。
^ 『藤井 旭の天文年鑑 2018年版:スターウォッチング完全ガイド』、90頁。ISBN 978-4416717097 。
^ 『オックスフォード天文学辞典』(初版第1刷)朝倉書店、416頁。ISBN 4-254-15017-2 。
^ a b
Pitjeva, E. V. (2005). “High-Precision Ephemerides of Planets—EPM and Determination of Some Astronomical Constants” (PDF). Solar System Research 39 (3): 176. Bibcode : 2005SoSyR..39..176P . doi :10.1007/s11208-005-0033-2 . オリジナル の2008-10-31時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20081031065523/http://iau-comm4.jpl.nasa.gov/EPM2004.pdf .
^ a b c Hilton, James L.. “When did the asteroids become minor planets? ”. U.S. Naval Observatory . 2008年3月24日時点のオリジナル よりアーカイブ。2020年1月1日 閲覧。
^
“What Can I See Through My Scope? ”. Ballauer Observatory (2004年). July 26, 2011時点のオリジナル よりアーカイブ。2020年1月1日 閲覧。 (archived)
^ “MBA Eccentricity Screen Capture ”. JPL Small-Body Database Search Engine. March 27, 2009時点のオリジナル よりアーカイブ。2020年1月2日 閲覧。
^
Kaasalainen, M.; Torppa, J.; Piironen, J. (2002). “Models of Twenty Asteroids from Photometric Data”. Icarus 159 (2): 369–395. Bibcode : 2002Icar..159..369K . doi :10.1006/icar.2002.6907 .
^
Gaffey, Michael J.; Burbine, Thomas H.; Piatek, Jennifer L.; Reed, Kevin L.; Chaky, Damon A.; Bell, Jeffrey F.; Brown, R. H. (1993). “Mineralogical variations within the S-type asteroid class”. Icarus 106 (2): 573. Bibcode : 1993Icar..106..573G . doi :10.1006/icar.1993.1194 .
^
“Asteroid Juno Has A Bite Out Of It ”. Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics (2003年8月6日). 8 February 2007時点のオリジナル よりアーカイブ。2020年1月2日 閲覧。
^ a b
Baliunas, Sallie; Donahue, Robert; Rampino, Michael R.; Gaffey, Michael J.; Shelton, J. Christopher; Mohanty, Subhanjoy (2003). “Multispectral analysis of asteroid 3 Juno taken with the 100-inch telescope at Mount Wilson Observatory” (PDF). Icarus 163 (1): 135–141. Bibcode : 2003Icar..163..135B . doi :10.1016/S0019-1035(03)00049-6 . https://pubs.giss.nasa.gov/docs/2003/2003_Baliunas_ba04100j.pdf .
^
Millis, R. L.; Wasserman, L. H.; Bowell, E.; Franz, O. G.; White, N. M.; Lockwood, G. W.; Nye, R.; Bertram, R. et al. (February 1981). “The diameter of Juno from its occultation of AG+0°1022” . Astronomical Journal 86 : 306–313. Bibcode : 1981AJ.....86..306M . doi :10.1086/112889 . http://library2.smu.ca/bitstream/01/26050/1/Dupuy_David_L_article_1981.pdf .
^ Asteroid Occultation Updates – Jul 29, 2013
^ Asteroid Occultation Updates – Jul 30, 2013 .
^
Pitjeva, E. V. (2004). "Estimations of masses of the largest asteroids and the main asteroid belt from ranging to planets, Mars orbiters and landers". 35th COSPAR Scientific Assembly. Held 18–25 July 2004, in Paris, France . p. 2014. Bibcode :2004cosp...35.2014P 。
^ Hilton, James L. (February 1999). “US Naval Observatory Ephemerides of the Largest Asteroids”. Astronomical Journal 117 (2): 1077–1086. Bibcode : 1999AJ....117.1077H . doi :10.1086/300728 .
^ 自転の様子もハッキリ アルマがとらえた小惑星ジュノー 、アストロアーツ 、2015年 4月8日 、同年4月9日 閲覧
関連項目
外部リンク